年末に買ったワンピースに付いているフードをおもむろに被ってみる。
オフタートルとして扱っていたので、フードのシルエットを確認したことはなかった。
車窓に映った自分の姿を見てみると
「宇宙服っぽい」
と自分が嫌いじゃないシルエットをしていたので、思わずほくそ笑んだ。
今はグレー・ネイビーを着てるけど、最後まで悩んだベージュ・ブラウンを着ていたら、また感じ方は違ったんだろう。
自分の姿の上に、夜の街の灯りのレイヤーが乗っかる。新幹線でもなく、快速電車でも、各停でもない、特急列車独特のスピード。その速度に合わせて作り出された夜の光線が窓に映った私の上に乗っかってくる。
昼間には拝めない夜にしか見れない光景だ。
夜には夜の楽しみがある。もちろん朝には朝の、昼には昼の、それぞれの楽しみがあるんだけれどね。
駅に止まれば、向かいのホームで電車を待つ人、ベンチに座って談笑するカップル、駅員さんが発車の合図を動作する姿。いろんな姿が見えてくる。
自分の姿の上にレイヤーがまた1枚乗っかってくる。
もうすぐ山間に差し掛かる。暗闇が広がっていて、ポツポツとした灯りしか乗っかってこないだろう。たまに訪れる長々としたトンネルは、永遠に続いていくような感覚にさせる。車窓に映った自分は何処かに捕らわれていくんだろう。
何度も何度もそういった気持ちや視点を繰り返しながら私は故郷に帰るのだ。毎度毎度のことである。
こんな夜の車窓は、初めて1人だけで特急列車に乗った、10年前の気持ちを思い出させてくれる。
高校の卒業式の後、クラスでの打ち上げを途中で切り抜けて飛び乗った。寂しくもあり、どこか希望に満ち溢れた謎のワクワク感。入り混じった気持ちで翌日、最後の入試に臨んで、滑り込みでもぎ取った入学チケットで飛んでもない4年間を過ごしたんだ。
不安の先に楽しさがあることが知れたのは、こんな風景があったからだ。今は、不安を通り越して、何があっても打ち勝つ気持ちしかない。
また見れることを望んでいるけど、次に見た時の感じ方はまた違うんだろう。
さぁさぁ。山の陰で少し休もう。
日本海は黒と白のコントラストが綺麗で鉛色の空が広がってることでしょう。
曇天だろうが世界は生きて日々動いているわけだ。そのサイクルにまだまだ乗っかっていたいから、1秒でも長く呼吸をすることを忘れてはいけないのだと、そう思っている。
新しい世界を見続けたい、知らないことを知り続けたいという気持ちは、全く持って失ってない。
夜の車窓は、いろんな姿を見せながら、私を強くしてくれるようだ。
じゃ、また1ヶ月後あたりに、再び会おう。