造形作家、土井絢加さんの陶作品に潜在したピエール・ボナールの日本美術へのオマージュ
過日(2022.11.30~12.5)、岡山市中区の岡アートギャラリーにおいて、3人の若手作家(海野千尋、土井絢加、フジワラユキ)によるグループ展「さんかくてん」が開催されました。
毎年、競い合って成長する作家達の成長が楽しみで、今年は1カ月前から有給休暇を申請して、開催初日に一番乗りで会場の岡アートギャラリーに駆けつけました。
会場でまず最初に目に飛び込んできたのは、造形作家、土井絢加さんによるキャラクター化されたクマの造形です。
平板的にデフォルメされた体と平面的に彩色された格子模様の衣装に、強い既視感を覚えました。会場にやってきた土井さんに訊いてみたら、格子模様はマスキングテープを駆使して、苦労して直線的・平面的に彩色したのだそうです。
・・ピエール・ボナールが降臨している!・・そう直観され、即座に購入手続きをしました。
19世紀から20世紀にかけてフランスで活躍した画家ピエール・ボナール(1867-1947)は、同時代の画家と同様にして、当時ヨーロッパに紹介された日本美術から多く刺激を受けました1)。
日本の版画表現に影響を受けたボナールは、平面的な塗りの表現を多用しました。また、格子模様も多く取り入れています。
グループ展終了後、我が家にやって来た作品を、4年前に東京で観たピエールボ・ナール展2)の図録と照合します。
平面的な塗りと、格子柄の衣装は、代表作の「黄昏(クロッケーの試合)1892年)をはじめ、多くの作品でみられます。
その中でも、油彩作品「格子柄のブラウス」の、モデルの衣装の柄や色合い、穏やかな表情・肌の色調、がとても近い感じです。
ピエール・ボナールの日本美術へのオマージュが、現代の日本のアーティスト、土井絢加さんを介して、130年ぶりに日本に里帰りしていたのでした!
帰省の記念撮影にあたっては、絵の中で婦人が抱く猫の再現として、冨士山笑呼さんによる土人形「眠り猫」に友情出演してもらいました。
ピエール・ボナール展からちょうど4年経過して、目の当たりにしたシンクロニシティにびっくりです。
引用文献
1)オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展:2018年9月26日~12月17日 国立新美術館(東京都港区)
2)美の巨人たち ボナール『黄昏(クロッケーの試合)』日本かぶれの画家の新絵画 テレビ東京 2018年11月24日(土)22時00分~22時30分
3)イザベル・カーン他・著:オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展. 日本経済新聞社, 2018. P37