造形作家、山本薫さんによるマグダラのマリア像
マグダラのマリアは、キリスト教の聖典、新約聖書において重要な局面で登場する聖女です。彼女は、イエスと出会い、我が身を悔い改めます。後に、イエスが十字架に掛けられるのを見届けます。さらに、復活したイエスに最初に出会ったのが彼女でした。
マグダラのマリアをモチーフにして多くの絵画が描かれましたが、今、最も有名なのは、カラヴァッジョによる「法悦のマグダラのマリア(1606年)」でしょう。
筆者はこの作品と2度出会っています。最初は、2016年3月に東京国立西洋美術館で開催された「日伊国交樹立150年記念 カラヴァジョ展」においてでした。2014年にカラヴァジョによる真筆と認定されたばかりで、日本初公開となった機会でした2)。2度目は、2019年12月に大阪・あべのハルカス美術館で開催された「カラヴァッジョ展」の時でした。
3度目にマグダラのマリアに出会ったのは、3D作品としてでした。2022年5月15日に岡山県赤磐市在住の造形作家、山本薫さんのアトリエで誕生し、長野県松本市で開催されたクラフトフェア松本に出品されました。その存在は、山本さんのインスタグラムでフォローして、知っていたのですが、その後1年ほどしてから、岡山市出石町にある山本さんのギャラリーで実物と対面しました。
出会った瞬間、ランプの炎のようなやさしい暖気を醸し出されているのが肌で感じられ、献身に生きた聖女の魂に触れることができました。作者の山本さんにとって、とても愛着のある作品だったので手放したくなかったのだそうですが、不思議なご縁があって、今回、我が家にお迎えすることになりました。
芸術作品は、作家よりも持ち主よりも長く生きます。筆者はこれから束の間、人生の秋を作品と並走します。
追伸
画像は、我が家のリビングに飾っているイ・ユンギョンさんの作品です。
袂に山本薫さんからいただいた、花束を生けてみた風景です。花束は、赤磐市の花と植物のお店 icegreen の朝原明子さんによるアレンジで、山本さんからマグダラのマリア像へのはなむけでした。
月日が過ぎて、1カ月後のリビングの風景です。
世界は移ろいますが、作品は変わりません。
文献
1)ピエルイージ・カローファノ・他執筆, 小佐野重利・他編集:カラヴァッジョ展カタログ. 北海道新聞社, 2019. P122-125
2)サンドリーナ・パンデラ・他執筆, 川瀬祐介・他編:日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展. 国立西洋美術館 NHK NHKプロモーション 読売新聞社, 2016, P200-203