くすんだ花、テナチュールの美しさの探究
倉敷市西中新田の花屋、アトリエ・トネリコでは、ちまたで人気のある鮮やかな花ではなくて、あえて、もの思いに沈んだような、落ち着いた花を扱っています。
店内の、中間色の花々のなかで、特に気になったのが、テナチュールという、くすんだ色のばらでした。店主の岬 美由紀さんによれば、花の名は、フランス語で「ストレートティ」を意味するのだとか。佐賀県のFINE ROSEさんが栽培されているそうです。
さっそく買い求め、谷𠮷孝之さんによる備前焼の花入れに生けてみました。
花は、梅鼠(うめねず)色*と、紅茶色が、筆のタッチで同心円状に描かれたように配置され、絵画的な構成感を呈し、生産者の精神性が強く感じられました。
そんな花をより深く味わいたくて、花の美しさを要素還元的に分解してみました。
まず花の色の表現です。
左側のコーヒーカップは、倉敷・羽島焼作家の小河原常美さんによるものです。肌は、梅鼠色から藤鼠(ふじねず)色にグラデーションして、しゃれた感じと控え目な感じが同居しています。
紅茶色の再現は、フランスのフォッション紅茶を、倉敷市水島に工房を構えるガラス作家、白神典大さんによるグラスに注いで、再現してみました。グラスの菱形模様で、紅茶が揺らめいて見えます。
棘を持つ葉は、若いザクロの実で表現しました。
谷𠮷さんの花生けは、麻の敷物で現しています。
要素還元しても、それぞれの要素が邪魔し合うことなく、しっとりと落ち着いて心地よい感じになりました。
*鼠色:橋本実千代・監修:世界でいちばん素敵な色の教室. 三才ブックス, 2019. P148・149
(2021年7月23日)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?