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竹久夢二の黒猫〜奇跡のツー・ショット〜
日常の当たり前だった生活が止まってしまった今、次の時代に福を招いて繋いでくれるように願いを込めて、「ふくふくつなぐ展(2021/6/15ー6/30)」が開催されています。
会場となっている倉敷本通り商店街の竹久夢二ショップ、ギャラリー・メリーノを覗いてみると、眞鍋芳生・備中張り子倶楽部による、縁起物の張り子や土人形の展示が行われていました。
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展示台には、だるま、虎、招き猫、素隠居(すいんきょ)を題材にした、定番の開運キャラクターが多数並んでいます。マトリョーシカやアマビエなどの新しいキャラクターもあります。どれも、漫画的に、かわいらしく、ユーモラスにデフォルメされています。手作りなので、一体々々、微妙に形が違います。
その中で、冨士山笑呼さんによる黒猫の土人形が目に留まりました。黒猫は、魔除けや厄除けになる縁起物です。マダムの清水繁子さんによると、その黒猫は、竹久夢二の豆本「猫」に出てくる赤いリボンをつけた黒猫をモチーフにしたものだそうです。清水さんのご厚意で、ここでしかできない、オリジナルとの貴重なツー・ショットが実現しました。
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夢二の黒猫は、背中にリボンを結んでいるのがチャーム・ポイントです。土人形の黒猫にも、ちゃんとそれが再現されています。尻尾は、手芸用の尻尾パーツが用いられていて、形を変形することができます。
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なお、リアル黒猫の黑の助(くろのすけ)は、夢二郷土美術館(岡山市)に、お庭番スタッフとして住み込んで働いています。
追伸
豆本の右ページに載っている、女の子に抱かれたリボンをしていない黒猫もいましたので、二体をツーショットにしてみました。
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追伸2
赤いリボンをした黒猫は、倉敷本通り商店街・喫茶ウエダのレジ横で、厄除けのお仕事中です。
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我が家は、4体体制です。
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2体は、それぞれ、長女と次女の家に出向し、使命を果たしています。
番外編1
冨士山笑呼さんは、竹久夢二の「眠り猫」も製作されています。
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デザインの元になったのは、夢二による専門誌の表紙です。夢二の眠り猫は、スカーフをしたハイカラな白猫です。
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白猫は、彦根藩井伊家二代目当主・井伊直孝を手招きして災難から救ったとされる縁起物で、その後、招き猫のモチーフになったと言われています。
マーケティングの才があった夢二は、そんな縁起物の白猫と、日光東照宮の有名な「眠り猫」と、大正時代のモダンな気風とを、掛け合わせたのでしょう。椿は、夢二の故郷、岡山県和気町を暗示します。
人気のイメージが多重に重ねられ、ご当地を応援しているところは、筆者の故郷である滋賀の、ゆるキャラ、「ひこにゃん」の先駆けと言えます。
番外編2
倉敷本通り商店街の喫茶ウエダでマダムと黒猫の話をしていましたら、秘蔵のお宝を見せてもらうことができました。故人となった版画家、秋山 巌 氏から、直にいただいたコーヒーカップです。
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カップには、黒猫が、即興的に、ラフに、構えなくリラックスして描かれています。故人の穏やかな平常心が現された貴重な作品です。マダムへの親愛が込められているのでしょう。
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黒猫つながりで、有意義な経験ができました。
番外編3
倉敷白壁通りのお店の前に猫がいました。
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近づいて見ると、お店を護るリアル黒猫でした。
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黒猫は年老いて、少し妖気を湛えています。キリッと引き締まった表情に、猫の強い使命感を感じました。
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少しはにかんだ感じもチャーミングです。