山本 薫さんによる「膝を抱えて休む少女」の内面の違いの表現
はらぺこうつわ、こと、山本薫さんは、岡山後楽園近くの岡山市・出石町にアトリエを構えています。アトリエでは、日々、創作の楽しさを子供達や大人に教えながら、造形による繊細なこころの表現に取り組まれています。
画像の、陶土による2体の土人形は、いずれも、「膝を抱えて休む少女」です。人気のあるシリーズで、山本さんは、同じポーズの作品を何体か製作されていますが、人形の内面に宿った「こころ」は、一体々々、ずいぶんと違いがあります。
まず、側面から少女の表情を見ると、左側の少女は表情が硬く、なんだか辛そうです。一方、右側の少女は、表情がリラックスしていて安らかな夢を見ているかのようです。
次に背中側から、山本さんの真骨頂である、うなじの表現を見てみると、左側の少女のうなじは、僧帽筋が緊張して張っているのがわかります。一方、右側の少女は僧帽筋がリラックスして、よく伸びて、陥凹しているように見えているのが判ります。頭部も左側によく回旋しています。
前から見ると、左側の少女は、両手で力を込めてぎゅっと膝を抱きかかえています。一方、右側の少女は、膝に手を添えているだけです。頭もゆったりと、膝先に預けています。
いずれも微妙な違いですが、身体全体への一貫した精緻な造形が、繊細な内面の違いを見事に表現しています。
山本さんの、作品一体々々への、強い思い入れと、深い愛情を感じました。