山本 薫さんの造形における精神性の表現
はらぺこうつわ、こと、山本薫さんは、福島県出身のアーティストです。日本三大名園、岡山後楽園近くにあるアトリエで、陶土を使った個性的な造形に、日々取り組まれています。
画像は、山本さんによる、陶土で造形された、座る女性の像です。
女性は、埠頭で海風に吹かれながら水平線を眺めているのでしょうか?穏やかな風に髪がなびき、白い衣服の袖がやわらかく揺れています。像は、素脚の細かい描写が印象的です。すなわち、足関節の内果・外果、アキレス腱、ふくらはぎの腓腹筋の筋腹、足趾、が、丁寧に、かつ、優美に作り込まれています。
この造形からは、人物の内面にある「涼やかな精神」が伝わって来ます。
涼やかな精神とは、自分の夢に向かって、周囲に配慮しながら行動できる人が放っている、風通しの良い、すがすがしい気持ちよさです。山本さんは、それを涼やかな風に吹かれる姿や、美しい素脚の描写で、身体感覚として、控え目に、奥ゆかしく表現されています。
次の画像は、伸びやかに起立した女性の上半身像です。
像は、うなじから背中にかけて、なだらかで美しい曲線が印象的です。後頭部から僧帽筋外縁~三角筋~上腕~手につながるラインもなだらかにつながって、うなじから背中のラインと対称を成し、頭部で合わさるので、優雅にバランス良く立つ尖塔のようです。
この造形からは、「しなやかに立つ精神」を感じました。しなやかに立つ精神とは、若竹のような、強風に対して、強靱、かつ、柔軟に対処する人物のイメージです。成長して経験を積み、大切な自分の少女のこころを、他者と折り合いをつけて、他者を傷つけることなく、自分で守ることができる、大人になった人です。山本さんは、それを優美な身体ラインの合流によって表現されています。
続いての画像は、空を見上げる少女と料理をする人の像です。
そこには、世界と一体となった「解放された精神」を感じます。
空を見上げる少女は、四肢を自然な感じで、拡げていて、世界と一体となって、我を忘れて、空の青さに陶酔しているかのようです。
料理をする人は、料理に集中するあまり、我を忘れてしまったようです。調理器具を安定して把持するために、最初は脇を閉めていたものが、楽しさにつられて思わず脇が開いてしまった様子です。
山本さんは、精神が解放されて忘我の境地になるのを、身体感覚としてダイレクトに表現されています。
筆者も、山本さんの造形に導かれて、生き生きとした精神をもって、人生を歩みたいものです。