もしも・・佐伯祐三の世界が、石原路子・ワールドだったら・・
大阪中之島美術館では、開館1周年を記念して、「佐伯祐三ー自画像としての風景」(2023.4.15~6.25)が開催され、重要作品が日本全国から一堂に集められています。
佐伯祐三(1898~1928)は、その短い画業のなかで、最後の絶筆となる二人の人物画を遺しました。それは、結核が悪化し、死の床にあった佐伯のもとに訪ねてきた、郵便配達夫とロシアの亡命貴族の娘でした。佐伯は、筆をもつ体力が残っていない中で描いた最後の人物画は、その力強い構図と筆致から、病に侵されながらも生への執着を感じさせるものでした。1)
唐突ですが、そんな佐伯の絶筆作品の世界が、もしも、石原路子・ワールドだったら・・と急に妄想しました。
死の床にあった佐伯のもとに訪れた二人は、神の来訪であったかもしれません。日本人は古来より、神や霊の来訪を、来訪者の姿を真似して演じてもてなし、祝いました。
テディベアは、ガラスのめだまをもち、表情が乏しく造形されます。脚はあるけれど、座っているだけで、どこにも行かないし、何も食べません。なにもしないで、誰かが抱きしめてくれるのを待っているだけです。
そのような、小さくて無力で受け身な存在は、異界とつながることができ、死者がこの世で充分に果たせなかった思いや、語り尽くせなかった慕わしい気持ちを聞いて、死者の思いを晴らすことができます。2)
テディベア作家の石原路子さんは、内部に魂を感じるような精神性に優れた造形作品を制作されています。
そんな入魂の作品達に神の来訪を演じてもらうことで、30歳の若さでパリで客死した佐伯祐三の画業を、現世界と異界のふたつの世界で振り返り、味わいました。
まずは、郵便配達夫です。
石原路子・ワールドは、こちら。
つづいては、ロシアの少女です。
石原路子・ワールドはこちら。
私たちが、佐伯祐三が遺してくれた作品を、多様に楽しむことで、志半ばで逝った佐伯の霊を慰めると信じます。
引用画像・文献
1)大阪中之島美術館・他 編集:特別展 佐伯祐三ー自画像としての風景. 読売新聞大阪本社, 2013, P172-176
2))安田 登・著:ワキから見る能世界. 日本放送出版協会, 2006
3)1)P173
4)1)P174