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郡司庸久・慶子夫妻によるトキ色の茶碗

画像は、倉敷意匠アチブランチ・二号室で遭遇した、郡司庸久・慶子夫妻による、益子焼の茶碗です。器の中に「トキ色」が見えます。

トキ色は、日本人が朱鷺(とき)の風切り羽や尾羽の色に憧れて創作した伝統の色で、少し紫がかった淡いピンク色です。トキ色の布は、染め物職人が、桜の小枝を何段階にも煮出して抽出した桜色の染料を、さらに複雑にブレンドして、経験と勘で生み出します*。

この器のトキ色も郡司夫妻が、お二人の才能を合わせて、土と釉薬と火によって生み出したものです。灰色がかった青紫色と隣り合っているので、二つの色は、条件のわずかな違い(分水嶺)によって発色が別れたのだと判ります。その「分水嶺」の軌跡も、味わい深いです。

離乳食が始まった孫娘の百香(ももか)に贈りました。

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郡司庸久・慶子夫妻による、益子焼の茶碗

追伸

かつて朱鷺は日本中の水田で見られましたが、一度絶滅してしまいました。今は、中国産の子孫が佐渡島で人工繁殖され、野生復帰が進められています。朱鷺は、フラミンゴのように全身がピンク色なのではなくて、羽の内側だけに色があります。羽を広げたときにだけ、その色が垣間見える奥ゆかしさに日本人のメンタリティが合致し、憧れの色になったようです*。この器も朱鷺のように、一部分だけトキ色です。

(*NHK Eテレ 2020年1月5日放送 美の壺・選「大空に舞う トキ」)


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