ラットレースから抜け出すために ー 職場での真のレースとその背景
ラットレースに巻き込まれないために
ラットレース、つまり「過当競争(無意味な激しい競争)」と聞くと、会社員生活に疲れた人が思い浮かべるのではないでしょうか。このレースに参加することで、知らず知らずのうちに出世競争や過酷な環境に巻き込まれ、精神的に消耗してしまうのは避けたいものです。しかし実際には、ラットレースに参加していると感じる多くの人が「勘違い」をしている場合があるのです。
私は20年以上、外資系企業で人事マネージャーとして働いていますが、いわゆる「ラットレース」に巻き込まれていると感じたことはほとんどありませんでした。これは、外資系特有の中途採用での入社が多く、プロパー社員が走るレースから少し離れた立場にいるためかもしれません。ここでは、ラットレースについての一般的な誤解を解きながら、本当のレースに参加するためのポイントを考えてみます。
ラットレースの仕組み
日本企業では特に新卒一括採用が一般的で、同じ時期に同期入社することで一体感を感じる文化が根付いています。しかし、それと同時に役職の昇格が厳しい競争を生み出す要因にもなっています。大企業では、入社後すぐに幹部候補となる人材が選別され、彼らは特別なトレーニングや待遇を受けることで、競争に備えます。この競争が激化する中で、優秀な人材だけが管理職や役員に昇格する仕組みが出来上がっています。
一般的には、同期全員がこのレースに参加しているように思われがちですが、実際には「ハイポテンシャル」とされるわずかな人材だけが対象です。彼らは、いわば会社が推奨する「選ばれた人々」であり、他の社員とは異なるキャリアパスを歩むことになります。このため、多くの人が「ラットレースに巻き込まれている」と感じる一方で、実はそのレースにさえ入っていないという現実があるのです。
真のラットレースに参加するために
もしあなたが真にラットレースに参加し、上昇志向を実現したいと考えているならば、まず自分が現状どのポジションにいるのかを冷静に見極める必要があります。単に努力するだけでなく、適切なロビー活動や、必要なスキルを磨くことも求められます。会社の「ハイポテンシャル」リストに名前が入るためには、上層部にアピールする機会を得ることが大切です。
また、もし現状でレースに参加するチャンスがないと感じるならば、転職も一つの選択肢です。キャリアアップを目指すためには、環境を変えることが効果的な場合もあります。さらに、ラットレースに執着しすぎず、自分のスキルを活かせる道を模索することも大切です。多くのハイポテンシャル人材が途中で会社を去り、別のキャリアを築いているケースも少なくありません。結果として、ラットレースを抜け出し、自由な働き方を実現している人もいるかもしれませんが、新しい環境で、さらに激化するラットレースに参加しているかもしれません。