リストラされるべきおでんの具5選
おでん。
日本人の叡智です
冬季にコンビニのレジ前で、微笑を携えながらマリア像のごとく鎮座しています。
江戸時代から続く伝統的な料理ですが
残念なことに、その重責を担うには
ふさわしくない食材が紛れ込んでいます。
非常に残念なことではありますが
今日は彼らに、リストラを勧告しなくてはなりません。
①ゴボ天
流石に反対する者はいないでしょう。
彼自身も薄々、覚悟していたのではないでしょうか。
なんといっても名前がひどすぎます。
下品ではないのに下品に聴こえる食材選手権があれば
「マンゴー」「大トロ」などの強者を抑えて
上位に食い込みそうな風格が備わっています。
こんな食材が
小学校の給食にも採用される『おでん』という
メニューに登板されて良いわけがありません。
またその名前が仮に万が一
下品に聞こえなかったとしても
「ゴボ天」という名前が強すぎるが故に
悲劇が起こります。
今日初めて出会った人と、おでんの話をしたとします。
その人が「ごぼ天が一番好きだ」と
言いました。
どうでしょうか。
その人の他の話を覚えていられる自信がありますか。
私はありません。
初対面なので、名前や出身地等のことも話したはずですが
「ゴボ天」のことしか頭に残っていません。
なんだったら
どんな顔であったか、それすらも怪しいことでしょう。
SNSが普及している現代だからこそ大切にしたい
直接顔を合わせて話をする、というコミュニケーション方法を
真っ向から阻害してくるこの食材
残念ながら、『おでん』から排除されねばなりません。
②大根
おでん界隈に衝撃が走りました
本人も今回のリストラ騒ぎを、完全に他人事と捉えていたのでしょう
愕然とした表情が隠せません。
しかしながら
「大根」
リストラされねばなりません。
食材としての美味しさは
もちろん私も認めています。
ですがこの大根
『おでん』という料理の進化を止め続けている、という
罪があります。
彼がいることで、確かに味は保証されますが、
同時に古臭さが醸し出されています。
『おでん』という料理がこのイメージから脱却できていない
その原因は、全てこの大根に帰するといって良いでしょう。
『おでん』側は
今まで「ウインナー」などの助っ人外国人を投入し
料理の雰囲気を新しいものにしようと、
努力してきましたが
いずれも成功していません。
大根の悪影響は皆さまが想像している以上に
大きいのです。
今までの彼の功績を考えると
残留を熱望する声が聞こえてきそうですが、
改革は痛みを伴わなければ、成し遂げられません。
停滞は退化と同義なのです。
③しらたき
満場一致です
本人以外の全ての存在が彼の実力不足を認めています。
流石に彼自身はまだこの通告を受け入れがたいのか
顔面が蒼白です。
おいしさ、個性、見た目
『おでん』の食材を担うにはあまりにも
欠けているものが多すぎると
言わざるをえません。
彼自身面接の際に
「私が持つ類まれなる食感で、子供からお年寄りまで
全ての年代の人々を魅了します」
と言って入社してきた筈ですが
現状を考えると
大言壮語も甚だしい、と
結論付けられてしかるべきです。
子供にもお年寄りにも評価されず
常に「こんにゃく」が無い場合の妥協枠に甘んじてきた彼はもはや
『おでん』の食材としては不適格です。
またもし仮に
ここから彼が努力し、他の食材を凌ぐ存在になったとしましょう。
それはそれで問題です。
なぜなら
しらたきという食材が1位の料理に未来などないからです。
彼には大人しく身を引いてもらう他、ありません。
それが『おでん』ひいては彼のためでしょう。
④モチ巾着
またしても食材間に動揺が走っています。
先ほどの「しらたき」とは
比べ物にならない程、
実力を示してきた彼ですが
残念ながら、三下り半を突き付けるときが来たようです。
「モチ」彼自身には問題はありません。
むしろ正月の時期であれば
全ての食材を差し置いて頂点に立てる存在が
今まで『おでん』で頑張ってくれていたこと自体が
信じられません。
そして「油揚げ」。
彼もモチと、よく協力し勤め上げてくれました。
主役になることを、完全に諦め
自身の個性を出さず
「モチ」を活かすことに粉骨砕身した彼の姿には
涙を禁じえません。
「かんぴょう」
全ての原因はコイツです。
コイツさえいなければ、「モチ巾着」が
『おでん』から姿を消すこともなかったと思うと
憤りすら感じます。
「油揚げ」を縛る、というだけの
完全に味を度外視した機能的な理由から採用されたはずの食材が
あんなに存在感を出して良いはずがありません。
食べる側からしてみれば
歯も顎も全て「モチ」に使いたいのです。
なにが悲しくて
「かんぴょう」に咀嚼の労力を費やさねばならないのでしょう。
彼さえいなければ「モチ」の歯ごたえを十分に味わえるのに
「かんぴょう」の存在が「モチ巾着」という食べ物を
根幹から否定しています。
大体「モチ巾着」という名前にも
彼の存在は認めらていません。
バラエティ番組のロケ中喋り過ぎるディレクターのように
裏方が出しゃばると
ダメになる良い例です。
「モチ巾着」にはぜひ「かんぴょう」を
「マロニー」などに変えて
再び『おでん』で活躍してくれることを願っています。
⑤じゃがいも
最後にリストラされるのは
彼です。
硬派で堅実に、いぶし銀な役割を果たし、
食材自体の評価も高い「じゃがいも」が
なぜリストラされねばならないのか、
分からない方もいるでしょう。
ですが残念なことに
彼の場合はその食材としての評価が高すぎることが原因です。
考えてもみてください
彼は「カレー」「肉じゃが」「ポテトフライ」
『おでん』が逆立ちしたところで
顆粒だしの1粒ほども勝てる可能性のない
料理達に、余すことなく採用されています。
いえそれどころか
ドイツ・アイルランド・ロシア・ポーランド・ベラルーシ
これらの国々でじゃがいもは主食です。
主食なのです
全ての食材達が一度は夢を見て
そして諦めた最高の栄誉を
彼はすでに手にしているのです。
『おでん』に居ていいはずがないのです。
食材には皆、咲くべき場所というものがあります。
彼の食材としての偉大なる実績に
見合うポジションを
『おでん』は用意できません。
また「じゃがいも」を見た
他の食材たちは、どう思うでしょう。
まるで
顔の良い女性が、プラモ・特撮・アニメ・カードゲーム、ミリタリー…など一般的には男性のウケのする趣味を公言した時のようです。
表面上は歓迎しているように見えても
心の中に
「え?お前が輝くの“ここ”じゃなくても良くない?」と
暗い影を落とします。
『おでん』に関わる全ての食材達のモチベーション低下だけは
避けなくてはなりません。
彼には勇退の花道を歩いていただきましょう。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
『おでん』は今日から生まれ変わった、といえるでしょう。
始めは今までとは違う姿に驚くかもしれませんが、
食材一つ一つがより一層切磋琢磨し
皆さまの期待を裏切らないよう、
努力することでしょう。
これからの『おでん』に期待しましょう。
以上です
カラシの塗り過ぎには注意しましょう。
ありがとうございました。