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三丁目のオウム


「何処から来たのかしら」
妻が洗濯物を干す後をチョコチョコっついてまわる鳥がいた。
「これ、オウム?」
「迷子かな?SNSで拡散してみようか」
妻がプリンの空き瓶に水を入れて与えた。
器用に水をゴクゴクと飲んでいたる様子をスマホで撮っておく。
「パタチャン ウレシイ アリガト アリガト パタチャン」
「喋ったわ。名前なのかしら?パタチャンて」
「パタチャン!パタチャン!パタチャン ママダイスキ!アリガト」
「後で買い物のついでに交番に話しておくよ。写真プリントしておこう」
「そうね保護するにしても餌やケージがいるわね。近所の動物病院にも聞いておきたいからプリント2、3枚しておいてくれる?」

「パタチャン、パタカワイイ」
低い老人のような声でのモノマネもした。

あちこちに聞き回ってみたが飼い主の情報はなかった。
件のモノマネ鳥は最初の自己紹介通りにパタと呼ぶ事にした。
パタは人の喋りの真似だけではなく
洗濯機の洗濯の水の音、アラーム音。
お風呂の沸いた音声まで真似た。
我々が騙されるのを楽しんでいた。
「もーパタちゃんはぁ。また騙されちゃった。めっ!」
そんな妻の叱る声すら真似ていた。
「パタチャン、メッ。メッ」

ある日パタは低い音を何度か練習してる風に出していた。
「グ、ゴログ、グ」
「ダン、ゴン、バタン」

「パタちゃん、何の真似っこかな?」
パタは首を傾げている。
よく観察するとベランダ近くから外を見てる時に低い音を出している。

「ダン、ゴン、バタン」

「〇〇町3丁目〇〇の△△、マンション○」とパタが言った。
「アッチャンとパタちゃんナカヨシ」

「パタの飼われてた家かしら」
妻が書き留めて明日交番に聴いてくるという。
隣町の番地だな、近いが隣の県になるな。

「タスケテアゲテ、アッチャンタスケテ」
パタが言った。
「パタ、ニゲテ」
低い老人のような声でパタは言った。

  老人ばかり狙った連続強盗事件の被害者の中にパタの飼い主がいた
幸いな事に重傷ではあったが
パタの飼い主は命をとりとめ再会する事ができた。
おしゃべりパタは飼い主のアッちゃんよりも喋るのだと
時折リハビリで散歩しているアッちゃんのお話である。


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kuramoto
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