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手抜き出汁でも十分においしさを味わえる日々のおうどん

半生うどんを久しぶりに食べました。半生うどんはゆで麺と違い、10分以上茹でてから水でさらしてザルにあげる、という作業が必要です。茹でうどんと比べると、手間は圧倒的にかかってしまいますが、これが実にうまいのです。その味を知ってしまうと、ちょっと時間がかかってもその工程は得がたいものとなります。

冷蔵庫にて放置しておりました

久しぶりに食べようと思ったのは、実家から届いた荷物の中にあった半生うどんを一ヶ月ほど冷蔵庫で放置していたからなのでした。日持ちがよいうどんではありますが、さすがに放置しすぎだろうと、夕食の献立を変更したのです。

実家からは時々、地元産の野菜やらお菓子やら、親戚にもらった写真やらごちゃっとダンボールに詰められて届きます。そのなかに、姉が「スキマがあるし」と放り込んだらしい(おうどんは姉ちゃんが入れたよ、と母からの伝言で知る)のが半生うどん一袋なのです。実家は今もこの半生うどんイコールうどんなのです。

半生うどん?と聞いて「なに?」と思われたかもしれません。わたしの「うどん」といえばこの「半生うどん」がスタンダードでした。半生うどんなのでちょっとくたっとしていて、小麦粉がうっすら麺の表面にまぶされています。

さすがに冷蔵庫での一ヶ月間放置が効いたのか、袋を開けるとやや硬直した感触になりかけていました。心の中で、うわわ放置しすぎたかも、と焦りながらお湯を沸かしました。今持っているお鍋の中で、いちばん大きいサイズです。2リットルのお水が入ります。

鍋に火を入れて、沸騰するまで待ちます。半生うどんなので茹でないと食べることはできません。このおうどん、茹でるのに何分かかるのかしら?すっかりと茹で時間を忘れていたことに気づきました。うどんの空き袋の裏面を見ると、よかった。書いてあります。

ゆで時間12分。

え、そんなに時間かかりましたかね。最近、5分の待ち時間が限界になってきていたわたしですので、12分の茹で時間はかなり長く感じました。

茹でる時間もスキをみせてはいけません

茹で時間が10分以上になると「まだ時間あるし」とほかのことをしたくなるのが人情ですが。うどんを茹でているときは、決してそばを離れない方がいいのです。これは実家で頻繁にやらかしておりました。

沸騰してきたゆで汁が鍋の際から盛り上がり、人間のスキを見てやおら鍋から飛び出そうとするのです。小麦粉が少し混ざり、ややねんばりとしたゆで汁とともに。

これに警戒しなくてはなりません。ついうっかり油断をして、スマホを覗いていたりすると。まず間違いなくうどんに先手を打たれます。

大惨事です。

噴き出したうどんとゆで汁は、まず鍋とコンロを侵食。あらゆる場所をねばねばにしてしまうのです。これがまた、掃除をするのが面倒で。キッチン用の布巾を何枚もダメにしてしまいます。このねばねば。侮ってはいけません。布巾一枚くらいではとてもきれいになる代物ではないのです。

ということにならないよう、鍋から目を離さず。

今回はミッションクリア、です。

掃除する羽目にならなくて本当によかった。

すみやかに水にさらしましょう

うどんが茹で上がったら、速やかに水にさらしましょう。ザルにうどんを取ってワシワシと麺を洗います。という手順を踏むのがわたし的にはベストなのですが、面倒だったので鍋の茹で汁を流してから(うどんが流れないよう)鍋の中に水を投入。水を流しながら軽くさらしてザルにあげる作業をします。

釜揚げうどんで温かいまま食べる、のなら水でさらさなくていいのです。しかし本日は、普通にかけうどんの予定。最後のこの過程はうどんを引き締めるために欠かせません。これをするとしないとでは、触感も味も変わってくる、と断言できます。

水でうどんをさらすと、きゅっと麺がしまります。そしてそれはそのまま食べるときの「うまさ」に通じるといえます。わたしは家で食事の支度をしているだけですが、それでも味の違いはわかるくらい、おいしくなります。料理はちょっとのひと手間、とは言いますがまさにそれだなあ、と実感するのです。

出汁は手抜きでも十分においしさが引き立つのです

出汁は、いつものことですが。うどんについていた出汁を所定の水で希釈し、少なければ酒・みりん・しょうゆを1:1:1で足します。生醤油で食べてもおいしいくらいのうどんだと思いますが、本日はまだ温かいかけうどんで。実家では、母が煮干や昆布で必ず出汁を取ります。

しかし、わたしはどうもそれがめんどくさい。

なので、それらがすべて粉末になったお出汁を投入するのです。おいしいお出汁はやっぱりうれしい。息子を実家に連れて行くと、このうどんを母が必ず用意しています。息子は出汁も含めて、うまいうまいとがつがつ食べたものです。

水でさらしたうどんが落ち着いたころを見計らいどんぶりに一掴み投入。さきほどの出汁の中で豚肉をササっと煮込み、余裕があるときはこれまた竹輪の天ぷらなども投入。葱を存在感があるくらいの量を入れてうどんが完成です。

食卓に運び、ひたすら、ずるずると掻っ込む。うどんはずるずる食べる。無言でひたすらうどんを食べて、汁まで飲み干すのです。その日、うどんはうどんの人生を全うしたのでした。

そしてうどん県にうどんツアーに行ける日を夢見る

このうどんは、讃岐うどんなので、水でしめた感触といい歯ごたえといいかなりいい味を出しています。そして、このうどんを作った職人さんの腕前には驚愕です。袋の裏面「作り方」をほぼ忠実に守るだけでプロでなくてもおいしいうどんができたのですから。

というわけで、製麺所のうどんが食べられる香川県のうどんはきっとものすごくうまいに違いないという期待が膨らみ、いつかきっとうどんツアーへ行く、という計画まで浮上しました。

うどんは実に奥の深い食べ物だった、と今回しみじみ気づいたので、自分でゆでることから始めるうどんについて改めて興味を持った次第です。

うまいうどんは少々時間がかかっても手間がかかっても、惜しまず作り方のとうりに作ると、そこにはおいしいうどんの世界が広がっている、のです。


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