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蔵前商店街座談会 vol.1

本誌を発行している「蔵前商店街」。
一体どんな組織なのかご存知ない方も多いのでは・・?
そこでまずはどんな人が、何を思い、どんなことをしているのかを、商店街メンバーの4名で座談会形式でお話ししました。
普段はなかなか聞く機会がないそれぞれの街に対する思いや考えから、あなたはどんな街に住みたいと思うか、良かったら考えるきっかけにしてみてくださいね。



座談会メンバーの記念撮影、左から順に
RAUL GENERAL STORE
オーナー・店長 山崎純平さん
TINT TINT & KIKKOTTO
プロダクトプランナー・デザイナー 小松千鶴さん
角打ちカフェフタバ
代表取締役社長・蔵前商店街会長 関明泰さん
自由丁・封灯
店長 今回の司会 山本夕紀さん


「蔵前商店街」のはじまり

 「蔵前商店街」は、5年くらい前に作ったものですね。
蔵前は浅草橋・浅草・御徒町という繁華街に囲まれていて少し孤立している街でした。そして一般的に言う、通りの形をした「商店街」がない。そんな蔵前で何か地域一丸となって、活性化をすることができないかなというのを以前から思っていたんだよね。
山本 蔵前は周りの繁華街に比べると静かな街だったと、以前関さんからお伺いしましたね。
 そう。近くにある「おかず横丁」や「佐竹商店街」は、商店の人たちが集まってイベントをしていたんだよね。だからこの土地でも、同じように商店同士で集まって何か催すことで、お客さんにも喜ばれて、地域住民の方との関係も深められるんじゃないかなと思って始めたのが最初だね。
山崎 僕は以前聞いた関さんの話が良かったな〜。
 え? (山崎さんの方を見て笑う)
いや、もう少し深く話をすると、ここ数年蔵前にも新しいお店が増えてきてると思うんだけど、その新しいお店も、せっかくなら地域に馴染んでもらいたいなという思いがあるんだよね。実は。
小松 うん、うん。
 せっかく蔵前にお店があるなら、この地域の人と交わる楽しさというか、リラックスできる感覚を感じてもらえたらなって。商店の横の繋がりや、地域住民の方との交流のきっかけに商店街がなりたいという話を山崎さんにはしたよね。
山崎 そうです。昔は「3軒隣までは自分んちだよ」みたいな関係性があって、子供の面倒を近所で見合うような安心できる街だったらしいんだけど、今はそんな関係はなかなか無いじゃない。そんな中で、せめてお店同士はお互い知り合ってて、気遣い合えるといいんじゃないかなってことだね。
山本 たしかに、いいですね。素朴な疑問なのですが、昔は商店街がなくてもお隣さんや近所のお店がお互い顔見知りだったということですが、当時はどうやって知り合っていたのでしょう?
小松 もともと地域に住んでいる方がお店をしていることが多くて、そのお子さんが通っている学校が同じだったとか?ママ友みたいな。あとはお祭りかな?
 それもそうだし、今言われて気づいたけど、昔は引っ越してくる人の方が珍しかったね。だから引っ越ししてきたら「誰だ」ってみんなが聞くんだよ。それでもう村の人間になるみたいな。
山崎 昔はマンションもなかっただろうしね。
山本 確かに。マンションが建つのと一軒家が一件建つのだと、だいぶ違いますね。
では、徐々に街が変わっている中で、生まれも育ちも蔵前っ子の関さんはこの変化をどう感じられていますか?

 ぶっちゃけ子供の頃は、地域の繋がりってうっとおしいなと思うこともありました。(笑) どこに行っても監視されてるみたいで。
一同 (笑)
 いや、近所に僕のことが大好きなおばあさんがいてさ。見つけるとチューしてくるんすよ。それがもうイヤでイヤで。だから違う道を通って帰ろうとするんだけど、たまたま会っちゃうんですよね。
小松 こわい。(笑)
 そう。(笑)まぁそんな話もあって子供の頃は少し嫌だなと思ったこともあったけど、今は道を歩いてても知らない人ばっかりになっちゃってさ。それはそれで、どうやら僕は寂しいと思っていたみたい。というのも、商店街を始めて横の繋がりができてきて、知ってる人が徐々に増えて、みんな挨拶してくれるようになったとき、やっぱ挨拶っていいもんだなっていうのを、とても感じたんだよね。
山本 なるほど。「調子どう?」て気軽に言える関係、いいですよね。


商店街への入り口は
ゴミ拾い?

山本 小松さんと山崎さんは、どうして商店街メンバーになられたんですか?
小松 私はもともと蔵前に知り合いがいない中、コロナ禍に店をオープンしたんです。オープンしたものの心細くてどうしようと思い、とりあえず散歩していたところ、今の商店街メンバーのコフィノワさんや木宮商店さんと出会ったんです。その二人とお話ししているうちに商店街のことを知り、たまたま商店街の会長さんとの飲み会があるからと誘われて、すごいビクビクしながら行ったのが関さんとの出会いですね。

 ビクビクしてたの?(笑)全然楽しそうに飲んでるように見えたよ。
小松 はい。正直あっという間に楽しくなっちゃいました。(笑)
 それで、初めて会った小松さんが、色々アイディアをくれるうちに蔵前商店街の「ゴミ拾い」の話が具体化したんだよね。
小松 そうですね。元々、個性的なお店が多い街だと感じていたので、それぞれのお店が一緒にポップアップとかやったら面白いんじゃないかなと思っていて、その話を関さんにしたんです。
 いいアイディアだよね。
小松 でもこのアイディアを、一人の力で実現に繋げるのはかなり難しくて。関さんに商店街に誘ってもらえて良かったなと思っています。ゆくゆくはポップアップも実現させたいですね。
 そうだね。それでまずはメンバー同士が気軽に集える場として土曜朝の「ゴミ拾い」を始めたんだよね。
小松 そうです。自然に集まって気楽に話しができる機会として。あと、どうせ集まるなら街のためになるものがいいよねということで、その場で決まった気がします。
山本 なるほど。確かに私も初めて商店街の活動に参加したのはゴミ拾いだったと思います。
 そう。初回寝坊してきたよね。(笑)
山本 それは本当にすみませんでした!(笑)でも行きました!行って良かったです!
一同 (笑)
山本 本当ですよ。自分だけでは出会えなかっただろうお店の方にも会えて、お話しできて、蔵前にいる方のことを少しでも知れて楽しかったです。
山崎 僕も関さんに初めてお会いしたのは、ゴミ拾いだったかな。もともと別の商店街の企画に参加しようとした際にゴミ拾いを知って、実際に行ってみた。それで、ゴミ拾いが終わった後に一緒にゴミを拾ってたあの人(関さん)が会長だったんだって知ったよ。(笑)
山本 それくらいのフラットな感じが良いんですよね。
ゴミ拾い、再開できたらいいですね。

土曜朝の「ゴミ拾い」の様子(現在は休止中)
朝9時から30分ほど商店街のメンバーを中心に行なっていた清掃活動。
商店街メンバーの気軽な交流の機会にもなっていました。


商店街の役割とは

山本 では、これまでの商店街の活動についてはどうでしょうか?
山崎 僕は当日関われたことはないんですけど、数字だけ聞いてると、やっぱガラポンはすごく地域の方と交流できてるのかなって思いますね。
小松 うんうん。うちはガラポン当日マルシェに出展したんですが、やっぱりお子さんがすごい楽しそうに楽しんでるから、それはやってて楽しいなと。
山本 靴作りの際の端切れの革を使った、ポーチ作りができるワークショップをされてましたね。
小松 親子で参加される方が多いのですが、それぞれの個性が垣間見れてとても楽しかったですね。
お店では普段こういうことはしていないので、地域のお母さんとお子さんたちと関わるきっかけになれたのはとても良かったなと。

山崎 そうなんすね。それにやっぱり1000人もの人がガラポンに参加してくれたってことはすごいことですよね。だって普段、お店に1000人も人は来ないじゃないですか。
山本 そうですね。どこから1000人も人が。
山崎 ほとんどが地元の方ですよね。
山本 確かに。
ちなみに少し聞きづらいのですが、1000人の方が参加してくれたとは言えどおそらく現状は山崎さんのお店に収益があったということはあまりないのでは、と思うんです。しかも山崎さんはガラポンのチラシやチケットのデザインまでしてくださったので、コストを考えると苦しい部分もあるのではと思います。それでも、1000人が楽しんでくれた事実をまずは良かったと感じたということだと思うのですが、そのあたりをもう少し詳しく聞いてみたいです。
山崎 あー。それは、僕って費用対効果が第一じゃないところがあるんですよね。なんか人情とか気持ちが動くことみたいなのがどうも好きで。そのせいでよく奥さんに怒られるんすけど(笑)
山本 ほう。
山崎 ぶっちゃけ今のところ、ガラポンで金銭的な収益はほとんどないんですけど、なんかこう、自分がしたことが街全体のためになってるなら、まずはそれでいいかなって思うんすよ。
山本 なるほど。
山崎 なんでだろうな。この街でやってるからには、地域のことが関係ないと僕は思えないんだよなあ。
あ。関さんと話すようになって色々知ったんですけど、商店街って街中に防犯カメラとか街灯を増やす権利があるらしいんすよ。
小松・山本 へー!

山崎 商店の役割っていろいろあると思ってて。例えば近所のこどもが危ないことしてたら、やめなって言うのも一つの役割だと思うし。歩くのが不自由そうな人が重い物持って歩いてたら、運んであげるとか。
関さんとこの酒屋で頼んだら配達してくれるよって教えてあげたら、関さんとこも潤うし、その人も重いもの持たなくて済む、みたいな。そんなふうに、地域と関わっていくことで生まれる、目に見えない良いことってのはたくさんあると思うんだよね。
自分もその街に生かしてもらってるんだからっていう感覚というか、お互いへの優しさがあったらいいのになぁって思ってるかな。
山本 なるほど。今山崎さんが言ってくださったことって、目に見えない価値のようなもので、気づける人と気付けない人がいる気がします。費用対効果を気にするとうっかり忘れてしまいそうなものというか・・・。
山崎 ガラポンやって、チリンチリンて鐘が鳴って、こどもが喜んでたらまずはそれでいいじゃないすか。ねえ?(笑)
山本 それで、ガラポンで会った子どもが店の前で転んでたら助けてあげやすくなるというね。
山崎 そうそう。「あっ、あの時のおじちゃんだ!」って喜んでくれるみたいなね。
なんかそんな街の方が、安心できるじゃないっすか。


今後について

山本 関さんは、これまでの活動についてどうでしょうか?
 そうだね、ガラポンはこれまで3回開催して、お客さんが求めていることと協力してくれるお店さんが求めていることがちょっとずつ分かってきた感じはあるかな。これからはそれぞれの求めるものを、もうちょっと結びつけたいなと思っているところだね。
山本 と、言いますと?
 もともとは住民の方とお店を結びつけたいという気持ちがあって始めたことなんだけど、お店の中には地域外のお客さんがメインのお客さんのお店もあるよね。だから、そういった地域外のお客さんも満足できるような何かをしたいとは思っている。

ガラポン抽選会場は蔵前小学校の前の道路。 当日は天気もよく約1000名の方が参加されました。

山本 なるほど。
 つまり、地域のお店のお客さん皆に満足してもらえるようにしたいということですね。
山本 今後少しずつブラッシュアップしていきたいですね。
 うん。でも何をするにしても皆の商店街だと思っているから、ガラポンに拘るわけでなく、皆で手を取りあって、ストレスなくやっていけるのが一番いいかなと思っています。
山崎 でもやっぱり地域が一丸となるってのは難しいよね。それぞれ個性があるし、新旧もあるし。そこをうまくやりたいね。
山本 そうですね。今はまだ商店街のメンバーではない、昔からのお店や新しいお店もたくさんありますしね。ちなみに、そう言ったお店への声のかけづらさみたいなのってあるんでしょうか?
 うーん、かけづらいというか、商店街自体の土台をしっかりしないと失礼かなと思って声をかけられていないお店はまだまだあるかな。
山本 そうなんですね。
 というのも、商店街を始めた当初は、モヤモヤしながら何がしたいんだろうって分からないながら立ち上げて、ようやく最近、少し言葉にできるようになってきたかなと思ってるんです。
山崎さんみたいに、費用対効果が全てじゃないよって言葉にしてくれる人がいたから「そう、そう言うことがやりたかったんだよ」って、今ようやく伝えられるようになってきたような。
山崎 関さん、本当は燃える男なのに、全然言わないから。(笑)
 いや、ほんと自分は言葉足らずで、山崎さんや小松さんに助けてもらってます。
商店街を通じて、優しさや気遣いがある、温かい街にしていきませんか?っていうのが進みたい方向かな。
山本 なるほど。
「蔵前商店街」にとっての地域活性化って、字面よりももっと穏やかなものなのかもしれないですね。


ガラポン抽選会当日の様子
座談会でも話題に登った「ガラポン抽選会」 2022年7月、2023年5月、10月、2024年5月とこれまでに4回開催しました。

抽選会場目の前の精華公園では「マルシェ」を開催。 地域のお店の方が軽食やワークショップを行いました。
チラシのデザインやお花のアレンジも商店街メンバーによるもの。 ガラポン4等の駄菓子は、商店街メンバーの手書きメッセージ付き!


最後に一言

山本 さて、本日はありがとうございました。それぞれの方の街に対する思いをお聞きできてよかったです。それでは最後に今日ご参加いただいたお三方から一言ずつ、読者の方へメッセージを頂ければと思います。
山崎 これからの商店街なので、みんなで盛り上げましょうっていうところと、一緒に盛り上げたい人大募集ですよってことじゃないすかね。ありがとうございました。
小松 蔵前には素敵なお店がたくさんあって、それぞれに個性や得意なことがあると思うので、その力を合わせられるようにできるといいですよね。商店街メンバーがもっと活動に参加しやすくなるようなやり方を考えていきたいですね!
 僕は行政と協力して商店街を盛り上げて行きたいと思っているから「地域活性化」という言葉がキーになってくるのだけど、その言葉を使うだけだと、僕たちが育みたいことを伝えるには言葉が足りないのかもしれないと思ったかな。
その一方で、先ほど僕が「温かい街にしたい」と言ったときに皆さんが頷いてくれたのが、実は一番嬉しかったです。やっぱり、お客さんに笑顔で蔵前を歩いてもらえて、お店さんも笑顔で対応できる、そんな環境を作ることが蔵前商店街の存在意義なのかなと感じました。
山本 なるほど、お話しを聞けて良かったです。
本日はありがとうございました。
うんうん。皆の蔵前ですもんね。
それでは、第一回座談会はこのあたりでお開きにしようと思います。
本日はありがとうございました。

今回の座談会は
東京・蔵前、未来の自分へ手紙が送れるお店『自由丁』|
JIYUCHO KURAMAE TOKYO Future Letter
で行いました。


蔵前商店街は加盟店・メンバーを募集しています

蔵前商店街は台東区蔵前近郊の地域振興や交流・連携、明るいまちづくりを目的に各種イベントや情報発信をしています。
主なイベント等は蔵前商店街加盟店(現在約70軒)のうちの有志で運営しています。

気になった方は下記SNSのDMからお問い合わせください。
蔵前商店街SNS
X:@kurame_official
Instagram:@kuramae_official 
もちろん、蔵前商店街の取り組みに興味のある近隣の事業者の方からのご連絡もお待ちしています。


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