③やりたいことって?
社会人になることや就職活動をすることに抵抗があった私も、卒業後を考えたら徐々に不安になってしまった。
地元には戻らず、一人暮らしのアパートに住み続けることだけは決めていたので、就職しなかったら今のアパートの家賃や電気代など、どうやって払うんだろう…。
アルバイト先で働き続ける選択肢もなくはなかったが、アルバイトと正社員を比較したところで、就職した方がいいということはさすがの私でも理解できていた。
というわけで、しぶしぶ就職活動を始めたのだった。
困ったことにいつも何をするにも遅い私である。
そして、友人に就活サイトを教えてもらって登録し、気になる企業を探すも…特に気にならない!!!!
やりたいことも…特にない!!!!
有名企業がいくつか目に入ったが、相手にされないであろうことは火を見るよりも明らかだった。
どうしても企業に属さないといけないのだろうか?
漠然とそんな疑問も湧いてしまったが、飛びぬけた資格や技術、能力などは持ちあわせていなかったため、当然ながら選択肢などあるわけもなかった。
しいて言えば、何か物を書いて生きていきたい。
例えば、食の楽しさやおもしろさを伝えたい。
書くこと・伝えることで食べていけたらどんなに楽しいし幸せだろう。
しかしそれらを実現させるためには、「大学生の就活」という範疇では難しいだろうことは分かっていた。
少ない脳みそをフル回転させ、数日後に出てきたの自分なりの条件は
・残業が少ない(早く帰って家でゆっくりしたい)
・カレンダー通りに休める(週5日の平日勤務ですら多い気がする)
・転勤がない(実家から遠い勤務地だと、帰省に時間とお金がかかる)
・今住んでいるアパートから通える(引越すお金はない)
・余暇が多い(働くのは辛い)
・事務職
以上。
当時の私が一般企業や団体の仕事で知っていたのは、事務、営業、製造と販売くらいであり、その中で、カレンダー通りに休めて自分の性格に合いそうなのは事務職であろうと判断したのだった。
積極的に何かに携わり、大きなことを成し遂げたい。会社を大きくしたい。
社会に貢献したい。世の中に新しい価値を提供したい。
自分の力がどこまで通用するか試してみたい。
そんな崇高な思いは1ミクロンもなかった。
ただただ生活があるから働くだけ。
給料は多くなくとも、定時まで真面目にちゃんと働くから、そこからは帰って仕事の事は忘れてゆっくりさせてもらいたい。
また、通勤など含め、1日のだいたい3分の1以上は仕事に関わる時間に割り当てられてしまうから、なるべく心身に負担のないようにしたい。
そしてできればなるべく楽しくあってほしい。
というわけで、「生活に身近である=業務などがイメージしやすい」
「自分がこれまで学んできたことや興味のあるものを取り扱う」という業界や企業に絞り、先述の希望に合いそうな会社にエントリーを開始した。