⑤就活はカネがかかる
重い腰をやっとあげて始めた就職活動。
どれくらいエントリーをしたか分からないが、下手な鉄砲も数打ちゃ…で、何社かの説明会の門戸が開かれた。
こんなにやる気も特長もない私でも、エントリーシートに興味を持ってくれる会社があるなんて!と単純に嬉しかったものだった。
しかし、その直後に気づいたことが。
私、スーツ持ってないじゃん!!!
カバンもないし、黒いパンプスだって持ってない!!!
筋金入りの超貧乏学生だった私は、それらを買い揃えるお金など持ち合わせていなかったのだった。
仕送りなんてものはビタ一文なく、奨学金と時給800円のアルバイト代だけで食費や家賃光熱費、通学定期代、娯楽費など生活の全てを賄わなければならなかったのである。
もちろん足りるわけがない。
その日暮らしでいっぱいだった中、数日間悩み、「着ていくものがない」という問題を解決できず説明会は辞退した。
しかし、このまま辞退し続けても先には進めず、同じことの繰り返しで内定どころではなくなってしまう。
一念発起して親に頼み、一式を買ってもらえることになったが、そこでも変な意地だかプライドだかが出てしまい「みんなと同じ黒や紺色のスーツは嫌だ」と、なぜかグレーのスーツを選んだのだった。
就活というものに染まりたくない・流されたくないという抵抗だったのかもしれないし、見た目は大人・中身は中2だったのかもしれない。
そして無事に基本の装備が揃い、これで説明会に行けると安心したのも束の間。
交通費が思いのほかかかるじゃないか!!!
一難去ってまた一難!!!
まだ首都圏在住だったからよかったものの、それでも都心に出るには、場合によっては片道1,000円は用意しないといけない距離だった。
それに加えてお昼代やら何やらの諸経費で、未来への投資とはいえ、先の見えない出費に不安だけが募っていった。
というわけで、説明会に参加する時はなるべく同じ日にまとめたり、通学定期を活用して交通費のかかりにくい経路を選んだり、そもそも交通費がかからない場所を選んだりした。
あまりに遠い場所だと、希望していても交通費がかかるから行かない(行けない)。
新幹線や飛行機でないと行けないような所や、宿泊が必要な所なんてもってのほか。
本末転倒もいいところである。
いつ入るか分からない説明会と、生活費を得るためのバイトの日々。
自分のやる気はさておき、金銭的に就職活動など二の次三の次であった。
当時は採用・不採用以前に、お金やバイト時間のやりくりの難しさに心が折れかけ、大学生活って何?就活って何?と、お金がない自分の不甲斐なさへの怒りも混じり悩んでいた毎日であった。
実家暮らしで生活費を考えずに済む友人達や、仕送りで一人暮らしが成り立っている友人達が羨ましくて仕方なかったし、「花柄はお金がないからまともに就活できなかったらしいよ」と、卒業後に飲み会で初対面の人達に嬉々として話した知人A(お金持ちの家の娘)のあの時の表情は未だに忘れていない。
そんな中、ひとつの目標ができたのだった。
それは、「冬になる前に内定をもらう」。
冬になると、それ用のコートを買わなくてはならないためである。
とにかく、就職活動はお金がかかった。
でも、お金があれば(生活費の心配がなければ)、やる気がないなりにもっと様々な企業の説明会や採用試験を受けてみたかった。
今さらだけれども。