【朗読台本】夏の終わりの化け騒動
夏の終わりの夕暮れ時
西日の差すこの場所で
僕は君と出会った。
不気味なほど紅い夏の夕陽が
浴衣からのぞく君の白い素肌を艶めかしく
彩っていた。
ふいに鳴った風鈴の音に驚き
傍にあった花瓶を落としそうになった僕を見て君は、まるで子どもの様にけらけらと笑った。
「ねえ、遊ぼ?」
「…え?」たじろぐ僕に君は
「退屈なんでしょ?」と言いながら詰め寄った。
ドキドキしながら身動きをとれずにいる僕に、
君はくすくすと笑いながら
「何考えんてんだよ?ボク、男の子だけど?」とからかうような視線を向けてくる。
「え!!?」再び驚いた僕に君は言う。
「確かめてみる?」
怪しいほど紅く染まった夏の終わりの夕暮れ時…そこにはイタズラっ子の君と狐に化かされたような胸中の僕がいた。
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