友だちを呼べる家
これからの重要問題
「友だちを呼べる家」というと、どのような想像をしますか。広い家とか、素敵なインテリアのしゃれた家。それもいいですが、ここではもう少し現実的な話をしましょう。
つまり今、家に友だちを呼べるでしょうか。そして「片づけなくては人を呼べない」と思う女性が案外多いのです。家が狭いとか、病人がいるならばわかるけれど、「片づけなくては」という理由がわからないという人もいるかもしれません。
多くの女性にとり、家の中にものがあふれ、乱雑になっている状態がとても「恥ずかしい」ことなのです。だから友だちを呼びたいと思っても、片づいていないから呼べない。
実際に老前整理を始めた人へのアンケートでは動機の一つに「いつでも友だちなどを呼べるようにしておきたい」があります。男女各一〇〇人でこの項目にチェックをしたのは男性一六人、女性四六人で、男女差が一番大きかったのがこの項目です。
女性の半数近くは「友だちを家に呼びたい」と思っているにもかかわらず片付いていないから呼べないと思っています。
では男性はどうなのでしょうか。老前整理のセミナーで「三つの願いが何でもかなうとしたら何を望みますか」と質問すると、「宝くじが当たる」とか「若返りたい」などの答えが多いのですが、ある時、七〇代の男性がぽつりと「友だち」とおっしゃり、驚いたことがあります。そうなのです。そう言われれば、心を許せる友だちが急にできるものではありませんね。
そこで2016年版『高齢社会白書』をみると、頼れる人がいないひとり暮らしの男性が多く、六五歳以上のひとり暮らしの高齢者が、病気などのときに看護や世話を頼みたいと考える相手についての質問に「当てはまる人がいない」とする人は、 子どもいない男性で35%と最も高くなっています。ちなみに、子どものいない女性で「当てはまる人はいない」は21.5%です。
友だちがいなければ家にも呼べません。お互いに助け合ったり、話をするだけでも心の支えになったりすることがあります。災害時の安否確認も含めて、自分のことを「気にかけてくれる」人の存在は貴重です。これからの暮らしを考えていく上で、「友だち」も忘れてはならないかもしれません。
イラスト なかだえり氏 『転ばぬ先の「老前整理」』2016年 東京新聞より