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通貨を改めて整理してみた

現在通っている大学院の研究テーマが「地域通貨」なのですが、改めて地域通貨とは何か、法定通貨と何が違うのか?、贈与とは何が違うのか?を整理したいと思います。また、地域通貨もその種類によって様々な形態がありますので、現時点で分かる範囲で整理してみたいと思います。


生きるために必要な「お金」とは ー 法定通貨の特徴

現代社会で生活するためには「お金」が必要です。最近では紙幣や硬貨といった現金をあまり持ち歩かなくなり、QRコードや電子マネーで買い物をすることが増えましたが、それらも元を辿れば「お金」ですね。

お金には3つの機能があると言われています。

  • 交換機能

    • お店で売っている欲しいものは、お金を払えば買う(交換する)ことができます。(民法や商法で定められている。)

  • 尺度機能

    • 日本においては「円(エン)」という単位がお金の尺度となっており、様々な商品の価値を比較することができます。(100円は日本のどこに行っても100円。)

  • 保存機能

    • お金はその価値を保存しておくことができますので、今日の100円は明日も100円です。(為替や物価の変動による影響は別です。)

このように「お金は、自分では生み出せない・作り出せない価値を、交換して入手する手段であり、社会全体で共有している経済活動のルール」と言えます。(便利!)

そのお金の獲得や、お金による取引を自由に行う仕組み・環境を資本主義と呼びますが、資本主義には様々な問題点も指摘されています。

  • 関係性の欠如

    • お金を使った価値交換(取引)はその場で完結するため、他者との取引が数値化・記号化され、関係性が希薄になります。(この商品は、誰が、どのようにして作られたのか?を考えなくなってしまいます。)

  • 公共財(自然環境など)への影響

    • 効果的に価値交換を行うためには、できるだけ魅力的な商品を、できるだけ安く作る必要があります。安く作るために公共財を独占・搾取し、結果として公共財の破壊に繋がります。

  • 格差の発生・拡大

    • 上記と同じく安く作るためには、労働力を安く使う必要があります。そのため過重労働や低賃金での搾取などによって格差が広がります。

このように「お金」やそれを使った「資本主義」には改善すべき点があることも事実です。
※ この後は、通常使っている「お金」を「法定通貨」と表現します。

地域通貨とは

それでは、法定通貨ではない通貨=地域通貨とはどのようなものでしょうか。地域通貨に関する書籍などを参照してまとめると以下のようになります。

地域通貨は「特定の地域やコミュニティを活性化させる手段」であり、その目的は「法定通貨では取引されないような相互扶助的サービスやボランティアといった非経済的活動を取引可能にすること」

地域通貨はその地域や発行目的に応じて様々な形態があり、まさに「100通貨100通り」の形式があります。いくつかの特徴を紹介します。

  • 地域の経済活動を活性化させる

    • 地域通貨を特定地域のみで使えるようにすることで、その地域内での経済活動が活性化し、地域の産業や商店が持続可能になります。

  • コミュニティの醸成

    • 地域通貨を使って取引する際にメッセージを送ったり取引履歴を公開することで、コミュニティメンバーの関係性を向上させることができます。

  • 法定通貨不足を補う

    • 地域通貨を新たに発行することで、これまで法定通貨では取引対象にならなかったようなサービスが取引されるようになり、価値の発掘・再発見に繋がります。

2021年12月時点で183の地域通貨が稼働しているそうです。

地域通貨の2分類

地域通貨は法定通貨と異なり、決まった機能・決まったルールなどはなく、様々なバリエーションが存在します。ここでは松尾匡の定義を用いて地域通貨の2分類について説明します。

地域通貨には「相互援助型」と「公共貢献型」の2種類があり、超ざっくりいうと

  • 相互援助型

    • 法定通貨がなくても取引を可能にする手段。いわゆるUnpaid Workに対して報酬を提供し感謝を伝えるとともに、その価値を顕在化させる事ができます。

  • 公共貢献型

    • 地域内のボランティアに対しての報酬。資本主義では優先度が下がりがちな公共物の保護や公共場所の清掃などに対して報酬を提供し、公共財をみんなで守ることができます。

地域通貨の2分類(松尾匡の分類を元に倉林作成)

損得勘定の無いお金はありえるか ー 「比較」「尺度」を超えて

では、2021年12月時点で183もの稼働している地域通貨は流行っているのでしょうか?個人的にはNOだと思います。大きな理由としては「地域通貨による効果よりも、利便性が勝っている」ということだと思います。
2019年頃から「デジタル地域通貨」の数が増えてきており、スマホで参加・利用することができます。それによって利用人数の獲得や、その地域通貨が使える加盟店の獲得は実現できますが、便利であるがゆえに「法定通貨」と戦わなければいけなくなりました。法定通貨の決済方法は様々あり、ほとんどのお店で様々な決済方法が使えるとなれば、新たに「デジタル地域通貨」を使う理由が見つかりません。

やはり「地域通貨の本来の目的」である、「地域の経済活動を活性化させる」「コミュニティの醸成」「法定通貨不足を補う」という部分をもっともっと際立たせ、利便性とは違う土俵で活用を広める必要があると考えています。ここがまさにわたしの研究テーマであるのですが、まだまだワクワクするような通貨はデザインできていません。。。

20240615時点の通貨の整理

まとめ

というわけで、今回は通貨について改めて整理してみました。ここから「通貨」を使った「価値交換」を深めていきたいと思います。
(今回の整理にあたっては「贈与経済2.0」という本を大いに参考にさせていただきました。)

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