お客さまは誰か? - STPのワークショップ
久しぶりにマーケティングセミナーの講師をするので、講演シナリオを作っています。その中から私が使っている「STP-VP」のフレームワークについて書きます。
マーケティング施策を実施する際に、立案から実行までの一連の流れをマーケティング・プロセスと呼びます。コトラーの「R-STP-MM-I-C」は最も有名なマーケティング・プロセスであり、基本的なプロセスです。
R-STP-MM-I-C
「R-STP-MM-I-C」とは、マーケティングの進め方のステージの頭文字を取ったものです。
* R:Research (市場調査や分析)
* STP:Segmentation/Targeting/Positioning (市場細分化/標的市場/立ち位置:対象お客さまの絞り込み)
* MM:Marketing Mix(マーケティングミックス:4P
「製品(Product)」
「価格(Price)」
「販促(Promotion)」
「流通(Place)」)
* I:Implementation(マーケティング施策の実施)
* C:Control(成果の効果測定)
です。
マーケティングは基本的はこの順で進めるということです。コトラー氏はその中でもSTPがもっとも重要だと言っています。
STPとは「市場を細分化し(Segmentation)、その中から勝てる土俵、つまりターゲットセグメントを探し(Targeting)、そのセグメントの中の人や企業に対して提供できる価値を宣言する(Positioning)」ということです。
STPのポイント
STPのポイントは、お客さまをきちんと定義するということです。お客さまの定義には、従来は例えば「30代女性」といった大雑把な定義が一般的でした。それは個人の価値観が世代や性別によって似通っていて、その大多数をとれば良かったからです。しかしながら現代では個人の価値観が多様化して、世代や性別では定義できなくなりました。より具体的に定義しなければなりません。
ではそのやり方はどうしたら良いか。そのためにはさまざまなマーケティング理論があります。私はその中から、STP分析、JOB理論、バリュープロポジションキャンバス(VP)の要素をピックアップして、「STP-VP」のフレームワークを作りました。
STP-VPフレームワークの使い方
まずマーケティングの対象となる商品が解決するお客さまの要望、悩み、課題を明確にします。次にそのような悩み、要望、課題を持っているお客さまは誰かを明確にします。
そのお客さまの要望を実現するため、あるいは悩み、課題を解消するするための障害、ハードル、解決すべき課題(ギャップ)を見つけます。
そしてそのお客さまのギャップを埋めるために自社の商品がどんな価値を提供できるかを考えます。そうした価値の中で他社が提供しにくい価値がバリュープロポジション(VP)となります。
STP-VPの作り方
対象商品を軸に考えます。この例では「音楽教室」です。
まず対象製品・サービスのお客さまはどんな人なのかを考えます。特性、属性を思いつくままに書き出します。
例えば、
JAZZが好き
子どもに音楽を学ばせたい
サックスを吹くのが夢
アウトドアが好き
老後の趣味を探している
といったようにです。関連性がなくて良いのです。とにかく書き出して、後でピックアップをして絞っていくのです。
その特性、属性から、今回のマーケティング施策でもっとも狙いたいお客さまをひとり選び、定義します。
この例では、ターゲットは
「娘の結婚式の前に娘のために何かしてあげたいと思っている父親」
です。
次は、その狙いたいお客さまがその製品・サービスを手にしてどうなりたいのかを考えて、同様に書き出していきます。
その書き出した「どうなりたいのか」から自社で価値提供できること選び、それを言葉にします。
この例では、ニーズは
「娘の結婚式で、楽器演奏をして、お祝いしたい。こっそり練習して、家族を驚かせたい」
といったようにです。
次に、なりたいことを達成するためにお客さまの障害、解決すべき問題、ギャップは何かを書き出します。
対象となる「父親」が結婚式で楽器演奏をするという望みを実現するには、例えば次のような課題があります。これがジョブです。
楽器を手に入れなければならない
弾けるようにならねばならない
近くには楽器店がない
大きな音を出すことができない
など
最後にこの課題解決を実行するために、自社の強みを活かし提供できる価値・サービスは何かを考えます。これが、バリューポジション(提供価値)になります。
この例では課題解決は次のようになります。
楽器を手に入れなければならない→楽器レンタルを提供する
弾けるようにならねばならない→一曲完奏レッスンプログラムをつくる
近くには楽器店がない→オンラインレッスンを提供する
大きな音を出すことができない→レンタルする楽器に消音タイプも選べるようにする
このフレームワークで、
①自社が提供する施策・商品・サービスの狙いたいお客さまが誰であるか、
②そのお客さまの悩み、要望、課題が何であるか、
③その悩み、要望、課題を解決するには何をすべきか、
④そのために自社が提供する施策・商品・サービスの提供できる価値がなんであるかが、はっきりするのです