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関わりしろを見つけた田舎での暮らし【柏崎市・橋本和明さん】

1、よもぎの話

私は現在大学2年生。次第に就職について本腰を入れて考えていく時期になっていきました。自己分析をしていくと、自分の弱点がどんどん明るみになり今まで気づいていなかった分「克服しなければいけないこと」が増えていきます。その結果、今の自分が欠陥品として潰されていく感覚に陥り、また自分のやりたいことと自分ができることのギャップによって「自分はなにができるんだろうか…」と見失ってしまいます。私は社会経験もなくアルバイト経験も無いため、いよいよ先程の見失っている状態に未知の社会への不安が加わると将来を考えることは怖いし動けなくなるのです。

就職に意識が向く中で、好きなことを生かして自分に合った生き方を探ることは未知なる不安が多いです。想像だけでも漠然と大変そうだと感じ断念してしまいます。実際に田舎で暮らし、働いている大人に話を聞くことができれば未知な不安も減らすことができるのですが…

ということで、実際に社会人の方にお話を聞いてきました!にいがたイナカレッジの「くらすはたらく編集室」より、新潟で暮らし、働く社会人の方へのインタビューをもとに、自分の特性と生きていくことについて考えた記事にまとめました。

2、Let‘sインタビュー

今回、新潟県柏崎市高柳町にある荻ノ島集落に移住した橋本和明(はしもとかずあき)さんへのインタビュー内容をまとめました。

「荻ノ島集落」と聞いてピンとくる人も少なくないのではないでしょうか?

集落というと、めっちゃ田舎!といった漠然としたイメージがあるかもしれません。確かに、人口が少ないめっちゃ田舎な地域ですが、沢山魅力があるトコロなんです!ということで、インタビューに入る前に、荻ノ島集落の魅力についてちょこっと紹介します。

2-1、荻ノ島集落集落とは

荻ノ島集落は新潟県柏崎市高柳地区にある環状集落です。茅葺屋根の建物があり、宿泊もできます。また、壁面に門出和紙が使われた茅葺屋根のお洒落なカフェ「陽の楽家(ひかりのらくや)」ではコーヒーなどのドリンクメニューのほかに米粉を使用したシフォンなどのデザートも食べられます。(私はインタビュー時、くるみミルクを飲みました。くるみの香ばしさとつぶつぶ食感が味わえる温まるドリンクでした…!)
待合室が茅葺屋根で、山の精霊が出てきそうなファンタジー味のある可愛いバス停もあります。

荻ノ島集落 (日本茅葺き文化協会 (kayabun.or.jp))
陽の楽家 (陽の楽家(@hikarino_rakuya) • Instagram写真と動画)

2-2、移住したのはどんなヒト?

次に、今回のインタビュイーである橋本和明(はしもとかずあき)さんのプロフィールについてまとめました。

~インタビューに答えてくれたヒト~
名前:橋本 和明(はしもと かずあき) 
出身:大阪府茨木市
大学:京都府立大学 公共政策学科
くらす:新潟県柏崎市高柳町
はたらく:かやぶき職人、カフェ店員、などなど…
大学4年生の夏、にいがたイナカレッジの1か月インターンシップで荻ノ島集落を訪れる。大学卒業後、新卒でにいがたイナカレッジの1年インターンシップで荻ノ島集落に再び訪れる。その後も荻ノ島集落に住み続け、かやぶき職人として集落のかやぶきの修繕や、カフェ「陽の楽家」で店員として店に立つ。

大阪から新潟に移住した橋本 和明(はしもと かずあき)さん。出身の大阪では、買い物など生活における不便さはないベットタウンのような場所で育ったそう。そんな便利な地域を抜け出して、交通の便も悪く冬には豪雪といった自然に振り回されるような地域での生活をなぜ選び、そして住み続けているのでしょうか。

3.インタビュー内容

学生時代

大学進学に関しては高校生当時、ざっくりと社会系に興味があったものの、まだ将来的なプランは曖昧だったそう。

同じ大学には公務員を目指す学生が半数以上いた中で、橋本さんは実際に地域に関わって活動するプレイヤーになり、プレイヤー側として地域で暮らしたいと考えていた。大学の先輩からにいがたイナカレッジのインターンシップを紹介され、大学4年生の夏に1カ月インターンシップで、ここ荻ノ島集落を訪れたとのこと。

よもぎ:「学生の時に考えていたキャリアプランはありましたか?」

橋本さん:「大学3年生くらいまで部活でテニスばかりやっていて、将来のことは何も考えていませんでした。」

よもぎ:「学生時代にやっていて今に繋がっていることはありますか?」

橋本さん:「「村・留学」という地域に滞在するプログラムの参加をきっかけに田舎ってこういうものなんだなと知ることができて。地域に対する自分の関わりしろを得るきっかけになったので参加してよかったと思っていますね。」

よもぎ:「橋本さんは都会出身ですが、なぜ田舎に行こうと思ったのですか?」

橋本さん:「大阪は交通の便があってお店が立ち並んでいる街だから、自分の関わりしろや自分で街を育てるといったことができないと感じたんです。“自分で作る楽しさ”が欲しいと思って、田舎に住みたいと考えました。」

よもぎ:「荻ノ島集落を訪れてみて感じた集落に対する印象などはありましたか?」

橋本さん:「山の資源が豊かなのに活用されていない。若者がいないから若者なりの活用がされていないことにもったいないと感じていました。」

就活

公務員や企業就職といったいわゆる就職活動はあまりしていなかった橋本さん。同級生が就職活動に勤しむ中で、橋本さんは「プレイヤー側」として活動するための田舎を探していたそう。

よもぎ「公務員よりもプレイヤー側になりたいとのことでしたが、就活はどうしていましたか?」

橋本さん:「みんなと同じように少しは面接を受けたり就活したりしていましたが、あまりやる気もなかったので結果が出ず、田舎で暮らしながらできる仕事はないかなあと探していました。」

よもぎ「田舎は新潟のエリアで探していたのですか?」

橋本さん「特に新潟にこだわっていたわけではないです。京都にも田舎で自分の関わりしろが見つけられるような場所はあったのですが既に地域作りを頑張っている人がいたので、それほど思い通りにはならないかなあと思っていました。」

よもぎ「なるほど。自分の関わりしろがあるかどうかですか。」

橋本さん「そうなると“自分で作る楽しさ“の部分が制限されると感じたので悩んでいる部分がありました。荻ノ島集落は良い意味でまだまだやりがいのある場所だなと感じたので最終的にここを選びました。」

移住

橋本さんは社会に出て働いてから田舎に移住するという選択肢があったにも関わらず新卒で荻ノ島集落にインターンとして移住しました。移住をしてから今年(取材当時2022年11月時点)で6年目だそう。

よもぎ「なぜ、荻ノ島集落を選んだのですか?」

橋本さん「ストレートに言うと、ここが良い田舎だなと思ったのでここに住み着きました。荻ノ島集落の人たちも良い人達で、高柳町もこれまでまちづくりを頑張ってきた地域なので外の人に対しての受け入れが寛容だったことも大きな要因ですね。」

よもぎ:「なぜ、新卒で荻ノ島集落に行こうと思ったのですか?」

橋本さん:「インターンの時にお世話になった荻ノ島集落の住民の方々はみんな80歳代なんです。もし、大学を卒業して普通に東京などの都会の会社で5年働いた後に田舎に来たら、今いる人は何人残っているだろうと思って。そう考えると、5年も時間はないのではないかと感じて新卒でここに来ました。」

よもぎ:「すごい決断ですね。決断するにあたって、不安はありませんでしたか?」

橋本さん「新卒で京都の山奥に移住した同じ大学の先輩が『日本は生活保護もあるし、そう簡単に死ぬことはない』と言っていたんです。それを聞いてそれもそうだと思いまして、「何とかなる」と考えて1年インターンの中で仕事は探せば良いかなと考えていました。」

よもぎ「荻ノ島集落で暮らしている今、どんな仕事をしていますか?」

橋本さん「インターン中に声をかけてもらうこともあって、朝の新聞配達や宿の手伝い、かやぶき職人、酒造り、米作りなど色々なことをして何とか生きています。」

「陽の楽家」とのかかわり

橋本さんは2022年9月にカフェ「陽の楽家」をオープン。建物自体は2000年に作られたものであったが活用されていなかったことにもったいなさを感じ、去年からカフェ経営のために動き出したとのこと。

よもぎ「カフェはどういった目的で作ろうと考えたのですか?」

橋本さん「カフェでは稼ぐというよりも、ここをきっかけに気軽に荻ノ島に来てもらって荻ノ島のことを深く知ったりゆったり滞在してもらいたい。そういう場所を作ることが目的でした。」

よもぎ「今後の目標はありますか?」

橋本さん「カフェはここにあり続けることで外の人にとっての関わりしろになると思うので、ここにあり続けることが目標ですかね。」

仕事と飽き性

茅葺、カフェの業務に加えて、朝は新聞配達など複数の仕事をしている橋本さん。これも「飽き性」によるものなのかもしれないと言う。答えのないことに挑戦することや、自然など自分ではどうしようもできないものを相手に振り回されることにも楽しさを感じるそうだ。

よもぎ「いろいろな仕事に関わっているのですね。」

橋本さん「仕事に関しては、やりたいこと、それとは別に稼ぐための仕事もあります。」

よもぎ「なるほど。仕事を分類しているのですね。例えば、その2種類の仕事とどのように関わっていますか?」

橋本さん「稼ぐための仕事は新聞配達とか、好きも嫌いもなく続けられるもので、それを続けている間にモノづくりなどやりたい仕事を育てています。」

よもぎ「そうなると、沢山の仕事がありますね。」

橋本さん「仕事があるっていうことは居場所があるということなのでありがたいことですよね。だからいろいろやってみようとも思えるんです。」

よもぎ「なぜいろんなことをやってみているのですか?」

橋本さん「飽き性なので1つのことを続けるよりもいろいろなことがしてみたいんです。」

よもぎ「茅葺の仕事は専門的で地道なイメージがあるのですが、飽きませんか?」

橋本さん「茅葺も作業としては単純な工程の繰り返しが多いんですが結構奥が深くって。屋根にはそれぞれに個体差があって常に学ぶことが多いですね。まだまだ学ぶことがたくさんあるので“飽きる“に到達していないのかもしれないです。」

4、インタビューを終えて

今回のインタビューでは都会出身で新潟県の田舎、荻ノ島集落に移住した橋本さんへの取材を通して、高柳や荻ノ島集落の良さと共に“自分の居場所”を作っていく大切さを感じました。

橋本さんは「考え方が合う」ことや「同じような仲間」、「自分の関わりしろ」といった、空間だけではない気持ちなどの環境から自分にとって心地の良い“居場所”を探して、そしてインターンや集落の生活を通して仲間を見つけて自分にとっての居心地の良さを開拓していったのではないかと思いました。私たちが居場所を求めるときにも、住む家、通う大学、暮らす地域、働いている場所だけではなく思い切って別の県や国に飛び出していて見れば、探そうと思えばどこにでも自分の居場所は作っていけるのではないか、「何とかなる」のではないかと思いました。

仕事があるということに対し橋本さんは「居場所や役割がある」と話していました。
仕事を“自分とコト”といった一方通行な考えだけではなく、“私と誰か”としてそこに関わる人達の繋がりを常に感じて向き合っていくことで、改めて自分と仕事の関係性を確認できる1つの方法になるのかもしれません。

橋本さんは自身を「飽き性」と言い、茅葺の仕事は「学ぶことが多い」ために飽きないと話していました。つまり、興味や意欲のよって茅葺の仕事のなかにも「いろいろ」を感じているのだと思います。
自分の特性に合わせて仕事を選ぶことは、意外と難しいんじゃないかと思います。得意なことを探すのも大切ですが、苦手なことに目が行きがちであったり、得意と言い切れない・見つけるのが難しいという時には、苦手だからこそできることを知ることで橋本さんのような自分の特性を生かした生き方を見つけられるのではないかと思いました。

ここからは今回のインタビューで訪れた場所とその紹介レポです。

5、今回訪れたトコロ


THERE IS NOEND (JA柏崎愛菜館)
 柏崎駅について、イナカレッジの方の車でお昼ご飯調達へ。行く先はJA柏崎愛菜館内にある農家レストラン「THERE IS NOEND」さん。ここではお弁当販売もしており、私はここで“オムカレー“と、今話題のラム酒の薫る洋菓子“カヌレ”を購入。レストランで出てくる料理のクオリティがそのままお弁当になっていてびっくり。卵はふわとろでスパイシーなライスに、ココナッツの効いたカレーが合うとても美味しいオムカレーでした!

THERE IS NOEND(THERE IS NOEND (stores.jp))
JA柏崎愛菜館(JA柏崎愛菜館(あいさいかん)/柏崎市公式ホームページ (kashiwazaki.lg.jp))

・ハコニワ

次に訪れたのはハコニワ。ドリンクと雑貨を販売している 「info by AT HOME LABO」 さん。壁面に取り付けられた白い木のラックに並ぶ手づくりのアクセサリーや雑貨は人の手の温かみを感じ、見ているだけでわくわくしました。この日は暑かったのでアイスレモネードを注文しました。レモンの酸味が染みるどこか懐かしい味がしました。

ハコニワ (ハコニワ - 9つの店と芝生の広場 - (柏崎市横山) (haco-niwa.net))
info by AT HOME LABO (info by AT HOME LABO / 新潟県柏崎(@infobyahl) • Instagram写真と動画)

・別俣農村工房

次に訪れたのは別俣農村工房。段差の低い階段に低い水場に下がっているネットに入った固形石鹸、真っ赤なランドセルから何らかの大会のトロフィーなど…昔の小学校の生活が見え、自分の小学校時代までが思い出される不思議な空間でした。

別俣農村工房 (農村自然保護再生体験 別俣農村工房 (asahi-net.or.jp))

・高柳じょんのび村

次に訪れたのは高柳じょんのび村。細いつり橋で川を渡ると視界に映る地面いっぱいの落ち葉と、大きな木に括りつけられた手づくりブランコ。茶色っ気の多い景色の中で陽の光を浴びた鮮やかなもこもこの銀杏の木はとても綺麗でした。
お土産処「じょんのび横丁」ではどぶろくなどのお酒や、お饅頭などの名産品、門出和紙のはがきなど高柳の有名なものを見ることができました。当時、私は未成年で残念ながらお酒の購入はできず。門出和紙でできた村田仙三 作の絵葉書とお饅頭を購入しました。もちもちとした触感に、しっとりしたあんこのお饅頭はとても美味しかったです!

高柳じょんのび村 (高柳じょんのび村 (jon-nobi.com))

インタビューした&この記事を書いたヒト
ペンネーム:よもぎ
出身:山形県
大学:新潟食料農業大学 2年
くらす:新潟県胎内市
はたらく:準備中
イナカレッジとの関わり:大学2年にくらすはたらく編集室に参加