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BATTLE ARENA 5th 決勝ラウンドレポート(デュエプレ9弾EX)

こんばんははじめまして。海月です。

書いているのがたいてい夜なのでこんばんはとしておきます。

自己紹介はあまり意味を成さないと思うので省略します。

とりあえずデュエプレはサービス開始当初からプレイしていて、毎月マスター到達するくらいです。

普段は環境考察やカード解説の記事を書いています。

今回は2021/8/21に行われたBATTLE ARENA 5th(以下、BA5th)の決勝戦の様子をテキストカバレージとして記していきます。

カバレージとは何か?という説明についてはデュエル・マスターズ公式サイトの下記の文章を引用します。

主に全国大会やグランプリなどの競技イベントを取材した記事のこと。上位入賞を目指す選手たちの情熱や超絶テクニック、そして1戦に込められたドラマを感じ取ることができるだろう。デュエマで強くなりたいなら要チェックだ!

また、前回の4thのカバレージについては以下をどうぞ。

では以下、ちょっとお堅めの書き方でいきますがよろしくお願いします。


決勝までの歩み

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※記事中の画像についてはデュエル・マスターズ プレイス【公式】のTwitterアカウントデュエル・マスターズプレイスの公式カードリスト【デュエプレ】公式大会バトルアリーナ 5th【DUEL MASTERS PLAY’S(デュエル・マスターズ プレイス)】より借用しています。

約3300名の代表としてこの場に立った8名に触れる前に、この大会が開催された9弾EX環境について簡単に述べよう。

単独デッキで18.5%と最もシェアを確保していたのは、9弾環境からビートダウンの新兵器として発明された『ガントラ・ガルベリアス(ガントラ・ビート)』だ。

シールド・トリガーを20枚弱採用したカウンター力の高さと高パワーのスピード・アタッカーを多用したドンドン攻めるデッキで、この決戦の場にも「自宅の番人」選手と「石垣島の にむらゆ」選手の2名の使用者がいることから折り紙付きの強さを持っていると言えるだろう。

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複数デッキで最大シェア21.2%の『光水闇火コントロール』には『除去コントロール』『ゼロ・フェニックス』『ドルバロム』などの多様なデッキが含まれ、いずれもグラフの背景に見える強力なカード「竜極神」を採用したデッキである。

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この決勝トーナメントでは、一度着地すれば闇文明以外の場のクリーチャーとマナをすべて破壊する「悪魔神ドルバロム」を切り札に据えた、「ザリル」選手の『ドルバロム除去コントロール』が駒を進めてきた。

グラフ上で3番手・14.3%の『グレートメカオー』は、従来の『光水』の形に加え、『5色』の形もこの大会では実力者として活躍を期待された。

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残念ながらこの晴れ舞台には残れなかったものの、ユーザによって生み出されたこの『5色』は解説の松浦氏を唸らせる完成度を誇り、予選まで含めたこの大会の台風の目であった。

以下は筆者がTwitter上で報告のあった、BA5thの予選通過者のデッキを集計したものだ。

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『光水』『5色』を合わせた『グレートメカオー』の比率は約25%で、全体使用率の14.3%と比しても極めて優秀なデッキであったことがよくわかる。

BA3rdから存在した『グレートメカオー』は、この5thまでの3回の大会でいずれも強力なアーキタイプであった。

だが目立った活躍はBA3rdで一名が決勝ラウンドに進んだのみで、実力に伴わない結果が続いている。

次こそは、次こそは、と思われる『グレートメカオー』が次回の6thをどのようにして迎えるか、一つの見物だろう。

続く4番手で8.0%のシェアである「ボルフェウス・ヘヴン」は、最新弾の看板カードを切り札にしたヒーロー性の高いデッキだ。

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プレイ難度こそ多少高いものの安定した出力があり、この大会のダークホースであった『5色グレートメカオー』に強く出られることからも期待されていたデッキであった。

その『グレートメカオー』と同じく決戦の地に辿り着くことはできなかったものの、このBA5thにおいて重要な立ち位置にいた存在であることを忘れてはならないだろう。

5番手で6.6%の『5色コントロール』は、9弾にて5色である最大の意味、「フェアリー・ミラクル」を獲得して成立したデッキだ。

特に主力となっていたのはデュエプレでも最重量級のコストを持つ一撃必殺カード「バイオレンス・フュージョン」を切り札とした形で、4thから連続して決勝トーナメントに進む「lotas」選手が相棒として選んでいる。

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豪快な分長所・短所が浮き彫りとなりやすいこのデッキをなぜ彼が手に取ったのか、自身のYoutubeチャンネルで解説する動画は一見の価値があるだろう。

グラフではその後に付けた4.8%の『サバイバー』は、火文明を抜いた白青黒緑の4色で構築されるものが一般的で、多様な文明の特色を持った能力を活かす強力なデッキタイプだ。

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最もポピュラーであったこの型は残らなかったものの、「しょーたん#BEANS」選手が独自に生み出した白青緑で構成される『マルコ・サバイバー』が無事予選を突破している。

グラフ上では一つ飛ばして3.2%の使用率だったのが、同じく「エンペラー・マルコ」を軸とした、たかし屋選手の『マルコビート』だ。

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手前味噌で恐縮だが、この『マルコビート』は筆者が前月に結果を残していたデッキでもある。

攻防一体のこのデッキはどちらかといえばAllDivisionがメインのデッキであるが、たかし屋選手はNewDivisionルールで行われたこの大会でデッキのポテンシャルを遺憾なく発揮し、リザーバーではあるがこの本戦への出場を叶えた。

グラフ上では一つ戻って、3.5%の使用率をつけていたのが、キリン選手操る『ギフトドルバロム』である。

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闇と自然の2色で構成された、場に出れば一挙にゲーム展開を有利にする「悪魔神ドルバロム」の早出しに重点を置いたデッキだ。

この9弾EX環境ではメタデッキの枠に留まらない活躍を見せていたデッキだが、相性の有利・不利が顕著なことからBO1で予選が行われる本大会向きではないと評価されていた。

それは全体の使用率にも現れていることだが、ガードが下がった隙をしっかり突いて好位置でこの場に上り詰めてきた。

最後に紹介するのが、グラフ上で3.1%の使用率を持つ『ドリームメイト』で、前回・前々回の大会でも結果を残してきた息の長い王道ビートダウンデッキだ。

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ソリミオナ/RoS選手が相棒とした『ケンジ・ドリームメイト』は、奇しくも3rd大会で決勝ラウンド進出を果たした、同チームのマッスルFM選手も使用したデッキである。

環境での立ち位置は少々悪くなってきていたものの、チームの力を得てか、この晴れ舞台に上り詰めてきた。


改めて全体のデッキ使用率とこの本戦に進んできた8名のデッキタイプを見比べると、『ガントラ・ガルベリアス』こそ順調な突破率であるが、他デッキに関しては意外性の高いものが多くあったというのが筆者の正直な感想だ。

だが、これは今に始まったことでなく、ある意味でBAの名物とも言える光景だ。

BAは予選の約10回戦がBO1の長期戦であるその特性上、安定して勝ちに行くのが難しいルールである。

数々の猛者を苦しませる要因でもあるが、それは裏を返せば実力以上のパフォーマンスを発揮することも可能で、通常のメタゲームからは逸れたデッキの活躍が見られる場だとも言えるだろう。

筆者はこの祭事のように、全プレイヤーが夢を見ることができる舞台が、率直に言って大好きだ。

”このゲームはまだまだ熱く、面白い”と、6000人を超える人間が年齢も地理も関係なく共有するこの時間が、今後も続いていくことを切に願っている。

そして本大会のクライマックス・最高にして最後の地に辿り着いたのは、『ガントラ・ガルベリアス』の「自宅の番人」選手と、『マルコビート』の「たかし屋」選手だ。

共にビートダウンでありながら、強力なシールド・トリガーに囲まれた逆転力の強いデッキである。

予選を含めたこれまでの10数戦、この2名もきっと幾度となくドラマを見せてきたことだろう。

この最終決戦ではいったいどのような名シーンをデュエル・マスターズプレイスの歴史に刻むか。

正真正銘のラストバトルが、今始まった。

「デュエマ・スタート!!!」


第1試合

僭越ながら『マルコビート』を擦り切れるほどに使用した立場から述べると、この二つのデッキ相性は非常に難しい。

互いに有効なトリガー数が10枚以上と多く、一枚のカードの引きや先攻後攻といった要因一つで結果が変わることが起こり得るからだ。

筆者は『マルコビート』側が僅かながら有利だと考えるが、反対の意見を受けても決して否定はしないだろう。

ここまで来た以上、それがどんなプレイヤーであっても言えることだが、懸けられるのは互いの実力と運命力だけだ。

ついに長き勝負の果ての、3300名の頂上決戦が始まった。

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自宅の番人選手操る『ガントラ・ガルベリアス』はそのデッキ名を冠するカードがそうであるように、高パワーとスピード・アタッカーを持った火文明のカードを主体にしたデッキだ。

だが、デッキに20枚あるはずの火文明のカードはその初手に1枚もなく、加えて手札すべてがシールドにあって欲しいカードばかりだ。

渋い顔をしてもおかしくないが、その動揺を見せることなく、素早く色基盤となる「策略と魅了の花籠」をマナゾーンに送りこんでいく。

対するたかし屋選手の手札は、マナカーブに沿ったカードと、このデッキの全文明が揃ったさして悪くはない面子だ。

だが、『ガントラ・ガルベリアス』と対面する際に重要な「エンペラー・マルコ」が引けるまでは安心はできないとも言える。

その後のドローは互いに苦しいものが続き、後攻3ターン目にたかし屋選手が「電磁星樹アマリンα」を出した返しの4ターン目で、ようやく自宅の番人選手は「ガントラ・マキシバス」をバトルゾーンに召喚した。

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ゲーム流れが変わったのは、たかし屋選手の4ターン目だ。

キーカード演出が入り、待望の「マルコ」がその手札に加わる。

すかさず2枚目の「アマリン」を場に送り出し、これで次ターンの「マルコ」の着地を確実のものとした。

対する自宅の番人選手は切り札の一つである「ガルベリアス・ドラゴン」を引けたものの、最初の引きの悪さも祟って、このターンにプレイできるカードが存在しない。

勝敗へのバランスが傾くなか、「ガントラ」がこの試合初めてのシールドブレイクを行った。

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迎えた5ターン目、「マルコ」の要求マナに到達し、たかし屋選手は迷わず「マルコ」をバトルゾーンに着地させた。

「ガントラ」を手札に返し、先ほどのシールドブレイクをお返しするかのようにW・ブレイクを決めていく。

序盤に大量のシールド・トリガーを手札に持ってきてしまっている自宅の番人選手のシールドは、どうしても期待が薄くなってしまう。

だが、そこはさすがのカウンター力を持つ『ガントラ・ガルベリアス』だ。

除去カードである「花籠」を発動し、着地したばかりの「マルコ」はマナゾーンへと吸い込まれていった。

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「マルコ」が除去されてしまったものの、たかし屋選手は攻撃の手を止めず、残った「アマリン」でも追加のブレイクを行っていく。

「フェアリー・ライフ」がシールド・トリガーで発動するが、このターンで一気に3枚のシールドを失ってしまった自宅の番人選手は一挙に形勢が危ういものとなってしまった。

このマッチアップで重要なポイントの一つは、シールド数で相手の優位を保ち続けることだ。

互いに厚いトリガーをコンセプトの一つとしている以上、早期にブレイクを行い、相手の逆転要素を少しでも削り取っていくのが肝となってくるからだ。

返すターンで自宅の番人選手は「運命の選択」を唱え、スピード・アタッカーとなった「ガントラ」と「居合のアラゴナイト」を展開し、「アマリン」は破壊されてしまう。

一見して「アマリン」は不要なブレイクを行ったようにも見える場面であるが、実はこれも正しい選択肢の一つなのである。

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ようやくバトルゾーンの優位を保てた自宅の番人選手は、スピード・アタッカーの「アラゴナイト」で2枚目のシールドをブレイクした。

だが、ここでたかし屋選手のデッキもその強みをしっかりと発揮する。

ブレイクされたシールドから「アクア・サーファー」が登場し、「ガントラ」を再びバトルゾーンから取り除いた。

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こうなると、前ターンに「マルコ」で手札補充しているたかし屋選手の取れる戦術は豊富だ。

「聖鎧亜ジャック・アルカディアス」を場に出して「アラゴナイト」を破壊すると、追加の「アマリン」を場に送りこんでさらにシールドをブレイクしていった。

一度火の点いた猛攻は休まるところを知らない。

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実況・解説のはんじょう氏は「連珠の精霊アガピトス」を出すと予想していたため、少々驚いている様子であった。

たしかに「アガピトス」をプレイして「アマリン」を出し、「サーファー」で「アラゴナイト」を倒す手段は手堅く見える。

仮にデッキに「アマリン」がない場合でも、手札から「アマリン」を出すことでリカバーが効く範囲だ。

だが、このデッキがシールド・トリガーで発動する「ヘブンズ・ゲート」によって「アガピトス」を場に出す動きは、「ホーリー・スパーク」を唱えるに等しい防御力を持つことは忘れてならない。

加えて、相手の「ホーリー・スパーク」は対処のしようがないカードで、唯一できることとすれば早いうちから割っておくことのみだ。

そこまでを踏まえつつ、このプレイを行ったのであれば、たかし屋選手の理解度はかなりのものだと言えるだろう。

ブレイクしたシールドは「フェアリー・ライフ」で、場に3体のクリーチャーを残したまま自宅の番人選手はターンを迎えた。

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こうなると、自宅の番人選手にできることは「ジャック」+「ガルベリアス」で場の2体のクリーチャーを倒すか、自分のシールドに賭けて「ガルベリアス」でブレイクをするかのどちらかだ。

一瞬の逡巡の後、自宅の番人選手が取ったのは強気な後者の選択だ。

このプレイに実況・解説のはんじょう・加賀美氏は動揺を示したが、たかし屋選手が1ターン目に「烈流神」をマナゾーンに置き、2つ前のターンには「マルコ」を出していることを踏まえれば、悠長に盤面の優位を取る前者の選択を避けたのも納得のいくことだ。

いくら目の前の敵を倒したところで、残りの手札に即攻撃可能な「烈流神」か「マルコ」があればひとたまりもない。

あとはここでシールド・トリガーを踏んでしまうことを避けつつ、自分のシールドに有効なカードが潜んでいることを願うのみだ。

ブレイクされた「アガピトス」と「クゥリャン」がたかし屋選手の手札に加わり、自宅の番人選手はまず第一の関門を越えることに成功した。

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自宅の番人選手が危惧したであろう、「烈流神」も「マルコ」も、残念ながらたかし屋選手の許には引き寄せられていなかった。

そうなれば、やることは前ターンから場にいる「ジャック」と「アマリン」でシールド・トリガーを踏まないことを願って詰めるのみだ。

追加の「ジャック」と「トリア」を場に送り、自宅の番人選手の「ジャック」を破壊して最後のシールドをブレイクしていく。

肝心な第一戦、祈りが届いたのは、たかし屋選手の側だった。

たかし屋選手の操る『マルコビート』が、一本目を先取し、同時に王座へリーチを掛けた。

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第2試合

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再び自宅の番人選手の先行で始まった第2試合目。

後がないにもかかわらず、自宅の番人選手の手札は先ほどの試合に比べて”ほんのわずかにマシ”と言える程度の悪いものだ。

対するたかし屋選手の手札は切り札の「マルコ」と進化元も揃って、ほぼ理想に近い手と来ている。

自宅の番人選手が3ターン目までマナゾーンにカードを置くしかできない一方で、たかし屋選手は順調に2ターン目に「アマリン」を、3ターン目にはちょうど引いた「コメット・チャジャー」を使用して、次ターンの「マルコ」の着地を確実なものとした。

このデッキの理想と言える動きである。

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自宅の番人選手はもし後攻を取ってしまっていたらひとたまりもなかっただろう。

先行のアドバンテージを活かすことができ、どうにかここから強力なカードを投げ続ける準備をすることはできた。

「運命の選択」を唱えると「ガントラ」を場に出し、この試合先制となるシールドブレイクを行った。

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ブレイクされたシールドから「アガピトス」が手札に入り、たかし屋選手は4ターン目を迎える。

ドローした「クゥリャン」をマナに置くと、待ちに待った「マルコ」を召喚した。

素でスピード・アタッカーを持たない「ガントラ」は、一度手札に戻されてしまえば、この後もうバトルゾーンに降り立つことは早々ないだろう。

「マルコ」の効果で「ガントラ」をバウンスし、すかさずW・ブレイクを叩きこんでいく。

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まだまだ殴り合いは始まったばかり、シールド・トリガー次第でいくらでも形勢の傾きがある勝負だ。

残念ながら発動したカードは「フェアリー・ライフ」のみであったが、自宅の番人選手はこれで次のターンどんなカードをマナゾーンに送っても「ガルベリアス・ドラゴン」を着地させることができる。

いよいよエンジンが温まり、本領を発揮する5ターン目を迎えた。

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このターンのマナチャージで7マナに到達する自宅の番人選手の手札は悩ましい。

最も取りやすい選択肢は「ガントラ」を出して「運命の選択」を唱えて「アラゴナイト」を出し、「運命の選択」の効果でスピード・アタッカーにした「ガントラ」と併せて2枚のシールドをブレイクするプランだろう。

素でパワーが高く、『マルコビート』では「サーファー」と条件付きの「マルコ」以外で対処できない「ガルベリアス」を出す道もありだ。

そして三つ目のプランが、自宅の番人選手が取る「サーファー」で「マルコ」を手札に戻すものである。

「トリア」+「マルコ」や「ジャック」などで再度除去されつつ展開を許しうる、かなりリスクの高いプランと言えるだろう。

だが、先に攻め込まれているこの状況で、これは唯一の「マルコ」を除去できる手段でもある。

その恐怖からか、あるいはこれを唯一の逆転手段と考えたか、自宅の番人選手はこの三つ目のプランに運命を委ねた。

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だが、たかし屋選手の手札にはこの試合の開始よりずっと抱えられていた「トリア」があることを、自宅の番人選手は当然知らない。

もはやプレイすることはない「聖騎士ヴォイジャー」をマナに埋めると、「トリア」から「マルコ」が進化し、「アクア・サーファー」を再度自宅の番人選手の手札へと送り返していった。

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すかさず二度目の攻撃が自宅の番人選手のシールドを破壊する。

ここの出目次第で、まだいくらでも戦況はひっくり返る正念場だ。

しかし、発動するのはこの決勝戦で4度目となる「フェアリー・ライフ」のみであった。

たった2回の試合で4枚も捲られる「フェアリー・ライフ」に、何度悔しい思いをさせられることだろう。

強力なシールド・トリガーが多い『ガントラ・ガルベリアス』を使用していて、刹那にもそのような嘆きの想いを抱くのは想像に難くない。

だが、冷静に見ればこの「フェアリー・ライフ」はこれまでの3回とは違い、決して残念なものではない。

むしろ”最も来てほしかったカードの1枚”とも言える、宝石のような光を見せる「フェアリー・ライフ」だ。

自分のターンを迎えた自宅の番人選手はマナチャージをして10マナに到達し、先ほど同時にブレイクされたシールドから加わった「アラゴナイト」と「ガルベリアス」の同時出しが可能となった。

序盤から手札で鳴りを潜めていた「ガルベリアス」が、満を持してバトルゾーンを駆ける。

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さらに「アラゴナイト」がシールドをブレイクし、たかし屋選手のシールドを3枚まで削った。

これで次のターンが返ってくれば、「運命の選択」からスピード・アタッカーを出しつつ「ガルベリアス」を追加することで、シールド・トリガーを1枚踏むくらいならば貫けるほどのアタッカーが揃う。

序盤は有利と思われた、たかし屋選手の喉元にも、一転して『ガントラ・ガルベリアス』の鋭い刃が突き付けられた。

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「マルコ」による大量ドローとブレイクによって、たかし屋選手の手札は満タンの10枚で、たった今ドローした「トリア」は墓地へと吸い込まれていった。

手札が潤沢でありながらも、この状況で取れる道は実はそれほど多くない。

プラン①は最も手堅く、解説でも述べられていた「ジャック」「アマリン」「トリア」を出すプランだ。

こうすることで次のターンに攻め切られる可能性を限りなく小さくでき、その上で次のターン1体除去されても「マルコ」を進化させることで勝ちを望める。

プラン②は再び「アマリン」「マルコ」で「ガルベリアス」を手札に戻し、最後のシールドをブレイクするプランだ。

だが、これは最後のシールドからクリーチャーがトリガーすると逆転負けの可能性が高まるという小さくないリスクを持ち、”ラストシールドのブレイク”という甘い蜜に誘われて考えなしに選択するのは避けたい、罠の選択肢でもある。

ただ、たかし屋選手の手札に抱えられた「烈流神」は、相手のシールドがなくなる=勝利となる明確な勝ち筋だ。

「マルコ」で「ガルベリアス」をバウンスすれば、次ターン「ガルベリアス」に加えてもう一体のスピード・アタッカーを出さねば相手の勝ちはない。

さらに、ここまで見えているたかし屋選手のシールド・トリガーはデッキ中12枚に対してたったの2枚だ。

先に一勝をもぎ取っているたかし屋選手には、ここで一つ賭けに出てみる余裕があると言えるだろう。

長考の末、たかし屋選手はプラン②に”運命の選択”をした。

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自宅の番人選手の最後のシールドは「アラゴナイト」であった。

これで次のターンを凌げば、たかし屋選手の勝利は確定する。

険しい表情で画面と向き合っていたたかし屋選手は、一呼吸して祈るように姿勢を整えた。

追い込まれた自宅の番人選手も、もはや悠長なことはしていられないと、たかし屋選手のあの大量の手札を見て全身で察知しているはずだ。

既に腹は決まっている。

一挙に攻めるべく、まずは1枚目の「ガルベリアス」を着地させた。

場に自然文明のクリーチャーが場にいることで、山札の上から1枚目がマナゾーンに置かれる。

このターン実現可能な最大出力は、このマナブーストで単色カードが置かれ、計12マナを使用して「ガルベリアス」を2体降臨させることだ。

これまでにシールドから2枚現れた「フェアリー・ライフ」は、この2体「ガルベリアス」のためだったはずだ。

頼む。

単色カードよ、山札の一番上にあってくれ。

そう願いながら送られるカードは…

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この2試合中で序盤に何度も望まれた、デッキ名を冠するもう一枚のカード「ガントラ・マキシバス」であった。

想いは一歩届かなかった。

多色カードが置かれたことで残り使用可能マナは5。

運命は残酷だが、まだ希望の欠片はしっかりとその手に残されている。

「アラゴナイト」を場に送り込み、自宅の番人選手は最後の攻撃を始める準備を終えた。

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突如形成されたアタッカーの布陣に、たかし屋選手は文字通り頭を抱える。

通れば自宅の番人選手の勝利、守ればたかし屋選手の勝利と、いよいよこの長い戦いにも終わりが見えてきた。

緊張の刹那を越え、自宅の番人選手の「アラゴナイト」が二人の想いを背負ったシールドをブレイクする。

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少しの間の後、画面の結果よりもカメラ越しのたかし屋選手が天を仰ぐ方が先であった。

この頂上決戦を共有する何千人よりも、彼はほんの一瞬、その何物にも代えがたい至福を味わったことだろう。

ブレイクされたシールドから「ジャック」が登場し、自宅の番人選手の「アラゴナイト」を葬った。

自宅の番人選手のこのターンの勝利はなく、同時にたかし屋選手は次のターンで確実に勝利することが決定したのであった。

この舞台に立った義務でもあろうだろう。

自宅の番人選手は最後までプレイを続け、「ガルベリアス」で最後の2枚のシールドをブレイクした。

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たかし屋選手の最後のシールドにあったのは、さらにもう1枚の「ジャック」のみであった。

シールド・トリガーが2枚残っていたのであれば、自宅の番人選手が敗北してしまうのも仕方ないと考えられるだろう。

だが、忘れてならないのは、自宅の番人選手のこのターンの最大出力は「ガルベリアス」を2枚出すことであったことだ。

もし1枚目の「ガルベリアス」のブーストが単色で、2枚目の「ガルベリアス」を出すことができていれば、水のクリーチャーが場にいることで”ブロックされない”の効果を得る「ガルベリアス」を止める手立てはなかったのだ…

1枚目の「ジャック」が出た瞬間に、敗北を悟ったことだろう。

2枚目の「ジャック」が出た時点で、ほんの些細な不運の嚙合いから敗北を喫することに気付いただろう。

ド派手なリアクションからの一瞬の苦しげな笑みを見せた後、彼は胸に押し寄せるに違いない悔しさを跳ね除け、たかし屋選手へエモートを送った。

「やるな…てめえ!!!」

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本来はこの場にいるはずのない、リザーバーから勝ち上がったたかし屋選手は、始終夢見心地であったことだろう。

長い長い夢のトンネルを抜けた終着点は、輝かしい栄光の玉座である。

最後はゆっくりと誤りのないようにダイレクト・アタックを決めると、全身を振るった大きなガッツポーズを見せ、深い、深い一礼を行った。

自宅の番人選手は…吹っ飛んだ。

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おわりに

勝負ごとにおいて最も重要な、骨にあたる部分は言うまでもなくその戦いの中身であり、プレイヤーの情報は極論存在せずとも成り立つ肉の部分だ。

しかし、それでもこの決戦に挑んだ両選手の人間性について触れないわけにはいかないと私は考える。


自宅の番人選手は、過去5回の大会で決勝ラウンドに進んだ計40名の選手の中でも、最も奇抜な選手の一人であっただろう。

そのパフォーマンスの数々は、始終視聴者を、実況席まで交えて盛り上げてくれた。

だが、彼はただの悪戯好きな道化師というわけではない。

この決勝ラウンドでは毎試合、画面越しの対戦相手に必ず「よろしくお願いします」と述べ、深く一礼をしていたのだ。

この誰もが緊張せざるを得ない舞台で、姿の見えない敵に対して敬意を払うことが簡単なことだろうか?

ここまで勝ち上がってきたプレイヤーとしての実力は当然として、ユニークさと礼儀も持ち合わせた、最高のエンターテイナーが自宅の番人という選手であった。


彼のインパクトに引っ張られてしまうが、たかし屋選手もまた、素晴らしい人格者である。

実は筆者は、たかし屋選手がリザーバーとして決勝進出を決めた際、既にTwitterにて彼が公開していた構築ツイートを削除するよう、進言している。

デッキリストが非公開のこの大会において、情報の漏洩を少しでも防ぐことは、勝敗に大きく結びつくことだからだ。

だが、彼の返答はまったくもって予想だにしないものであった。

「リザーバー故の情報アドバンテージ提供だと思いながらそれでもいいプレイができたらなと考えております」

私はデュエル・マスターズプレイスの情報を収集し、発信する立場として、日頃から何事においても中立の立場でいたいと考えている。

ましてこの決勝ラウンドにはTwitter上で交流のある者も複数名参加しており、等しく応援したいと考えていた。

だが、この返答を受けた瞬間、私の心がほんの僅かな時でも揺らいでしまったことを否定することはできない。

この人に勝って欲しい。

自分の想いもふんだんに詰まった『マルコビート』に、この人の手で栄光の花束を与えて欲しい。

たった一文、二文のやり取りであったが、一瞬でもそう思わずにはいられなかったことを、ここに告白する。


優勝インタビューで賞金の用途を尋ねられた際の、「まずは家族に」とはにかむたかし屋選手の微笑みは、やさしさと力強さを兼ね備えている。

「もうちょっと賞金乗せてあげようぜ」

「この番組始まって一年以上経つけど、はじめてジーンとしている」

「個人的に(賞金を)乗せたい」

解説の面々のユーモアに満ちた賞賛が、このBA5thの決勝を象徴としているだろう。

そして、この最高の場を作り上げることに貢献した自宅の番人選手にも、最大限の労いを送りたい。

長く暑い真夏の、血を滾らせるような熱い勝負の後には、あたたかな空気が満ちていった。


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