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プロセカ/ニーゴ「傷だらけの手で、私達は」考察 〜暁山瑞希とサクラの取り合わせ〜



まえがき


こんにちは、のえぼです。
前回のニーゴイベストを読んでから首を長くして待っていた絵名バナーがやってきました。
「荊棘」を読んでから瑞希や”瑞希たち”のことを考えると複雑な気持ちになっていたので、絵名が勇気をもって救ってくれたのが嬉しかったですね。
ちなみに「荊棘」については、拙文を投稿しているので是非あわせてどうぞ

というわけで、今回のイベスト「傷だらけの手で、私たちは」に関する考察を行っていこうと思います。
アフターライブまでに書き終わりたいなぁ……



⚠️注意⚠️
本記事は、ノンバイナリージェンダーやクィアを瑞希のパーソナリティと捉え、考察を行います。これらの方々を攻撃、差別する意図はなく、無学者なりにリスペクトをもって執筆に努めますが、不快に思われる可能性を御承知おきください。

考察


サクラは瑞希のモチーフ

今回の期間限定ガチャ「That flower, once more」イラストも秀麗でしたね。
ニーゴキャラたちの後ろに咲き誇っていた花は明らかにサクラだと分かります。

〔まだ何も知らない〕宵崎奏の特訓後イラスト。夜桜が舞う公園のような場所。草原の上に奏が膝をたたんで座り、舞う花びらを見ている。
〔まだ何も知らない〕宵崎奏
〔私がやるべきこと〕MEIKOの特訓後イラスト。MEIKOが満開の桜の木の下で、花に指で触れている。
〔私がやるべきこと〕MEIKO
〔こぼれた想い〕暁山瑞希の特訓後イラスト。花びら舞う桜の木の下で、瑞希が涙をこぼしながら笑いかけている正面絵。
〔こぼれた想い〕暁山瑞希
〔傷だらけになったとしても〕東雲絵名の特訓後イラスト。絵名が優しく笑みを浮かべながら、落ちてくる花びらを手で受けようとしている正面絵。
〔傷だらけになったとしても〕東雲絵名

奏は夜空に舞う花弁を見つめ、MEIKOは枝に触れ、絵名は花弁を受け止め、サクラに意識が向いているのに対して、瑞希だけは目を瞑って涙をこぼし、安心したような表情で微笑んでいることから、今回瑞希を象徴するモチーフがサクラだと推測されます。

私はこれらのイラストを見たときに、「瑞希とサクラ、上手い取り合わせだな~」と思いました。
今回はその理由を、花言葉等ではなく、サクラがもつ生物学的な性質から紐解いていきます。

サクラの繫殖における不思議な性質

まずサクラ、と一口に言っても、八重咲のものや花がピンクや白のものなど沢山の種類があります。
瑞希と絵名の背後に描かれているものは、5枚の花弁や薄いピンク色からソメイヨシノという品種であることが推察されます。
ソメイヨシノは最も代表的なサクラの品種で、多くの桜並木や公園、学校などに植えられています。

そのルーツはエドヒガンとオオシマザクラの2品種の交配されたという説、偶然生えていたものが発見されたという説など諸説あり、現在の東京都豊島区駒込にあたる「染井村」で誕生し、それが全国に広まったと言われています。
ただ、そこで少し”問題”が発生しました。

ソメイヨシノは偶然生まれた個体でした。おそらくエドヒガンとオオシマザクラを同じように交配しても、ソメイヨシノほど花のサイズや色が程よく、花が葉より先に出るものは得られなかったのでしょう。
そこで、ソメイヨシノは「接ぎ木」をしていくことで全国に広まりました。

接ぎ木は生物学的には栄養生殖と呼ばれる繁殖方法であり、元の個体の一部が成長して新しい個体となります。イメージしやすいのは、ジャガイモの「いも」でしょうか。いもが緑色になったり、芽が出るのは、それが親芋として新しい個体となるためです。
栄養生殖の特徴としては、「親」と「子」が遺伝的にクローンとなるため、親とそっくり同じな個体が得られます。つまり、ソメイヨシノでは親個体と同じ花を咲かせられるのです。


「サイカル・ジャーナル」NHKより。接ぎ木のイメージ図。
台木に据え付けられた枝からクローン個体が育つ様子。

また、サクラの生殖様式の特徴に「自家不和合性(じかふわごうせい)」と呼ばれるものがあります。名前は難しいですが、要するに自家受粉をしても実ができない仕組みです。
自家不和合性はキャベツや菜の花に代表されるアブラナ科などにみられ、同種の個体群内での遺伝的多様性を高め、絶滅に対するレジリエンスを上げるメリットがあると考えられています。

先ほどの、接ぎ木で増殖するソメイヨシノは全てクローンである、という話と合算すると、ソメイヨシノは実をつけてソメイヨシノの種から増やすことはできないのです。


ソメイヨシノだって“化けの花”なんだ

今までソメイヨシノの繁殖における性質を紹介してきました。なかなかに希少な性質をもった植物であることがご理解頂けたかと思います。

さて、話は変わって「荊棘」のストーリーに触れます。
瑞希がおかれている困難の根本にあるのは、男子生徒Aをはじめとする(読者の私たちを含め)大衆のノンバイナリージェンダーに対する理解と尊重のなさでした。
ノンバイナリージェンダーの割合は全体に対して低いとされていることは現実ですが、その希少な特徴を異質なものとして集団から切り出して排斥するような視線というのは「化けの花」の歌詞にも表れていました。

なにその目 やっぱその目
はじめましてじゃないね
(中略)
見ないで 理解出来ないでしょう?
まるで咲いてしまった化けの花

「化けの花」歌詞


希少さや異質さが本質であるならば、交配では再現不可能な花を偶然咲かせたソメイヨシノも、ある意味“化けの花”ではないでしょうか。

また、自然交配では増殖できないソメイヨシノがつける花の雄しべと雌しべは、元来の「オス/メス」の二項対立が曖昧になっている表象といえるかもしれません(もちろん、植物であるソメイヨシノに「身体の性」以外の性の性質はありませんが)。
言い換えるなら、ソメイヨシノの花の「雄しべ」と「雌しべ」は、「ただ存在する」くらいのもので、その器官の本来の性質というのは想定/期待されていないのです。

これは、自身の身体の性やノンバイナリージェンダーであることに起因する困難を懸念した瑞希に対して、「そんなことはどうでもいい」と言い放った絵名の姿勢に通ずるものがあると個人的には思います。

ここまでを踏まえると今回のカードイラストは、瑞希を大衆が「化けの花」と揶揄し忌避したのに対し、絵名をはじめとした瑞希の周辺の個人にとってはソメイヨシノのように美しく、何物にも代えがたいパーソナリティであることが表現されたものだと考察されます。

おわりに

本記事ではソメイヨシノの生物学的な性質から、瑞希との共通項を見出して、その取り合わせの味わい深さを語ってきました。

最後に書き添えておきたいのは、ここまでの議論はソメイヨシノと暁山瑞希にフォーカスしてきましたが、根底にあるメッセージ性というのは誰しもが唯一無二のパーソナリティを持っているということです。
「世界に一つだけの花」「みんなちがってみんないい」のように、他者への理解とリスペクトを忘れてはならないな、と改めて身を引き締めた次第です。

是非感想やコメント、ご指摘などはTwitterまでよろしくお願いします。
それではまた。

いや~、東雲絵名さん、週刊少年ジャンプみたいでカッコよかったな~~


参考
サイカル・ジャーナル ソメイヨシノその起源をめぐる旅 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2022/04/special/someiyoshino/

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