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不眠症浮袋【毎週ショートショートnote】

前回の「無人島生活福袋」のアナザーストーリーです。


始まりは、父が買ってくれた冗談みたいな福袋でした。

開けるとカバの形になるテントが入っていたんです。口が大きく開いてましてね。父もこれなら中が見えるから安心だと言って、庭に広げることを許してくれたんです。

ナイフの形をしたヘアブラシもありました。母にあげたんですが、受刑者が丸坊主にしているようにしか見えなかったからやめてもらいました。

あとは、ピアスを付けたおじさんの頭を灯すキャンドルや激辛グミ、変なサングラスもあったかな。最後雑でしたね。そしてこれ、大熊充さんの『生き抜く力』。

実は当時、私不登校だったんです。どうしても集団になじめなくて。毎晩寝付けず、小さなプールに漂ってる浮袋みたいな状態でした。

でもテントの中、キャンドルの光の下でこの本を読んで気付いたんです。世界は大海原のように広いんだと。カバの口から見える景色が全てではないんだと。

我が「福来地所」は、業界初の年商5兆円を目指し、宇宙へビジネスを拡大することを、ここに発表致します。未来は創り出すものなのです。

(435文字)


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