第十七章 それぞれの道2

「亜人お前にも話がある。お前の実力は用心棒をするだけにはもったいない。そこで弥三郎を助ける補佐官として共に働いてもらいたい」

「オレが補佐官!?」

そんな主従のやり取りを見ていた喜一が亜人へと声をかける。その言葉に彼が心底驚いた顔をして固まった。

「亜人……僕ずっと亜人と肩を並べて歩きたいって思っていたんだ。だから補佐官になったらこれからは友達として普通に接していけれるよね」

「弥三郎様……」

話を聞いてほっとした顔で弥三郎が話す。亜人は思ってもいなかった言葉に驚いた顔で彼を見詰めた。

「さって、二人はそのままそっとしておくとして。次に真人。お前の人形使いとしての腕を見込んで頼みたい事がある。俺は前からずっとからくりを使った文明道具を開発したいと思っていた。そこでお前を開発部門の責任者として任命したい」

「有難う御座います。期待に応えられるよう頑張ります」

喜一の言葉に嬉しそうにはにかみ真人が答える。

「よかったね、真人」

「おめでとう。真人」

「うん、有難う」

ケイトとケイコがはやし立てるので彼は頬を赤らめながら照れ笑いした。

「さて、次に栄人。お前の実力はただの武士として地方に置いておくにはもったいない。そこで城で働く武官としてお前を迎え入れたい」

「有り難き幸せ。そのご命令心して請け負いましょう」

喜一の言葉に栄人がにこりと微笑み心したといった感じで答える。

「次に優人。お前は腕輪を受け継ぎし者として神子の旅に同行し見事邪神を討ち滅ぼす手助けをした。そこでお前をこの城へと招き俺の側でその知恵を発揮する大賢者として仕えてもらいたい」

「畏まりました。僕の力がこの国のためになるのならば喜んでそのご命令に従いましょう」

彼が言った言葉に優人が承諾するとそう言って微笑む。

「さて、次に。信乃、お前は瑠璃王国の末裔の血をひく者だ。俺は小さい時からもしこの国に瑠璃王国のアオイ様の血をひく者が戻ってきたら、その時は国をそのお方に返上するようにって言われて育ってきた。だから信乃、お前にこの国を返さないといけない」

「へ?」

信乃へと真剣な眼差しを向けて語り出した喜一の言葉に、彼女は驚きと戸惑いで一杯の瞳を向けた。

「それから紅葉と蒼。お前達はこの国を救った神様として都にお迎えしたいと思ったが、そんなことお前達は望まないだろう。そして信乃も今まで何も知らずに生きてきた。だからいきなり国を返されたって困っちまうだろう。背負わなきゃなんないモノなんか背負いたかないだろうし。この国のことは俺に任せろ。だから三人は今まで通り仲良く自由に好きなように生きろ」

「あ、有難う御座います」

そんな信乃を安心させるようににやりと笑うと彼が言う。その言葉に彼女は安堵した様子でお礼を述べた。

「お、さすがは殿様ってだけはあってちゃんと人のこと見てるじゃねえか。俺はこれからも信乃と二人で仲良く平穏に暮らして行けれればそれでいい。信乃にももっとこの世界の事見せてやりたいしな」

「二人じゃない。おれもいる。それにお前はこっちに戻ってきたのだからな。おれに押し付けていた仕事をこれからはちゃんとやってもらわないといけない。信乃と二人で仲良く平穏に暮らすという夢はあきらめろ」

紅葉の言葉に蒼がムッとした顔で訂正する。

「はいはい。お山の神様が15年もの間留守にしてたんだからな。これからはちゃんと仕事もするって。だから蒼。これからは三人仲良く珍道中を楽しもうな」

「……信乃に見せたい世界は山ほどある。だからゆっくり世界を旅していこう」

「うん。紅葉と蒼君と三人で旅をするの楽しそうだもの。それに私もこの国の事もっと知りたい。だからこれからもよろしくね」

紅葉が溜息交じりにそう言うとにやりと笑う。それを軽く無視した蒼が信乃へと顔を向けて話す。彼女もそれに頷き笑顔で言った。

「さて、次にレイ。お前の実力はこの城に仕えるどの兵士達にも負けやしない。そんなお前の実力を見込んで俺を守る側近兵として迎え入れたいと思うのだが」

「レイ、良かったじゃないか。これで一緒に働けるな」

レインへと視線を向けた彼の言葉にアシュベルが喜ぶ。

「冗談。私は今のままの暮らしが気に入ってるのさ。まだまだ見て回りたい所もあるしね。このまま自由気ままな旅を続けていきたいと思ってるの」

「そうか。お前の気が変わったらいつでも俺のところを訪ねてこい。お前の席はちゃんと開けておいてやるからな」

「ははっ。気が向いたらそうさせてもらうよ」

にやりと笑いレインが言うと喜一もそう答えるだろうと思っていたといった顔で話す。彼女が盛大に笑うとそう言って了承した。

「次にアッシュ。お前は側近兵として見事俺のことや神子さん達を守り抜いた。その実力を見込んでお前を俺の側近兵から昇格させ守護兵隊長に任命する」

「はっ。有り難き幸せに御座います」

喜一の言葉にアシュベルが敬礼して答える。

「守護兵は常に俺の側につき従い年間行事なんかで俺の横に立つことが許される特別な役職だ。側近兵隊長の隼人と連携して俺のことを守ってもらえると助かる」

「その任謹んでお受けいたします」

話を聞いた彼が嬉しそうにそして誇らしげな顔で答えて敬礼した。

こうしてそれぞれの道を歩むこととなった結達は仲間達に別れを告げてこれからの人生を生きていく事となる。

しかしこれが最後の別れなんかではないと彼女達は知っていて、だからこそまた会える日までそれぞれの生活へと戻っていったのであった。

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