十一章 フレイはお坊ちゃま?1
残暑が厳しい季節。仕立て屋アイリスは今日もお客でにぎわっていた。
「いらっしゃいませ。仕立て屋アイリスへようこそ」
「やあ、小鳥さん。今日も可愛いさえずりだね」
お客が来店したことを知らせる鈴の音で顔をあげたアイリスは笑顔で出迎える。
するとフレイが立っていて優しい口調で微笑む。
「ふ、フレイさん。いらっしゃいませ」
(私どうしてもこの人苦手なのよね……)
彼女は笑顔で対応すると同時に内心で呟いた。
「今日はどのようなご用件で――」
「見つけたぞこのバカ息子が!」
「!?」
フレイに用件を尋ねようとした時扉が荒々しく開かれモノクルをつけた男性が怒鳴り込む。
それに驚いていると男性はズカズカと店内へと入って来るなりフレイの前へと立つ。
「勝手に家を出て行って二十年もの間連絡もなく。最近この町でお前に似た人物を見かけたと聞いて確かめに来てみたら……この二十年間どこで何をしていたのだ!」
「親父……この店で騒ぎは起こしたくない。どこか別の場所で話をしよう。……小鳥さん騒がせちゃってごめんね。それじゃあ」
「あ、フレイさん……イクトさんさっきの男性は一体?」
「スターディス侯爵だよ。先代が生きていたころはよくお店に来ていたんだ。俺も幼いころに一度見たことがあってね。そうか、フレイさんはあの方の息子さんだったんだね。どうりで彼の顔を見たことがあると思ったんだ。フレイさん若いころの侯爵にそっくりだったから」
「それじゃあフレイさんはお坊ちゃまだったんですね? でも、何だか親子関係に問題があるみたいな感じだったけれど、フレイさん大丈夫なのかな」
アイリスの言葉にイクトが答えると彼女は大丈夫なのだろうかと心配する。
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