十四章 さよならミュウさん?2
そして翌日まだ薄暗い時間帯に、ミュゥリアムはこの国を旅立っていった。
「ミュウさん今頃馬車の中なんでしょうか?」
「そうだね、もうこの国からはだいぶ離れたと思うよ」
開店準備をしながらアイリスは言う。その言葉にイクトも同意して頷いた。
「……あの声が聞こえなくなると、寂しくなるね」
「そうですね。今日からミュウさんの声が聞こえないって思うと悲しくなります」
「こんにちは! アイリスさん、イクトさん。お元気ですカ?」
二人して悲しみに暮れている時にお店の扉が開かれミュゥリアムが現れる。
「「!?」」
今朝旅立っていった人がなぜここにいるのかと思い目を見開いて驚く。
「み、ミュウさん? どうしてここに?」
「アイリスさん達とお別れするのガ悲しくて、会えなくなると思ったらホームシックなったです。だから、帰ってきちゃいましタ。私、この国に住みます。アイリスさんとイクトさんのお店にもまたお客さんいっぱい連れてきますネ。だから、これからもヨロシクです」
目を白黒させながら彼女は尋ねる。それにミュゥリアムが目に涙を光らせにこりと笑い言い切った。
「えぇ!?」
「ははっ……よかったね。ミュウさんとお別れしなくてよくなったよ」
盛大に驚くアイリスへとイクトがそう言って苦笑いした。
その後、彼女がこの国に戻ってきてここに住むことになったと知った一部の常連が「あの涙を返せ!」と怒ったそうだが、誰もが彼女とお別れすることにならなくてよかったと安堵したそうである。
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