十二章 秋祭り準備2
「うん、うん。なるほど。秋の精霊に会いたいのか。分かった。オレからも話を通しておいてやるよ」
「!? ……びっくりした。マクモさんいつの間にいらしていたんですか」
突然男性の声が聞こえてきて驚いてそちらへと振り返るとそこにはマクモの姿があった。彼女は目を瞬きながら尋ねる。
「ちょっと前からいたぞ。アイリス達が楽しそうに話してたんで、邪魔するのも悪いと思て黙ってたんだ」
「そ、そうだったんですか。気が付かなくてすみません」
満面の笑みを浮かべたまま彼が言うとアイリスは慌てて謝る。
「別に気にしてねぇよ。それより、秋の精霊に会いたいんだろう? オレの知り合いに心当たりあるから、話しといてやるよ。多分あいつならこの店の話を聞けばすぐに飛んでくると思うぜ」
「え、マクモさん精霊さんとお知り合いなんですか」
マクモの意外な発言に驚いて尋ねた。
「おう。だって、オレは火の――」
「失礼する! ここだと思った。……あまりフラフラとするのはやめてくれと言っているだろう。……変な言動はしていないだろうな?」
彼が何か言いかけた時扉が開かれジャスティンが入って来る。
「いいじゃんか。アイリスとイクトは信頼できる人なんだろ? ならさ、いい加減オレの正体教えたって」
「いや、ダメだ。たしかにアイリス達は信頼できるが、去年の放火事件については国家秘密だ。それを一般市民に教えることはできない」
マクモの言葉に彼が怖い顔で言う。
「あ、そっか。この子が家を失くしたって子か……あ~。たしかに今さらぶり返すのも嫌だよな」
「何のお話ですか?」
その言葉に彼も放火事件の被害者だということに気付き、真面目な顔になり押し黙る。
話しが見えないといった顔でアイリスは尋ねた。
「何でもない。こちらの話だ。……マクモが何か迷惑を働いたらいつでも言ってくれ」
「隊長も大変ですね。マクモさんについて迷惑だなんて思ったことはないですので大丈夫ですよ」
ジャスティンが言うとイクトがにこりと笑い問題ないと答える。
「とにかく、すぐに戻るように。……では、私はこれで失礼する」
「オレも知り合いに会いに行ってくる。またな」
彼が言うとマクモも知り合いに話をしてくるといって二人そろってお店を出て行った。
「はい。またのご来店お待ちいたしております……イクトさんマクモさんとジャスティンさん。何のお話をされていたのでしょうか?」
「ん~。それは俺も分からないけれど、マクモさんが王家と関係のある人である事だけは確かかな。国家秘密だって言っていたから、それはつまり、王家とその王家を護る人達しか知る事の出来ない機密事項ってことだろうから。だから、それを俺達民間人には話せない……ということだと思う」
アイリスの言葉にイクトが首をひねりながらも思った事を話す。
「なるほど。マクモさんって、実は偉い人なのかもしれませんね」
「そうだね」
笑顔で話す彼女の言葉に相槌を打つと二人はお店の仕事へと戻る。新たな出会いを予感させるそんな秋の日の一時であった。