10月のお話 ハロウィンの夜に
10月31日今年もこの季節がやって来た。さぁ、お墓の中からお化け達が出てくるハロウィンの日だぞ。セイセイもこの日を今か今かと待ち望んでいた。
「ヒヒヒヒィ」
真っ赤な月が不気味に浮かぶ夜。薄暗い闇の中から不気味な笑い声を響かせて彼は目を覚ます。
「ヒィヒィヒィッ……ヒャッホーイ。今年もこの季節が来た! 今年こそ人気者になってやるぞ」
とある王国の片隅にある不気味なお屋敷の中をくるくる回りながら自由をかみしめ喜んでいる様子。
「ヒヒヒィ……ヒィ……ヒヒヒィ……」
しばらくの間飛び回り喜んでいたと思われたセイセイだがその声はどんどん尻つぼみになり、最終的には黙り込み部屋の中を見回した。
「……今年も誰もいない……誰もいない……1人……独り」
急に襲ってきた寂しさに笑顔の顔が歪む。
「ヒヒ……ヒャヒャヒャ」
虚しい笑い声ががらんどうの空間に響き渡る。そうセイセイはいつも1人でこのお屋敷に現れる。このお屋敷は昔は多くの人でにぎわっていたのに、何千年も過ぎ去った後は人っ子1人近付かない寂れた空き家に変わってしまったのだ。
「ヒィ?」
その時月明かりに照らし出された部屋の机の上に真新しい手紙が置かれていることに彼は気付く。
「手紙?」
それを手に取り広げてみるとそこには可愛らしい文字で「ハロウィンの招待状」と書かれていた。
「ア、オ、イ……アオイ? アオイって誰?」
聞いた事のない人物の名前が書かれた知らない人からの招待状に疑問符を一杯浮かべ首をひねる。
暫くその場でうんうん唸り考え込んでいたが「招待状」なんて生まれてこの方初めて (かもしれない) ものを貰ったのだからしかもハロウィンの招待状ならなおの事皆の驚く顔を見てやりたい。人気者になれるかもしれない。そう思いいたった彼は招待状と共についていた地図を頼りに館を飛び出した。
「たしか、この辺り……だよね?」
そこは薄暗い森の中を抜けたさきに広がるだだっ広い草地帯。ハロウィン会場でもなければ仮装している人の姿もない。
「セイセイさん。お待ちしておりました……今宵は我がハロウィンにお越しくださり誠に有り難う御座います」
「お前がアオイ?」
ランタンの明かりが近付いてきたかと思うと真っ青なローブで身を包んだ少女が微笑み声をかける。
「はい。私が招待状を送りましたアオイです。さぁ、今宵はセイセイさんの為に特別な夜をご用意いたしました。どうぞ私についてきてくださいませ」
「?」
アオイと名乗った少女に促されるがまま何が起こるのだろうと不思議そうに首を傾げながら彼女の後についていく。
すると空に続く光の階段が現れ上空には見たこともない立派な扉が浮かんでいた。
「これは?」
「この扉の先はリトルワールドというこの星とは別の惑星に繋がっているのです。セイセイさん招待状はよくお読み頂けましたか?」
「……」
不思議そうな顔で尋ねる彼にアオイも首をひねりながら尋ねる。それに彼はちゃんと読んでいなかったため無言で目を泳がせた。
「ふふ。セイセイさん大丈夫ですよ。では、初めから説明させて頂きますね。実は……」
この招待状が切っ掛けでアオイと出会いそしてセイセイは今メルヘン国の片隅にある不気味なお屋敷に住んでいる。だがもう独りぼっちなんかではない。沢山の仲間達と楽しく愉快に時にいたずらをし、時に叱られ、時に時間を忘れて、時にいろんな人と出会い暮らしている。そう人気者になる為今ではこのリトルワールドで日々奮闘しているのである。
「真っ赤な月の夜には思い出すんだ。君と初めて出会ったあの日の夜の事を……ヒヒィ。アオイ……」
「はい?」
真っ赤な月を見上げながら今年もやって来たハロウィンの日。セイセイが何かを言いかけ口を閉ざす。その言葉にアオイは不思議そうに首を傾げた。
「ヒヒィ……な~んでもない」
「ふふ。はい、そうですね」
恥ずかしくてごまかした彼へとまるで何を言いたかったのか分かっていると言わんばかりに彼女は優しく笑い頷く。
基本長編か短編の小説を掲載予定です。連続小説の場合ほぼ毎日夜の更新となります。短編の場合は一日一話となります。 連続小説などは毎日投稿していきますが私事情でPC触れない日は更新停止する可能性ありますご了承ください。 基本は見る専門ですので気が向いたら投稿する感じですかね?