十四章 さよならミュウさん?1
紅葉が美しいある日のこと。浮かない顔でミュゥリアムがやって来た。
「こんにちは……」
「ミュウさんいらっしゃい……どうしたんですか?」
元気のない様子の彼女にアイリスは驚いて尋ねる。
「アイリスさん……私、そろそろ国ニ帰らないといけなイのです」
「えっ」
「それはまた、急な話だね」
ミュゥリアムの言葉に彼女は口を半開きにし目を丸くした。話を聞いていたイクトも驚いた顔で言う。
「もう暫くはここにいられるんですよね?」
「明日、この国ヲ出ます」
アイリスの言葉に彼女は首を振って答える。
「そんな……」
「なのデ、お別れを言いにきましタ」
彼女は言葉を失い俯く。ミュゥリアムも悲しげに瞳を潤ませてそう話した。
「……それなら、ミュウさんのためにお別れパーティーを開いたらどうかな。常連のお客さんも呼んで皆でミュウさんのお別れ会を開こう」
「イクトさん……そうですね。せっかくなら楽しい思い出を作って帰って行ってもらいたいですもんね」
「オ~。イクトさん、アイリスさん。アリガトゴザイマス」
イクトの言葉にアイリスも力強く頷き答える。その言葉に彼女も嬉しそうに微笑んだ。
こうして今日の夜お店が閉店した後常連客も呼び皆でミュゥリアムのお別れパーティーが開催されることとなった。
「ホントに、皆さんと知り合えて、この国デお友達沢山できて、私嬉しいデス。私のためにこんなに大勢の人が集まってくれて私、皆さんのことズット忘れません」
しばらくの間楽しくお喋りしたり歌ったり踊ったりと騒いでいたのだが、いよいよパーティーが終わる時間が近づいてきた時に、彼女が立ち上がり集まってくれた皆へ向けて感謝の気持ちを伝える。
その言葉に皆涙を流し、しばらくの間沈黙が続いた。
「……国に帰っても、元気で頑張れよ!」
「別に、悲しくなんてありませんわ。……一生会えなくなる訳ではないですもの」
静寂を打ち破るようにマルセンがにこりと笑い声を出すと、マーガレットが涙をごまかすかのように明後日の方向を見て話した。
「ミュウさんと知り合えたことよかったと思っている」
「また、この国に踊りを披露しに来てくださいね」
「離れていてもわたし達はずっと、お友達です」
ジャスティンが言うとジョルジュとシュテリーナも目に涙を溜めた顔で笑いながら話す。
「私、ミュウさんのことずっと忘れません」
「この国に来ることがあれば、またこのお店を訪ねてくれると嬉しい」
アイリスもミュゥリアムの手を取り涙でぐちゃぐちゃになった顔で言う。
イクトも悲しみを隠し微笑むとそう話した。
「皆さん、アリガトゴザイマス。私、この国大好きデス」
彼女も目頭に涙を光らせながらにこりと笑うと大きな声でそう答える。