九章 夏祭り本番1

 あっという間に日数は過ぎ去り今日はいよいよ夏祭り本番。ライゼン通りも今日は屋台を出したり催し物をしたりと大忙し。

「よう、仕立て屋アイリスのお二人さん。お祭り楽しんでるか?」

「あ、貴方は……」

飲み物や食べ物を売るお手伝いをしているアイリスとイクトへと誰かが声をかけてくる。

その声に顔をあげてそちらを見ると男の人が立っていた。

「ん? そう言えばまだ名乗ってなかったか? オレはマクモだ」

「マクモさん。その服を着て下さったんですね」

男性がにこりと笑い自己紹介すると彼女も嬉しそうに微笑む。

「当たり前だろう。アイリスがオレにぴったりな服を仕立ててくれたってのに、着ないなんてもったいないからな」

胸下までの徳利タイプの肩だしの服の上には燃えるほどに真っ赤なロングコートを羽織り、ガウチョパンツは黒い生地に燃え上がる炎の柄が描かれている。その服を着ている彼こそ仕立て屋アイリスで服を頼んだ男性……マクモであった。

「ラストには花火があがるらしいから、あんた達も仕事ばっかしてないでどこか適当に切り上げて花火見ろよ」

「はい、有難う御座います」

彼の言葉にアイリスは返事をする。

「お、そうだ。噴水広場で踊り子のねぇちゃんが踊りを披露するらしい。見に行ってやったらどうだ」

「あ、そういえばミュウさん噴水広場で踊るから良かったら見に来てって言ってましたね」

マクモの言葉に彼女は隣にいるイクトへと顔を向けた。

「そうだったね。だけど、ここを抜けるわけには……アイリス一人で行っておいで」

「え、でもイクトさんだけ働かせるのは……」

「オレがここ見ててやるから二人で行って来いよ」

彼の言葉にアイリスは困った顔で躊躇う。その様子にマクモがにこりと笑い言った。

「え、でもお客さんを働かせるわけには」

「気にすんなって。オレもこの国に住む一人だ。だからこの国の人達のために何かしてやりたいんだよ」

断ろうとする彼女へと彼が笑顔を崩さずそう話す。

「それでは、お願いします。アイリス、ここは彼に任せて少し休憩しよう」

「そうですね。マクモさんお願いします」

「おう。祭り楽しんで来いよ」

イクトがマクモの好意を受け取るとアイリスへと声をかける。彼女も頷くとここは彼に任せてミュウの踊りを見に広場へと行くことにする。

歩き去っていく二人へと向けてマクモが声をかけ見送った。

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