八章 ミュウからの依頼1
夏祭りに向けて盛り上がりを見せるある日。お店の扉が開かれる。
「こんにちは」
「こんにちは、お久しぶりです」
「いらっしゃいませ。あ、ジョン様にシュテナ様。お久しぶりです」
お店へと入ってきたのはこの国の王子と王女であるジョルジュとシュテリーナであった。
二人がこのお店に訪れるのは久しぶりの事で、アイリスは嬉しそうに笑う。
「最近色々と忙しく、なかなか城を抜け出せなくて……」
「わたしも爺やがなかなか外に出してくれなくて……でも、今日は大丈夫よ。爺やを縛り付けてきたから」
「へ? シュテナ様それは流石にマズいのでは?」
ジョルジュが言うとシュテリーナも困ったといった顔で説明した後にこりと笑い言い切る。
その言葉に彼女は冷や汗を流し尋ねた。
「ふふ、大丈夫よ。それよりも、今日来たのはまたアイリスさんにドレスを仕立ててもらいたくて」
「今度の夏祭りで着る礼服を頼みに来たんです」
「そういえば、夏祭りは国を挙げての一大イベントでしたね。分かりました。そのご依頼承ります」
二人の話にアイリスは納得するとにこりと笑い依頼を受ける。
「よろしくお願いします」
「どんなものが出来上がるのか今から楽しみです」
シュテリーナがにこりと笑う横でジョルジュも楽しみだと言って微笑む。
「失礼する。……ジョン様、シュテナ様。こちらにいらしているのは分かってます。シュテナ様召使いを縛り上げて城を抜け出すとは、一体何をなさっているのですか! ジョン様。国政のことで話があると言われているというのに、城を抜け出すとは何事ですか。王様も貴方の事を探しております。すぐに城に戻ってください」
「「ジャスティン」」
その時扉が勢い良く開けられると入ってきたジャスティンが怒鳴る様にそう言い放つ。
彼の登場にジョルジュとシュテリーナが冷や汗を流した。
「あ、ジャスティンさん。いらっしゃいませ」
「ああ、アイリスすまないが、二人はこれから城に戻らねばならない」
笑顔で出迎えるアイリスへとジャスティンが申し訳ないと言って謝る。
「いいえ、ジョン様もシュテナ様もお忙しい身ですから仕方ないですよ」
「それと、今度の夏祭りの時、護衛兵として王族を守る為の仕事をする事になっている。また騎士団の隊員達の服を百着頼めるか?」
首を振って答える彼女へと彼が続けて依頼を頼む。
「畏まりました。騎士団の隊服を百着ですね」
「では、よろしく頼む。……さあ、ジョン様。シュテナ様行きますよ」
アイリスが頷くのを確認したジャスティンがそう言って二人へと向きやる。
「分かってるわよ。もう、相変わらずジャスティンは煩いんだから」
「父上、怒ると怖いからな。……今日はおとなしく城に帰るよ。アイリスさんまたお邪魔しますね」
彼に促され二人はお店を後にした。