第十六章 それから……1
邪神が黄金の矢と共にこの世から消えさり、これにより本当の意味での平和な世界となった日ノ本。神子達が邪悪な存在を討ち滅ぼしたという噂は瞬く間に世間に知れ渡ることとなった。
邪神を打倒した後刹那はいつの間にか姿を消していて二度と神子達の前に現れることはなく、探そうという者もいたが「刹那は役目を終えて本来のいるべきところへと戻ったんだよ」とケイトやケイコが話すと、紅葉や蒼にも言いくるめられて皆「それもそうなのかもしれない」と納得して彼女との別れを受け入れる。
そうして神子達の旅は終わり、それぞれがそれぞれの村町へと戻り暫く平穏な暮らしを送っていた。皆が再会したのはそれから一週間後の事である。江渡の城に住む殿様から功績を湛えられ神子一行に招集がかかり城へと呼び出しを受けたのであった。
「隼人さん、アッシュさんお久しぶりです」
「ああ、神子様久しぶりだな。それから変わりないか」
「おう、皆。元気そうだな」
「たかだか一週間しかたってないのにどう変わるってんだよ」
「アッシュ兄も元気そうね」
謁見の間には誰もおらず人払いされている様子で、神子達がやって着た時には隼人とアシュベルの姿しかなかったので久々の再会に皆緩み切った顔で暫く雑談する。
「やあ、やあ。皆、元気そうで何より。よく来てくれたな」
「喜一さん……いえ、殿様」
「お前その服着てるとほんとに殿様に見えるな」
雑談しているとにこやかな笑顔で上品な着物を着た喜一が部屋へと入ってきた。その姿に神子は驚きながら呟くがすぐに彼が殿様であったことを思い出し言い直す。
伸介も喜一の格好をまじまじと観察して呟いた。
「見えるじゃなくて殿様なの。さて、皆には俺が殿様だってことは理解できていると思う。今からは遊び人喜一ではなく殿様である喜一(よしくに)としてお前達に話がある」
「は、はい」
彼の言葉に溜息交じりに言うと喜一こと喜一(よしくに)が改まった態度で話す。それに神子は緊張してうわずった声で答えた。
「まず今回邪神を滅ぼしこの世界を救ってくれたことに心から感謝している。神子殿、そして同行した者達よ有難う」
「と、とんでもございません。私はいえわたくしは自分の役目を果たしたにすぎませんので」
喜一の言葉に神子は慌てて答える。その様子に彼がおかしそうに小さく笑う。
「それで、こたびの功績をたたえて神子殿達にはそれぞれに褒美を遣わそう」
「有り難き幸せに存じます」
にこりと笑い喜一が言うと神子はお礼を言って頭を深々と下げた。
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