第七章 星読みの男と引かれ合う魂2
「ついたぜ」
「ついたって……ただの空き家じゃねえか」
喜一が言うとある家の前で立ち止まる。少し離れたところには城壁が見て取れるが、隠し通路などどこにも見当たらない。その様子に伸介が声をかける。
「まあ、見てれば分かる」
自信満々に喜一が言うと空き家の中へと入っていってしまう。半信半疑のまま神子達も後をついていく。
「ここをこうして……こうやるとだな」
「!? これはからくりですか」
灰も何も入っていない囲炉裏の縁に手をかけると、まるでパズルでもするかのように組み替えていく。するとかちりという音と共にその中が開いて階段が出現する。その様子に神子が目を白黒させて驚きながら尋ねるように言った。
「囲炉裏の中が空洞になって階段が出てきた。ねえねえ、紅葉。私こんなの物語の中だけでしか知らないよ。この世界って凄いね」
「はっはっ。まあ前にいた世界じゃ非常階段とかがあるからこんな隠し通路なんか必要ないからな」
信乃も少し興奮した様子で隣にいる紅葉へと声をかける。その様子に盛大に笑うとそう言って彼女を見る。
「さあ、これが隠し通路へと続く階段だ」
「でも中に入ったらどうやって上を閉めるんですか?」
「ま、中に入ればわかるぜ」
喜一の言葉に神子が疑問に思った事を尋ねる。それには答えずににやりと笑って皆を促し階段を下りていく。
「でだな。最後にここの紐をこうやって引っ張ると……」
彼が言うと階段の横にあった紐を横に引っ張る。すると入口の扉がスライドしてきてかちりという音と共に扉は塞がれた。
「すごい。さっき入って来た入り口が塞がっちゃった」
「信乃楽しそうだな」
「まあ、こんなの見た事ないからな」
驚きと興奮ではしゃぐ信乃の様子を微笑まし気に見ながら蒼が言う。それに紅葉が答えると優しい瞳で彼女を見詰めた。
「後はこの通路を歩いて城の中に入るだけだ」
喜一が言うと薄暗い通路の中を歩き始める。
「周りがよく見えないですね」
「目が慣れてくれば平気になる」
神子の声が響くとそれに喜一が反応して答えた。
「でも何だか転びそうで怖いですね」
「それなら俺に任せろ」
彼女の言葉に紅葉が言うと手のひらに乗るくらいの炎を出現させる。すると周りはうすぼんやりと照らし出され皆の顔が見えるくらいは明るくなった。
「それは妖術ですか?」
「あのな、神様が妖術を使うわけないだろ。これは神の術と書いて神術(しんじゅつ)だ。これで転んだりする心配はないだろ」
驚き尋ねる神子へと彼が苦笑するとそう言って説明する。
そうして紅葉が出現させた炎のおかげで転ぶこともぶつかることもなく順調に通路を進んでいくと前方に階段が見えてきた。
「この階段を上ればいよいよ城の中だ」
喜一が説明しながら階段へと上り取っ手を持つと押して開ける。
出てきた先は人気の少ない庭の井戸の中。見た目はただの井戸だがそこが隠し通路に繋がる入り口となっていたのだ。
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