十七章 信頼が生んだ結果3
彼女が店から出て行って暫く経たころ。
「あれ、さっきまで天気が良かったのに……」
「あの、アイリスさん……いますか?」
急に天気が崩れて雨が降り出しイクトが不思議そうに首をかしげると、女の子の声が聞こえてきた。
「おや、こんにちは。アイリスは今奥で休憩しているんだ」
「こんにちは。アイリスさんが、困ってるって聞いて……これ」
にこりと笑い来店してきたウラティミスに声をかける。彼女が言うとイクトへと何かを差し出した。
「これは……」
「精霊の雫……使ってください」
驚くイクトへとウラティミスがそう言って手に持っている精霊の雫を彼の方へとグイっと突き出す。
「有り難う。大切に使わせてもらうね」
「うん。アイリスさんの事応援してます。頑張って」
「アイリスに必ず伝えておくよ」
お礼を述べる彼へと彼女がそう言って笑う。イクトが頷き答えるとウラティミスは店を後にした。
「……皆アイリスのために頑張ってくれている。俺も、頑張らなくては」
一人になった店内でイクトがそっと独り言を呟く。そして貰った精霊の雫を大事そうに持ってアイリスの下へと向かった。
アイリスが休憩を終えてお店へと戻って来ると、お客が一人来店してくる。
「こんにちは。アイリスさん困ってはるって聞いて、助けに来ましたよ」
「カヨコさん」
カヨコの声に反応して彼女の方へと駆け寄った。
「木綿の布はわらわの故郷の品。それが必要だって聞いたんで持ってきましたぇ」
「有難う御座います!」
カヨコが言うと木綿の布を手渡す。それを受け取り頭を下げてお礼を述べるアイリスへと彼女は微笑む。
「この前のお礼みたいなもんや。絶対にアイリスさんなら大丈夫やで、自信もちぃね」
「はい」
カヨコの言葉に彼女は力いっぱい返事をしてみせた。
皆アイリスのために頑張っている。それは彼女がお客様と築き上げた信頼が生んだ結果であった。