創作ノート「日の名残り」
イラストレーターさん
白飯さんは、女の子の日常を柔らかく優しいタッチで描かれているイラストレーターさんです。
私は白飯さんのイラストが醸し出す雰囲気が好きで、この度、小日向來音のオフショットをぜひ描いてもらいたくてお声がけしました。
優しい光の表現、女の子の愁いを帯びた表情、色使いの柔らかさなど、本当に素敵な雰囲気です。
ゆっくりと流れる時間を感じさせる、そんな作品に仕上げていただきました。
作品に込めた想い
東京の中高一貫校に通うために親元を離れ、叔父一家宅にお世話になっている來音。
叔父宅には大きな書斎があり、就寝前にそこで本を読むのが來音の日課です。
本作はそんな彼女のひと時を描いたイラストです。
「日の名残り」と聞いて、カズオ・イシグロの作品を想起する方も多いかもしれませんが、本作では、一日との別れの時間、まだ思い切れない気持ちを表現したくてこのタイトルにしました。
「もう少しだけ今日の余韻を味わっていたい、本の続きを読んでいたい」
そんな気持ちが漂う作品にしたいと思いました。
作品のモチーフ
・フロアランプ
夕日を思わせるランプの柔らかい灯りは、タイトルの「日の名残り」を象徴する存在でもあります。
私が指定するまでもなくフロアランプを配置してくださった白飯さんのセンスが光ります。
・ベアチェア
ハンス・J・ウェグナーによるAPストーレン製のイージーチェア「ベアチェア」。
「熊が手を広げているよう」と形容される太いアーム構造、大木に体を預けたような背面の安定感から、安楽椅子の極みとも称される名作チェア。
來音の叔父の愛用品。
・チャールズ・ラム『エリア随筆』
哲学の本が好きな來音。
以前、西田幾多郎の随筆集を読んだとき、「ラムの随筆集は文字が皆笑うているようだ、文章そのものがユーモラスだ、ほほえまないで、その一行も読まれない気がする」と書かれた一節が強く印象に残って以来、彼女にとって憧れの存在であるチャールズ・ラムの『エリア随筆』。
この作品は、一日の終わりのこんなひと時にふさわしい作品かもしれません。
・サンタ・マリア・ノヴェッラ「ザクロ」
來音が就寝時に使う香水。
ほんのり甘いオリエンタルフローラルのブーケ。
上質なお香や石鹸のようなクラシカルな香りが気持ちを落ち着かせてくれるため愛用しています。