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浮世絵と私

浮世絵との出会い

初めてnoteで浮世絵について触れる事になるので、まず私が浮世絵と出会ったきっかけから振り返ると、小学4年生の時に永谷園のお茶漬け海苔の付録についていた写楽の歌舞伎役者絵に衝撃を受けたのがキッカケです。写楽が描いた「三代目 大谷鬼次の奴江戸兵衛」の絵の迫力に魅力され、気づけばすっかり引き込まれてました。以来浮世絵に魅せられて現在に至ります。因みに当時の小学生は「ビックリマン」や「野球カード」などが定番でしたが、私もそれらを集めつつも、だんだん永谷園の浮世絵の付録に興味が注がれていくのでした(笑)。確か小学4、5年生の図工の授業で、上記の大谷鬼次をモチーフにした彫刻を製作した記憶があります。

三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛

役者絵大好き

写楽に魅了されたのをきっかけに、その興味はライバルだった歌川豊国の役者絵や、同じく勝川春好や同門の春英などへ広がっていきましたが、役者絵を取扱う画集など写楽以外は殆どなく悲しい思いをしたのでした。ちなみに私のプロフィール写真のアイコンは、役者絵をモチーフにして自ら描いて完成させました。

三代目澤村宗十郎/歌川豊国
五代目市川團十郎/勝川春好
二代目中村野塩/勝川春英

役者絵の面白さ

美人画、風景画など様々ジャンルが浮世絵にはありますが、今でもやっぱり役者絵が好きですね。私自身元々絵を描くのが好きで中学時代は美術部に在籍してました。なかでも人物の似顔絵が一番得意で、今も趣味がてらにたまに描きますが、やはり似顔絵は写実的であれデフォルメであれ、モデルとなった人物に似てなきゃなりません。役者絵こそまさに似顔絵のルーツになった元祖と言えるのではないのでしょうか。

自画似顔/DJ KUO
ALICIA KEYS/DJ KUO
The Notorious B.I.G./DJ KUO

ただ浮世絵のなかで役者絵は、歌舞伎の知識も必要とするので、取り扱いにくく敬遠されがちですが、美人画のように定型化されて個性が伝わりにくいと言うことはなく、役者一人一人の個性が描きわけられているのも、役者絵の面白さです。例えば下記に画像を上げる五代目松本幸四郎(三代目市川高麗蔵)は、高い鼻が特徴で「鼻高幸四郎」と呼ばれていましたが、様々な浮世絵師によって描かれた幸四郎を見るとその特徴がよくわかります。

三代目市川高麗蔵/写楽
三代目市川高麗蔵/勝川春英
三代目市川高麗蔵/歌川豊国

絵本舞台扇

顔の個性を描きわけるようになったのは、実は浮世絵が始まった頃からではなく、葛飾北斎の師匠として知られる勝川春章(しゅんしょう)や、一筆斎文調(いっぴつさいぶんちょう)と言った絵師が始めたとされています。その二人の合作「絵本舞台扇」シリーズは、それまで鳥居派が描いていた定型化され個性がなかった役者絵を一新しました。

明治の写楽「豊原国周」

豊原国周

そんな浮世絵における役者絵で私が最も好きな浮世絵師は、江戸末期から明治時代にかけて活躍した豊原国周(とよはらくにちか)です。写楽のライバルだった初代歌川豊国の孫弟子で、直接の師匠は三代目歌川豊国(歌川国貞)です。今でこそ三代目豊国の名前は、浮世絵愛好家以外には殆ど認知されていないものの、江戸末期の浮世絵界で江戸っ子の人気を独占したのは、葛飾北斎や歌川国芳ではなく、何を隠そう三代目豊国だったのでした。

五代目松本幸四郎/三代目歌川豊国

大人気だった三代目豊国の役者絵を忠実に受け継ぎながらも、さらにスケール感をアップさせたのが国周の役者絵でした。役者絵の顔の大判サイズ(39cm×26cm)の上半身だけを描いた大首絵をさらに顔のみに焦点を当てた「大顔絵」を始め、役者の定紋をデザインした枠組みに役者を描くなど様々なアイデアを挑んだ国周の役者絵は、明治と言う新時代に取り残され低迷していた歌舞伎界の再興に一役買うことになり、その確かな技量は月岡芳年や小林清親らと共に明治期の浮世絵界を盛り上げ、彼等と共に「明治浮世絵界の三傑」や「最後の浮世絵師」と称され、国周自身は「明治の写楽」と呼ばれました。

三代目澤村田之助/豊原国周
定紋をデザインにした枠組みを用いて、紙面いっぱいに役者の顔を描く「大顔絵」は国周によって考案された

国周の評価

月岡芳年や小林清親と並んでいる存在とは言え、その二人と比べて豊原国周の知名度や人気は全くと言っていい程無いと言うのが現状です。その原因として「明治」と言う新時代に相応しい西洋的な表現方法よりも、あくまで伝統的な浮世絵の作風を重んじたが故に、新時代の浮世絵と呼ぶには説得力が欠けてしまっていたと言う点が、国周の低評価につながったと思われます。

国周役者絵の写実性

明治期ならではの試みですが、実際に残っている役者の写真と、国周が描いた役者絵を比べると、如何に国周の役者絵が、本人の特徴を捉えて描いているかが、よくわかります。ちなみにこの役者は「劇聖」と呼ばれた九代目市川團十郎演じる勧進帳の武蔵坊弁慶です。

国周の絵と写真の九代目市川團十郎

国周作品が所蔵されている美術館/博物館

ここでは、私が実際に国周作品を見るために訪れたスポット中心に取り上げたいと思います。

【関東】

太田記念美術館
町田国際版画美術館
成田市文化芸術会館
中野区立歴史民俗資料館
早稲田大学演劇博物館
国立劇場伝統芸能情報館
山田書店
原書房
ギャラリーそうめい堂

【関西】

京都芸術大学(京都造形芸術大学)芸術館
逸翁美術館
久保惣記念美術館
白鹿記念酒造博物館
中尾書店
杉本梁江堂

【その他】

高松市歴史資料館

以上ざっと思いつくスポットを羅列しました。
なかでも京都芸術大学(京都造形芸術大学)芸術館の大江コレクションは国周作品のみで約900点を所蔵しているのは特筆すべき事柄と言えます。私も昨年11月に京都芸術大学で開催された画家の山本太郎氏と豊原国周のコラボ展「推し世絵」で、国周作品の一部を見る事が出来ました。

推し世絵のチラシ
山本太郎氏(右)と私

もちろん上記以外にも国周作品と出会えるスポットはあります。国周作品は浮世絵作品として以外に幕末から明治にかけての歌舞伎関連の資料的役割や、また市場に比較的に安価で出回っているので意外と近所の古本屋で遭遇する事もあります。

総括

以上、私と浮世絵とを振り返りながらお話させて頂きましたが、もちろん役者絵以外にも美人画や風景画、花鳥画、戯画、春画……などにも興味があり、それらについても機会を見て取り上げたく思いますので、また気長にお待ち頂ければ幸いかと。

最後まで、お読み頂きまして誠にありがとうございました。

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