Back to the late 90’s 第2話 MURO × LOW DAMAGE
1997年5月2日、“King Of Diggin'”ことMUROさんが来阪し、今は無きGRAND Cafeのイベント『KILLIN’EM SOFTLY』に登場した。
「MUROが来る!これは見に行かなきゃ!」と、当時まだDJ活動を始める前の私でさえ、MUROさんの名前は知っていた。MUROさんと言えば、言うまでもなく、日本のトップDJだが、すでに当時でもシーンを代表するDJだった。
そんなMUROさんと共演するアーティストは、関西HIPHOPシーンを語る上では外せないLOW DAMAGEのお二人。
階段を下りて、GRAND Cafeの出入口の扉を開けると、そこは今までに見たことないような、オシャレな雰囲気。18歳の私は「うぁ、大人の遊び場やなあ」なんて思いながら、その場に馴染もうと、ちょっぴり背伸びをした。
私が会場に入った頃には、もうイベントが始まっていて、ちょうどTANKOさんが、DJしている最中だった。その後KENSAWさんが登場し、DOPEなHIPHOPを中心に選曲しフロアを沸かせ、そのボルテージが今にも最高潮に達そうかとしている時にMUROさんがDJブーツに立った。
初めて見るMUROさん。この時で20代後半ぐらいだったとは思うが、18歳の私からすれば、桁違いの貫禄とオーラを感じた。そして何より選曲の振り幅の広さに驚かされたのだ!HIPHOPは勿論、SOULやJAZZまで網羅した選曲に会場は熱気と興奮に包まれた。ホストMCのGORE-TEXさんのダミ声の煽りも入りながら、クールに曲を繋いでいくMUROさんに終始魅了されっぱなしだった。
今でも印象深いのが、イベントの終盤でMUROさんがプレイしたDEBARGE『I Like It』。当時私は、恥ずかしながらこの曲をまだ知らずで、この曲をサンプリングしたL.L. COOL J『Make It Hot』は、よく聴いていた。フロアに『I Like It』のイントロが流れると「あっ!これ『Make It Hot』と同じや!」と、すぐさま反応し、その曲が持つ包容力に、聴きなから幸福感を味わえた。
このイベントが終わって早速DEBARGEのレコードを買いに行き、そして今もなお、自分がプレイし続ける事になる。
つづく……