Back to the late 90’s 第22話 fireflyとKN-SUN
1999年に入ってから様々なイベントでDJするようになり、色々なアーティストと知り合う事になる。HIPHOP業界のアーティストは、基本的に勝ち気な性分でイケイケの人ばかり、そして素行面が悪かったりと、何かとクセ強めな人達の集まりだった。
そんなアウトローなHIPHOPPER達の中において、生真面目な性格で心からHIPHOPを愛し、それと真剣に向き合いながら活動している一人のアーティストと知り合う事となる。そうKN-SUNとの出会いだ。
私より3歳年上のKN-SUNは、私の記憶を辿ると、R&B歌手DOUBLEの“今は亡きお姉さん”SACHIKOさんと同じ大学の後輩で、卒業後に活動拠点を大阪へ移し本格的にライヴ活動を始め、そんな中で私と知り合った。
当時、KN-SUNが活動拠点としていたのが、地下鉄堺筋本町駅近くあったfireflyと言うクラブでオーナーはダグラスと言う白人男性だった。そんなfireflyの毎週土曜日に、KN-SUNのパーティーがあり、様々なDJやラッパー達が集まっていた。
アメリカ村を中心として堀江や東心斎橋で開催される事が多かったHIPHOPイベントおいて、堺筋本町のfireflyは、ある意味異色とも言える場所柄だった。
そのようなfireflyの毎週土曜に、毎回のように会場にいたのが、今や日本を代表するHIPHOPバンドとなる『韻シスト』のメンバー達だった。イベントの終盤になると、毎度のようにフリースタイルをする時間が設けられ、そこでは演者やオーディエンスが一体となってマイクをまわし、フリースタイルを競いあった。
かく言う私にもマイクが回り、できもしないラップをしっちゃかめっちゃかになりながらも披露したが、とても楽しかった思い出がある。もちろん『韻シスト』のメンバー達もフリースタイルに参加し、おのおのがラップを披露したが韻シストのMCサッコンのラップの上手さは当時から秀でていた。
アメリカ村界隈のHIPHOP業界の人間関係に疲れた時に、fireflyに行くと、アメリカ村界隈とは、またひと味違う独自のHIPHOPパーティーを味わう事できて、とてもリラックスできた。そこの中心人物こそがKN-SUNだった。
のちに2000年代に入ってからKN-SUNはHIPHOPバンド『Improve』を結成し、確固たる地位を築き上げた。そして現在のImproveは第16話で登場したSAL君が加入し、KN-SUNとツインMC体制となっている。昨年には、KN-SUN待望のソロEP『Daybreak』をリリース。まさにKN-SUNの集大成とも言える作品だ。HIPHOP好きはもちろん、全ミュージック・ラバーにもおすすめの力作だ。必ず聴いて欲しい!
有難い事に、今でもKN-SUNとは親しくさせてもらっており、事ある毎に連絡を下さり、Improveのライヴを観させて頂いている。この章の冒頭でも述べた通りアウトローを売りにするHIPHOPPER達が多いなか、昔から変わらず誠実な人柄で良識あるKN-SUN。心から尊敬できる大切な先輩だ。
つづく……