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映画「ソナチネ」と「戦場のメリークリスマス」

中学生か高校生くらいのときに「戦場のメリークリスマス」を観て、久しぶりにまた観てみた。
当時はほとんど意味がわからず、「ヨノイ大尉が外国人俘虜にホの字になって、ハラキリシーンなどがあって怖いな。あと音楽がすごく良い」くらいの感想だった。
ちなみに、この映画には北野武が出演しており、この映画が監督になりたいと思ったきっかけだったかもしれない、と当時を振り返って言っているらしい。

改めて観たところ、ソナチネと戦場のメリークリスマス、気付いただけでもいくつかの類似点があった。

落とし穴:セリアズ生き埋めのときの穴
ヒットマンが散らすハイビスカス:セリアズが食べるハイビスカス
ロシアンルーレット:戦争(第2次世界大戦)を暗喩

戦場のメリークリスマスは戦闘シーンがないが、大きなメッセージとしてはとても粗い言い方で言えば「反戦」の意味も込められているだろう。
過去記事でも書いたが、ソナチネのロシアンルーレットのシーンにもその意味が込められている気がする。
「反戦」と表現すると少し思考停止で画一的な感じもするので、もっと近い表現を考えるなら、戦争への虚無感、問題提起というところだろうか。

今回、この戦メリを観て特に感じたのは
身も心も天皇(あるいは日本国)に捧げたであろうヨノイ大尉が崩れ落ちていく心理的な葛藤について、である。
極限状態の中、同性愛(しかも敵国の俘虜に)の感情を抱いてしまう。
理性的(軍人としての)な判断が求められる場面においても私情を挟んでしまい、部下の混乱を招く。
特に、セリアズからキスされたときの場面。
軍人としては大勢の人間が見ている中での出来事なので、恥辱の場面でもある。さらに一瞬にして力が失われ倒れるという2段階の恥辱。
普段から律して背筋が真っ直ぐなヨノイ大尉が、牙城が崩れるようによろめき倒れるという、画的にも秀逸な場面だった。

あと、冒頭とエンドロールのキャスト名などが流れるテロップにも意味を感じた。
冒頭は、密林の緑にも映えるオレンジ色。
オレンジ色はいくつかの外国では囚人服の色でもあることから、「戦争にかりだされる人は皆、無実の罪で囚えられた犠牲者でもある」と言っているように感じる。
エンドロールは黒のバックに白い文字が下から上に流れるような幕のような作り。これは「死」だろう。そして「お葬式=弔い」でもある気がする。

記憶とは非常に曖昧なもので、当時見たときのラストシーンで記憶していたのは、音楽が流れるのと同時に「収容所の草地に雪が降り注ぐ。と同時に、魂のような白いものが無数に天に吸い寄せられるように昇っていく」というものだった。
そんな場面は一切なかったので、当時の私の妄想が記憶としてこびりついていたのだろう。
だから、この音楽を聞くときはいつも頭の中でその場面が再生されていた。
現地は常夏のように暑いはずで、雪が降るはずもないのに。
しかし、日本の軍人も、俘虜にされていた多くの軍人たちも皆故郷ではホワイトクリスマスを見た経験がある人だったかもしれない。(日本にはクリスマスを祝うという文化は当時はなかったと思うけど)
だから、彼らの目の中にはかつて見た雪が降り注いでいたかもしれない。

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