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Bookレビュー「佐藤可士和/世界が変わる「視点」の見つけ方」
やっぱりデザイナーの方の考えていることや視点は面白い。
本質を掴むのが長けている、という共通点があるように思う。
大学の授業が元になってできた本らしいので、ぜひ若い人にも読んでほしいと思った。クリエイターを目指す方だけに限らず、誰にでも参考になる本。
これからの時代を生き抜く(あんまりこの表現が好きじゃないけど)ための一つのヒントがある気がする。
佐藤可士和さん。
「有名人だから、名前が売れている人だから、ある程度行ったら本気でやらなくてもデザイナーの「名前」だけでやっていけるんじゃない?」
…みたいなことは一切無い。
ちゃんと、向き合っている人。
そういう人は男女問わずカッコいいと思います、はい。
では、本書で良かったところ、気づきを得たところ、派生して私自身が感じたところを記していきたい。
・デザインは広義でとらえてよい。「デザインは思考法」
具体的な「もの」のデザインにとどまらず、社会のデザインなど広くとらえる。「デザイナー」という肩書の人だけがやるのがデザインじゃない。だれもが「デザイン」できる。
・問題は「自分事化」しよう
問題と自分との接地点を探るということ。何でも自分と関係ある問題だ、と考える。
・「平和」のように、テーマが抽象的な場合は自分の日常に近づけて考える
右脳と左脳をうまく使い切り替えながら、大きな問題を小さく分解し自分の身近なところに繋げていく。よりシンプルに、柔軟に、身近に。
・「もがく」ことの重要性
「自分の作品にどんな評価をされたとしても、冷静に受け止め、改善点を分析できるようになりました。学生たちには、もがく時間を恐れないでほしい。その後に待っているのは、スキルの向上です。」
・上手に自分の意見を通すには?
「相手を論破するのではなく、相手にリスペクトを示しながら、相手から「共感」を引き出していく」
さすがです。
【オオニシタクヤさんとの対談より】
オオニシ「僕はノイズってチャーミングだと思っているんです。完全にコントロールされたAIの回答よりも、我々が日々失敗を繰り返していること、不完全だけれども、何か温度があることの中に、ソリューションの種がある」
佐藤「コンセプトとは「視点のこと」」「僕はその対象が最もよく見えるよう、360度から、こうでもない、ああでもないと、必死にその光の当て方を探しています。」
・デザインとは「ビジョン」を設計すること
論理を積み重ねていく垂直思考と、イメージを広げていく水平思考、どちらも大事。
1課題 :問題を解決するための取り組みやテーマ
2コンセプト :考え方の方向性
3ソリューション :具体的に課題を解決するアイデアと実行プラン
この順番で行っていく。
・多様な視点を持つことの重要性
「本当にこの方向でいいのか」「もっと違う考え方もあるだろう」
・「勘」と「感」
勘:経験値からくる一つのスキル。経験値から未来を予測するスキル
感:直感で感じ取る能力
この両方を行き来する
「AIが社会を動かす時代が来たら、(中略)ロジカルに解析できない人間の身体的感覚というものこそ、最も重要になると思います。」
・・・・・
感想。
「自分事」の視点は超重要だと思った。社会問題でも何でも「自分と関係ある」という意識が世界をよりよい方向に変えていくのだと思う。
そして、AI時代。本書の中でも言及されていたが、人間味。人間が人間たる理由、人間たらしめる根幹の部分。これがやっぱり人間なんだということ、人間の良さなのだと思う。すなわち、不完全であること、エラーがあること、おっちょこちょいなこと、笑えること、そしてお互いにそれを許容できること。
以前、大阪のおばちゃんたちはカバンに飴を忍ばせておいて、(=「アメちゃん」というらしい)いろんな人にあげるというのをテレビを通して知った。すばらしい。
私はこの精神を受け継ぎ(?)、「アメちゃん一個分」を大事にしていきたい。実際に知らない人に飴をあげたことはないのだけれど(笑)
大きなことはできないけれど、何か小さなこと、アメちゃん一個分でいい、カバンに忍ばせておく余裕を持っておきたい。手から手に、「良かったらアメちゃんどうぞ」みたいな感覚で。
誰かの笑顔をちょっとでも引き出せたら本望だ。