ピンクとマゼンタ
近頃はめっきり秋めいてきて、夕暮れには秋の虫の声がリーンリーンと聴こえ、休耕地ではピンクやマゼンタ、黄色やオレンジの可憐な花を風になびかせるコスモスの群勢が人々の目を楽しませてくれている。
そう、コスモスといえばピンクとマゼンタ色だ。
私はピンクという色を好まない。嫌いなのではなく自分にしっくりこない色であり、チョイスしない色なのだ。
とはいっても、幼少期は親の好みで服を着せられているので自分がピンクを選ばないとはっきり自覚したのは小学校の入学式で着る洋服を買ってもらう時だった。
その日は入学のお祝いにと、祖母が洋服を買ってくれるというので、祖母と母と姉と私とで祖母の家の近くであろうスーパーに入学式用の洋服を買いにいった。
入学シーズンということもあり洋服売り場にはワンピースやセットアップなどいわゆる「入学式用のお洋服」が沢山並んでいた。
その沢山のお洋服の中でその店で一番のおすすめだったのであろう
壁にディスプレイされた「お洋服」に心を持って行かれた。
それはベストとスカートからなる水玉模様のセットアップで、ベストには胸から脇腹にむかってリボンが斜めにあしらってあり、それはそれは可愛いお洋服なのだ。
そしてピンクと水色の2色展開であった。
そう、水色に一目惚れしたのだ。
一も二もなく「これが良い」と水色のセトアップを指さすと、母と祖母は
「ピンクの方が可愛いじゃない」とピンクを勧めてきた。
が、私の意思はくつがえることは無く、無事水色のセットアップを着て入学式を迎えることになったのである。
そんな私でも大人になると赤色も黄色もいろんな色の洋服を着るようになる。
しかし、やはりあのサンリオの世界観にある夢の中の世界のようなふんわりした可愛いピンクは手に取れないのだ。いわゆる「夢かわ」の世界。
どうもしっくりこないのだ。頑張ってサーモンピンクのような少し黄色かかったピンク止まり。ピンクは私の色ではないと自覚している。
そんなある日、友人に「こないだ着ていたピンクのシャツ可愛いね」と言われて驚いたのだ。だってピンクのシャツなんて持っていないのだから。
よく聞いてみると、私にとってはマゼンタ色のシャツのことだった。
マゼンタといえば赤紫色であり、いわゆる紫色なのだ。
紫色と思って着ていたものが他人からするとピンク色だと認識されていたことにとても驚いたし、なんだかモヤモヤした。
だってピンクは私の色じゃないし、これはマゼンタ色なのだから。
ピンクであろうとマゼンタであろうとその色の洋服が気に入って着ているのだからどちらでも良いじゃないか。と言われればそれまでなのだけれど。
けれどあえて言いたい。
マゼンタは赤紫であってピンクじゃないと。