不動産投資検討に重要な指標「IRR」と「MIRR」の違い
不動産投資をする上でも、有価証券などその他の投資をする上でも、その投資効果(効率)を見積もって、投資するか否かを判断することは重要です。
そんな投資効果を比べる際に用いられる「利回り」。
この記事では特にIRR(内部収益率)とMIRR(修正内部収益率)について紹介します。
様々な「利回り」類
不動産投資に関する広告でも必ず掲載されている「利回り」は、一般的には「表面利回り(Gross Yield)」であり、ごく簡易的な計算で求められるため、不動産投資家同士の会話でも頻繁に使われます。
しかし、「表面利回り」は、その名の通り「表面的な部分だけを取り上げた利回り」であり、実質的な懐(ふところ)に入る金額や、入り口から出口までのトータルな投資効果は表現しきれていません。
他にも「利回り」に関する言葉はいくつか種類があり(利回り類)、これを理解でき使い分けると、投資判断に大変役に立ちます。
あなたは、利回り類をそれぞれ意味の違いを認識し、活用できていますか?
表面利回り (Gross Yield)
ネット利回り(Net Yield)
CCR (Cash on Cash Return:自己資本利益率)
IRR (Internal Rate of Return:内部収益率)
MIRR (Modified Internal Rate of Return:修正内部収益率)
IRRは「利回り」か?
この「利回り」類の中でも、近寄りがたい異彩を放ち、そのカッティングエッジな響きから投資初心者が敬遠する利回りが「IRR」です。そのまま「アイ・アール・アール」と読みます。
IRRとは、投資期間全体におけるリターンを示した数値です。将来得られるキャッシュフローは現在価値に割り引かれるため、より早期に回収できるリターンの評価を高くする特徴があります。
お金は早期に回収できればまた別の投資に再投資できるため、リターンの速度が速いほどIRRは高くなります。つまり、IRRは収益を再投資することを前提とした指標であると言えます。
なお、「IRRは利回ではない」と言う人がいますが、それは誤っていて、大別するとやはり、利回り類の一つです。
そもそも「利回り」とは「元金に対する収益の割合」と定義される言葉なので、「IRR」も「表面利回り」もこれに該当します。計算方法を異にするだけでいずれも「利回り」類の言葉であると言えます。
IRRは複利による投資効果を表している
つまり「利回り」は漠とした言葉であり、その中に「表面利回り」や「IRR」などの詳細群があると言えます。生物分類ぽく言えば、利回り科IRR属といったところでしょうか(それでいうと、MIRRはIRRの亜種とご理解いただくと良いです)。
IRRは収益を再投資することを前提としていると言いました。これは投資信託でよくある、「信託報酬」をまた同一信託商品に再投資していることと同一の収益計算です。
つまり、IRRは複利効果のある投資商品の投資期間全体における利回りと考えると良いでしょう。
しかし、不動産投資では投資信託と違い、得られるキャッシュフローを物件に再投資しているわけではありません。
人によっては得られたキャッシュフローを次の物件の為の貯蓄にする方もいます。または別の有価証券を買ったり、生活費に使う人もいるでしょう。
この場合、不動産投資におけるIRRは実態を表している利回りであるとは言えません。
不動産投資シミュレーションに便利なMIRR(修正内部収益率)
その誤差を修正するのがMIRR(Modified Internal Rate of Return:修正内部収益率)です。
IRRをModify(修正)したという言葉の意味そのままです。
MIRRは不動産投資家の会話で出てくることは滅多になく、あくまで机上でシミュレーションする際に用いるEXCEL関数と考えてOKです。
MIRRでは、再投資先の利回りを設定できる関数です。
例えば、
「不動産収益の再投資先は、分配金利回りが少なくとも3%以上のJ-REITに投資しよう!」
と考えるのであればこうなります。
初年度の頭金8000、7年目に売却し、その年に20,000のリターンを得た場合です。
EXCEL上では「危険利息」と表現される部分に、再投資先の利回り(このケースであればJ-REITの分配金利回り3%)を入れます。
※安全利息とされるセルには、借入金利を入れるように設計された関数ですが、上記の例では自己資金(頭金)の投資による内部収益率を求めていますので、安全利息は0としています。
IRRやMIRRは他の投資商品と比較する際に便利
このようにIRRは、再投資を含めた投資期間全体を表現するのに優れており、MIRRはさらに再投資先の利回りまで設定することができるので、より自身の投資計画に合わせた数字が導かれます。
どちらもEXCELの関数で簡単に導かれるので、投資先を検討する際のシミュレーションにぜひ使うべき数値です。