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経済安全保障って?【元外交官のグローバルキャリア】
外務省の経済局にいたときに初めて接した「経済安全保障」って、なんて捉えどころのない概念だろうと思いました。
いわゆる「安全保障」のように、ミサイルが飛んでくるでもない、軍隊が攻め寄せてくるでもない、軍事脅威な武力行使の国防政策ではありません。
経済安全保障とは、言い換えると、民主主義、法の支配、基本的人権、自由貿易という私たちの生活の基盤となっている価値や仕組を脅かす脅威にどう対処するかの国防政策だと理解します。
国という枠組みでルールや規律が保たれている私たちの生活に侵食してくる、強権国家やテロ組織から私たちを守るのが経済安全保障です。
フェイクニュースや選挙妨害
どんな脅威かというと、例えば民主主義の根幹である選挙で、フェイクニュースでデマを流して世論工作や情報操作をして選挙妨害をする国家が存在するのです。
こちらは米国務省のプレスステートメントです。ロシア政府の手先となって2024年の米国総選挙への介入があると述べています。
State Department Actions to Counter Russia’s Election Interference and Foreign Malign Influence Operations
Press Statement
Antony J. Blinken, Secretary of State
September 4, 2024
フェイク(偽物)といえば、SNSで有名人の顔や名前、果てはアカウントを使った投資詐欺やロマンス詐欺もありますね。
サイバーセキュリティ
グローバル社会においては、非国家主体も強権国家も経済基盤やデジタルネットワークを使って攻撃をしかけてきます。それに対抗するのがサイバーセキュリティーです。
選挙介入だけでなく、デジタルネットワークに泥棒のように侵入(ハッキング)して、フィッシングで個人情報やパスワードを抜き取られていることがあります。経済活動をハッキングで阻害し、運輸、医療活動を止める脅威もあります。デジタル化が進むライフラインの電力、上下水道、ガスや燃料だって止められかねなません。
企業では、大事なデータに触れなくなるランサム(身代金)ウェアが仕掛けられて、金銭的な見返りを求められることもあります。これらに対処するのがサイバーセキュリティです。
サプライチェーンの強靱化
物流からソーシャルメディアまで、グローバル市場の供給網(サプライチェーン)は密接に繋がり絡まりあっています。その供給網の流れが乱されると、医薬品や半導体を構成する部品など、コロナ禍のマスクから新車まで、供給されるべきものが私たちの手に届きません。だからこそ、いざという時にも物資が安定して手に入るようにサプライチェーンを強靭なものにしなくてはなりません
地政学リスク
国家主体の工作や攻撃を予知するには、各主体の思惑を理解する必要があります。それには、世界の地域で起こっている紛争や対立の歴史的背景など地政学を理解したいところです。
あらゆる情報が飛び交う今、正しい情報を精査して読み解き、つなぎ合わせて考える必要があるでしょう。だから以前にも増して政府と民間と学術界とで情報が共有されて、脅威に対する共通認識を持つことが大事だと思います。官民学の持つ知見を横断的に、パズルのように組み合わせて、防御してくのが経済安全保障政策立案でしょう。
日本に経済安全保障の専門家が育つべく、ソーシャルキャピタル醸成の機会を増やして、横の連携や整合性を向上させる化学反応を起こしていきたいです。
経済局にはG7や20カ国・地域(G20)、WTO、OECDなど枠組み別に課や室がある。いまは各部署が会議ごとにそれぞれ担当するため全体を見渡せる経済安保政策の専門家が育ちにくいとの声がある。
横断的に担当する部署を新たに設けることで専門人材の育成や横の連携、整合性の向上につなげる。