コロナであぶり出された女性の困難
(『Jikkaからのお便り』2020年秋号より)
新型コロナウィルス感染症が、天から降ってきたようにやってきて、私たちはいきなり日常を変えることを迫られました。命がかかっていることとはいえ、よくわからない病気を恐れ、どうすれば終息するかもわからない状態。先の見えない中での毎日の生活は、とにかくおとなしく、世の流れに従って暮らすしかないと思わせ、自主的・主体的な行動を自粛することがよきこと、といわんばかりの空気が続いています。
緊急事態宣言が出され、学校は休み、会社は在宅勤務となったことで、一気に家庭内の人口密度は高くなりました。狭い家の中でストレスをため、いら立ち、お互いを思いやる余裕がなくなり、家庭内は強者が常時支配する空間になってしまいました。これまで、夫が不在の日中に、電話相談や面談ができていた人も、それができなくなりました。しかし、こんな状況だからこそ、それまで何とかだましだまし我慢してきた人が、加害者の攻撃が激しくなってもう耐えられないと飛び出してくるということも出てきました。だから私たちは、このコロナ禍のピンチを、暴力から被害者が逃げ出すチャンスに変えたい、といつもどおりに活動を続けています。
緊急事態宣言解除後に相談が増えた
緊急事態宣言が出されたとき、家庭が密室化することで、DVや虐待の相談が増えるだろうと思われたのですが、実際は、予想より多くはなく、倍増ほどでした。むしろ緊急事態宣言が解除になったあとに、おそらくは加害者の目を盗む隙が生まれての相談が次々と寄せられ、宣言下の4~5倍を超える事態となっています。
ひとり10万円の定額給付金も、受け取って逃げられた人もいれば、世帯主に支給されるため受け取ることができなかったDV被害者もいます。DVや虐待から避難中の人は、危険を避けるため住民票を移せないケースが少なくなく、そうした人たちも当然のことながら受け取れていません。(実態を確認することで、被害当事者にちゃんと渡るように、という働きかけが女性団体からなされ、一部、受け取れた人はいるでしょう。)Jikkaも総務省の担当者に電話で40分、DV避難の実態をレクチャーしました。
こうして、コロナがあぶりだした女性の困難を、Jikka の活動を通してひしひしと感じているところです。実は、コロナ前からすでに破綻していて、ほころびをつぎはぎしながら何とか持ち堪えていた家族や仕事の人間関係が、持ち堪えられなくなっただけなのかもしれません。弱い者はさらにふるい落とされていく社会です。ひとたび何かが起きれば、もろくも崩れる脆弱な社会に私たちは生きています。
自分にとって本当に必要なことは何か、本当に必要な人は誰か、この際ちゃんと自分で考えて、誰とどう生きていくかを本気で考えてみる必要があるのではないでしょうか。(Jikka 責任者 遠藤良子)
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