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【インタビュー】なぜ地域にひらいた女性支援が必要なのか

2024年12月19日(木)に、滋賀県社会福祉協議会のみなさまが、季刊誌「ひたすらなるつながり」の取材でお越しになり、Jikka責任者・遠藤良子がインタビューに応じました。10時から約2時間、インタビューに同席した学生インターンYがその様子をレポートします。

滋賀県社会福祉法人 季刊誌「ひたすらなるつながり」


なぜ地域にひらいた女性支援が必要なのか

滋賀県社会福祉協議会のみなさまは、Jikkaの「第10回糸賀一雄記念未来賞」受賞をきっかけに、Jikkaの活動に興味を持たれたとのこと。
インタビューの冒頭では、過去にさかのぼりながらどのようにしてJikkaが設立するに至ったのかを遠藤が話しました。

遠藤の話①:これまでの女性福祉

戦後、生活保護法を皮切りに制定された福祉六法において、女性福祉という視点は欠如していた、という点を遠藤は厳しく批判します。どれほどの困難を抱えていようとも、女性が「支援される対象」としてみなされることはほとんどありませんでした。それどころか、家庭においてはむしろケアラー=「支援する側」としての期待されていました。

その後、女性に対して福祉的視点を持った初めての事業「婦人保護事業」が1955年に始まりました。
しかし、この事業の根拠法である売春防止法についても、200X年に施行されたDV防止法についても、多くの批判すべき点が存在します。
2006年から女性相談員を務めていた遠藤はその活動の中で、性売買において「買っている」男性が咎められることなく、「買われた」女性の保護や更生のみが志向されること、「暴力をふるった」男性は放置され、「暴力被害に遭った」女性を守って隠すといった対応が求められることに大きな違和感を抱いていたといいます。

遠藤の話②:気づかされた「女性福祉」の脆弱性

相談員としてどれほど被害女性と真摯に向き合っていても、このような法制度と支援体制では、そこから取りこぼされる女性たちが必ず出てきてしまいます。遠藤は、相談をとおし女性を送り出しても、元居た場所に戻ってきてしまう彼女たちを何度も目にしてきたといいます。
そこで、被害女性を「隠して逃がす」支援からの脱却をめざし、「DVをひらく」ことをモットーとして、「くにたち夢ファームJikka」を立ち上げました。

Jikkaの扉は、すべてガラス張り。これまでのような「隠して逃がす」女性支援では、もちろんこうした環境は否定されてきました。
しかし、閉鎖的な環境に被害女性を置くことが、果たして被害当事者たちへのエンパワメントにつながるでしょうか?

ガラス窓によりオープンな雰囲気のJikka

遠藤は、女性が「隠される」ことで被害の不可視化が発生してしまうと訴えます。自分のせいで起こってしまった暴力だ…と、「個人の問題」としてとらえてしまったり、そもそもそのような事件が地域で発生していないかのように隠蔽されてしまいます。
むしろ、オープンな支援体制のもと「味方」を作ることで、自らが持つ加害性や暴力性を他者に知られることを拒む加害者たちは被害女性に近づくことが困難になるでしょう。

こうして、Jikkaの「DVをひらく」実践が始まったのです。

これからの女性福祉の歩み

お話の冒頭で福祉における女性の位置づけを歴史的に振り返るなかで、女性が社会で生き抜くことのハードルの高さに気づくこととなり、驚きに加え悲しさ、怒りを感じました。

しかし、こうした背景に嘆き悲しむだけではなく、「女性福祉」自体の脆弱性を理解すること、社会全体をとらえる理論だけではなく、地域に根付き日々を生き抜いている彼女たちの現状を矮小化したり隠ぺいするのではなく、ひとりの「味方」として共に問題に目を向けることの必要性もまた、理解することができました。
「隠して守る」女性福祉のあり方をふりかえり、「DVをひらく」ことで新しい女性支援の形を模索していくことが、これからの社会をよりよいものにしていく一歩になるのだと感じました。

書いた人:インターンY


ここで行われたインタビューは、滋賀県社会福祉協議会の広報物である「季刊ひたすらなるつながりvol.15」(2025年3月頃)に掲載される予定です。

社会福祉法人 滋賀県社会福祉協議会 『季刊 ひたすらなるつながり』:
https://x.gd/CDGbl


くにたち夢ファームJikkaはDVや虐待などの被害者、生活困窮者など女性支援を行うNPOです。

ウェブサイト:https://www.jikka-yume.com/
Twitter:https://x.com/kunitachi_jikka
Facebook:https://www.facebook.com/jikka.kunitachi

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