DVはなぜ起きるのか?~個人の問題に矮小化することなく
DVはなぜ起きるのか?
理由があるはず、と思われがちです。そして理由は加害者と被害者の間にあると思われがちです。
たしかに暴力が発生するそのとき、きっかけはあるかもしれません。
しかしDVの本質は、一方がもう一方を支配しコントロールしようとすることにあります。
この関係は、その強弱や頻度に違いはあれ、夫婦間や男女間に限らず社会の至るところで見られる人間関係だといえます。他者同士が対等であることがおろそかにされ、人権が尊重されない場では、頻繁に起きているのではないでしょうか?
これがたとえば、職場などであれば、被害者は加害者を告発することが可能であり、告発すれば社会問題になりえます。ですが、DV(家庭内暴力)は、家庭内、家族内だから暴力とは見なさない、夫婦喧嘩は暴力ではない、という考え方が長い間支持されてきました。
家庭・家族の問題は社会とは無縁のもの、家族の自己責任で解決すべきもの、他人がとやかく言うことではない、という考え方が一般的で、家族間に人権という概念はないとされてきたからです。
夫と妻は主従関係にあった
日本社会では、長い間、「世帯主」「主人」と言われる男性が権限をもち、家庭において、妻や子ども、高齢者、しょうがいしゃは、「主人」である男性の支配下におかれ、「言うことをきかなければならない」とされてきました。
結婚は、妻になる女性が夫の家(戸籍)に嫁ぎ、「嫁」として家族の「労働力」となり、「跡取りを産む者」「家族の世話をする存在」として位置付けられていました。夫と妻は対等な関係ではなく、主従関係にあり、そのため、夫が妻に暴力を振るったとしても問題化するようなことではない、と思われてきたのです。「女性の人権」など、ないに等しい時代が長く続いたために、女性や子どもが殴られ蹴られても仕方ない、「主人」がやることに外部は介入できないものだ、と思われてきました。
男女共同参画社会基本法、そしてDV防止法
1999年、男女共同参画社会基本法が施行され、2001年にDV防止法(配偶者暴力防止及び被害者の保護に関する法律)ができてようやく、家庭内で起きる暴力も「暴力」であり「犯罪」であるとされ、ようやく警察や市役所が被害者の保護をするようになりました。
とはいえ、長い歴史の中で作られてきた社会通念や刷りこまれてきた慣習は、法律ができたからと言って簡単に変わるものではありません。
DV防止法は、長い歴史を覆すものであり、女性の権利保障の一つとして大きな意味がありますが、ほかにも戸籍制度をはじめ、社会のさまざまなしくみが女性の人権を尊重しないものである限り、女性の本来の人権は守られません。
「DVを許さない」ということは、「暴力を許さない社会」を作っていくことです。
DV から逃げることはその第一歩になります。女性としての自分の人権を守るために逃げるのです。
DVが起こる理由は、社会のあり方の中にこそあります。
少なくとも私たち支援者はその自覚をもちながら、DVを個人の問題に矮小化することなく被害者支援に臨んでいます。(Jikka代表・遠藤良子)