覗かれた
看護学生だった時の話。
そこの学生寮はアパート形式で、一年生は1階の12畳の和室に4畳のキッチンがついている一室に、3~4人で住むことになっていた。私の部屋は3人部屋で、幸いなことにとても気が合い、助け合って生活していた。
洗濯機は外に3台あって2階の個室に住む先輩たちと共同で使っていた。
その日、午前中は病院で仕事、午後は学校。夜は飲み屋でバイトをして終電で寮に戻った。他の2人は眠っていた。
私は急いでお風呂に入り歯を磨き、電気を消そうとして、洗濯物を取り込んでいないことに気づいた。そして取り込もうとカーテンを開けた瞬間、
「キャー」
窓の外に男の人が立っているのを見た私は、大声をあげた……つもりだった。でも出たのは私らしくない、上擦ったか細い声だった。私と男の間は窓ガラスたった一枚で隔たれただけの至近距離。
ほんと、怖い時は声が出ないということを実感した。
私の声で起きた2人に事情を説明。
3人で窓の外を確認する。
男はもういなかった。
私は洗濯物を入れた。
「ごめんね。気がつかなかった」
1人が言った。もう1人は洗濯物を干したまま、取り込むのを忘れていた。
ドッと疲れた私はバタンキューで寝た。
私は男の顔を見ていない。
私がカーテンを開けた時、男は屈んでいた。見たのは頭頂部。
顔、見なくてよかった。もし男の顔を見ていたら、多分眠れない。
あと、とても怖かったのは、窓の鍵が開いていたこと。
部屋に侵入されなくて本当によかった。
あの時、洗濯物を干していたこと、思い出してよかった。
今、思い出しながらこれを書いていて思うこと。
あの日、私は2人が先に寝ているのをよいことに、裸でウロウロしてなかったか? あの男にカーテンの隙間から覗かれていたのではないか……?
まぁいっか。昔の話だもん。でも今は怖いよね。携帯で撮られてネットに晒されてしまう危険があるから。
若い女性は気をつけてほしい。1階は危険だし、いざという時、声でない。
あの時、寝ていた2人の耳に届いた私の叫び声は、同じ部屋ではない、もっと遠い処からの声に感じたと言っていた。
上手く使えるかどうか疑問だけど、防犯ブザーは持ってたほうがいいかもね。