対話とは学びであり、大人の学びは対話にあり
新年度が始まり、なんとなく世の中もざわざわしている感じがする今日この頃。
4月に入ると、毎週のようにセミナーや養成講習が入ってきて、頭の中は常に少し先のことを考える日々。
先日読んだ本の中で、南米のある山の登山をサポートをしてくれるシェルパさんが、登山チームを連れて進んでいてある距離まで進んだところで、数日前進を止めた、というエピソードが載っていた。
登山チームは少しでも早く前進をしたいけど、一向にシェルパが動き始める様子がない。そこで登山チームの一人がシェルパに「なんで止まっているのか?」と、聞いたところ、「私たちは短時間でここまで歩いてきた。肉体はここまで来たけれども、まだ心が追い付いていないから、心が追い付くまでは前に進むことはできない。」と、答えが返ってきたというお話だった。(原文を意訳)
その本を読んだとき、私の心は常に数日先、数週間先にあって、ここにある肉体との乖離を感じて、疲れているはずないのに、なぜか疲労感が高い感覚があったから、この話を読んで、「あ~、私の肉体と心が乖離している時間が長くて、肉体と心が一緒に時間を過ごしていなかったのかも、、、。」と、思ったのを思い出した。
なぜそのエピソードが思いついたかというと、
今回のタイトル、「対話」と「学び」
この二つに共通しているのは、今にいるということなのではないかな、、、と。
対話をするときに、人は今の自分の中にあるものを探して言葉を交わす。
学びをするとき、人は今目の前にあるものに意識を置いてそれを理解しようと取り組む。
学びや対話は、肉体と心をここに一緒にいるとてもいい時間なのではないかな、、、と。
先日、インスタライブで門間昭さんとお話をしていた時、「くにこさんの講習は、圧倒的にワークをする時間、考えてお互いの意見を交わす時間が多いのが特徴的です。」と、言われた。
なにかちょっと違うことしている感じで、聞こえはいいけど、たぶんそれは、私は情報を理路整然と伝えられるような人間ではないので、「問いをたてる」そして「その問いを一緒に考えてその人なりの答えを見つける」というスタイルをとるしかないからな気がしている。
と同時に、大人の学習、一定の基礎学力をつけた先の学びには、対話が非常に重要になってくると思っているから、おそらくそのスタイルをとっているのだと思っている。
小学校、中学校、高校までは、各教科の基本的な知識と理解が中心になるから、暗記や反復が重要になる。そしてその頃の学びは、誰かが示してくれた質問・問いの答えを探すことが学習者の主な役割になる。
が、大学という高度専門教育のエリアに入ってくると、その基本的な知識と情報を元に、誰かの問いや質問に答えるだけではなく、自ら問いをたてられることが大事になってくる。
以前に誰かも言っていた、「大学教育は、問いをたてられる人を育てることにある」と、、、。
大学だけでなく、社会に出て働く、そして生きるということは、自分で問いをたてることが大切になると思っている。
なぜなら、環境が変われば問いも変わるから。
時に人は、自分の答えに問いを合わせようとする。
今回は、どうしても答えをAにしたい、そのためにはAになる問いをたてる。
そういうやり方ももちろんある。それをコーチングの世界・コミュニケーションの世界では、クローズドクエスチョンというやつなのかもしれない。(ある問いの答えが、複数の選択肢がない状態)
運動指導の現場で、常に気になっているのが、異なる対象者に対して、クローズドクエスチョンのように、ある一定の答えに人を当てはめようとしている現状が強くあるのではないか、ということ。
先日、若いパーソナルトレーナーさんがセッションを受けに来てくれた。自分の体の使い方、今までのケガによる不調などがあり、同時に指導者として人に伝えるという部分でなにか学べることがあるのではないかと来てくれた。
セッションを進めていく中で、そのトレーナーさんが風船を膨らますことができない、という悩みを伝えてくれた。
様々な呼吸のエクササイズや呼吸に関連した勉強やメソッドを試しているものの、なぜか風船を膨らませることができない。私はXというタイプだと言われて、それを改善するためにエクササイズもやっているけど、改善に至らず、そして風船を膨らませることができない。クライエントさんに風船を使って指導をすることもあるから、自分が風船を膨らますことができないのはやはり不都合も多い、、、、と。
運動指導、運動処方の世界で、パターンに人を分類するというやり方がある。もちろんそれによりスタートの入り口が整理されるから、それを知っておくこと、理解することは本当に大切。
でも、そのパターンにとらわれるがあまりに(この人のタイプはA or Bのようなクローズドクエスチョン)、見落としていることがたくさんあることを忘れてはならない、、、と。
90分のセッション後、何かをつかんだその人は、お家に帰って風船を膨らますことができた、、、らしい。(セッションでは、一切風船を膨らませたり、風船を膨らませることを目的でエクササイズはやっておりません)
なにがその人が風船を膨らませた要因だったのか、、、は推測にはなる。
一つ言えるのは、おそらくその人がくれた疑問の解決を探すために、私は正しい問いをたてることができて、その問いの答えをその人と一緒に導き出すことができた結果だと思っている。
私が講習を作るときに、意図していることがある。
講師である私がどれだけいい問いをみんなに投げかけることができるか。
そうすればそれぞれがいい答え(学び)を持ち帰ることができるから。
そして対話を通して、それぞれが自分の問いとその答えを見つけることができるか。
そんなことを毎回考えて進めている。
私の講習の多くが、A-Yoga認定者向け(養成講習を含む)、または企業内であるので、一般にむけた講習は数少ないのですが、今週末、仙台にてA-Yoga for Trainersが開催されます。あと2枠ほど空きがあるようですので、もし今週の土日で調整ができそうな方、ぜひお待ちしております!
A-Yoga for Trainers in 仙台 詳細と申し込みサイト
そのあとは、おそらく秋口に1つ2つセミナーで講師をさせていただくくらいかな、、、と。お会いできる機会があればうれしいです!
トレーナーやインストラクターなどを対象にした、スポーツ・フィットネス・医療分野などの対人援助者のためのコミュニケーション・コーチングを学ぶプログラム、SCMA(Successful Coaching Method for Athletes)があります。まだ次の開催日程は決まっていないようですが、内容はみれますので、ぜひ興味がある方はご覧になってください。
さて、文章を書いて、肉体と心が同じ時空間にいられたので、エネルギーチャージ完了!
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの話はこちらでもどうぞ
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