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過去の経験を消すことはできないが、書き換えることはできる
うつ病の治療薬の効果が、その人の脳の活動領域(結合)と幼児期のトラウマ経験の有無によって違いが出る可能性があるという研究が発表された。
https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2018/10/30/33274
https://univ-journal.jp/22926/?show_more=1
うつ病の治療薬の一つであるSSRI(
Selective Serotonin reputable inhibitor/選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がある。
うつ病の要因として考えられているのは、神経伝達で使われるシナプス間のセロトニンの量が少ないことであり、SSRIは使われなかったセロトニンが神経終末に再吸収(reuptake)
されるのを阻害し、セロトニンの量を安定させる(減らさない)役割を持つ。
今回の研究は、そのSSRI薬で効果が出る人とでない人にある特徴を、健康な被験者をコントロール群として脳の働きを見たというものでした。
実験のセッティングは複雑で、それが良いセッティングなのかどうかはいまいち分かりづらかったですが、ざっと目を通して見て感じたのは、脳の部位別判別はここまで進んでいるのか、というもの。
本論文の中で、研究者の考察として、SSRI薬に反応するかしないかは、角回という脳のエリアを含む機能的結合と幼児期のトラウマの有無が関係していると考えられると述べている。
薬にはあまり興味はないですが、この考察はなかなか面白いなぁ、と。
あくまでも被験者の質問に対しての回答がベースではあるが、幼児期のトラウマというキーワードが、脳の機能的結合と関係している可能性があり、その場合セロトニンのreuptake inhibitor は有効でない可能性があるという考察をどう考えるか。
読み進めながら思ったのは、長期記憶がうつ病に影響を与えている可能性。
脳内神経伝達物質(ホルモン)はセロトニンだけではないけど、ある種のうつ病患者の要因はホルモン的なもの以上に、記憶的要因があるのではないか(行動的要因)
そういう人にはより行動療法のようなものが、投薬よりも助けになるのではないか?
私たちは生きていく上で、感覚器官からさまざまな刺激を受け、その感覚経験は海馬で長期記憶と短期記憶として記録され、扁桃体でその感覚経験に感情の色がつけられる。
そして記憶の海馬と感情の色付けの扁桃体はコミュニケーションを取っている。
この二つは切っても切れない関係であり、この領野のコミュニケーションを変えるためには、感覚経験を通した置き換えをすること(行動を通した置き換え)が大事になってくる。
過去の論文において
Given binary labels of MDD status (TRD or non-TRD), they identified relevant brain areas in which large differences in resting state fMRI images are observed between TRD and non-TRD. It is reported that functional connectivity (FC) increased in the subgenus cingulate and the thalamus17, while it decreased in the cerebellum, the precuneus and the inferior parietal lobule for TRD patients18.
TRD=Treatment resistance depression(投薬治療に反応しない群)
ざっとまとめると治療に反応しなかった群の脳のfMRIで、亜属帯状回(subgenus cingulate)と視床(Thalamus)の機能的結合が高く(一つが反応するともう一つも反応を起こす)、辺縁系、楔前部(precuneus/感情地図)、下頭頂小葉(inferior parietal lobule)の結合が低下していたと書かれている。
帯状回は大脳辺縁系の各部位を結びつける役割も持ち、感情の形成、学習、感情記憶などにも関係。また視床も含めた体性感覚皮質領域からの入力を受ける。
(脳の構造などは、Akira magagineさんがとても綺麗に情報をまとめてくださっています。参考にどうぞ。)
http://www.akira3132.info/limbic_system.html
ここからの考察は、あるカテゴリーのうつ病患者さんは、感覚入力からの感情とのペアリングになにかしらの不具合が不安を起こしている、感覚と感情の学習を変えることで、状況が変わるであろうと思われること。
さらに神経的変容は、うつ病エピソードによって前頭前皮質の複数領域と帯状回で見られると述べられている。
It is reported that neuroplastic change occurs during depressive episodes in dorsomedial prefrontal cortex, dorsolateral prefrontal cortex, and anterior cingulum48, which matches our results.
前頭前皮質は行動、そして自分の内なる思いを形にするというエリアでもあるため、うつ病のエピソードによって、このエリアに神経構造的な変化をもたらすと考えられている。
脳の研究は専門ではないけど、この難しい内容を、自分の役割としてここから何が言えるのか、、、を考えながら読み解いている。
そこから考えられるのは、SSRIなどの投薬で効果が現れない人には、より自分の体への刺激の変化からアプローチする事が効果的なのではないか、ということ。
感覚経験を通して、感情と紐付いているものを書き換える。
運動が出来ること、動作教育が出来ることは沢山ある。
https://www.nature.com/articles/s41598-018-32521-z